刺身や寿司、タタキなど、子どもから大人まで人気の高いマグロ。
おいしいのはもちろん、マグロの栄養や効能は実はとても優れていることをご存じですか?
豊富な栄養をムダにしないためにも、効果を高める食べ方やおすすめのレシピも知っておきましょう。
今回の記事では「マグロの栄養」について、管理栄養士が解説します。
マグロの栄養と期待される効能
マグロはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)をはじめ、鉄やビタミンDなどのさまざまな栄養素を含んでいます。
とくに注目すべきはDHAの含有量で、魚の中でトップクラスです。
成長期の子どもから、健康面が気になる大人まで、広い世代の健康づくりを支えてくれます。
マグロは種類や部位によって栄養成分値が若干異なりますが、基本的な栄養素は共通しています。
まずは、すべてのマグロに共通して含まれる栄養素と期待される効能について、詳しく見てみましょう。
血液サラサラを期待「EPA」「DHA」
EPAやDHAは、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などの病気を防ぐ働きや、血中の中性脂肪値を減らす働きがあるとして注目されている成分です。
ヒトの体内で合成されないため、不足しないよう食べ物から摂る必要があります。
サバやサンマなどの青魚に多く含まれることが知られていますが、実はDHAの含有量は魚の中ではマグロがトップです。
EPAやDHAは脂質に含まれる成分であるため、マグロの脂身に多く含まれます。
もちろん赤身の部分にも含まれるため、赤身でもDHAやEPAをしっかりと補給できます。
筋肉や細胞を作り免疫機能を維持する「タンパク質」
たんぱく質は筋肉や細胞の材料となり、私たちの体が作られる際に欠かせません。
また、たんぱく質が極端に不足することで、免疫機能の低下が起こることも知られています。
成長期の子どもはもちろん、筋肉をつけたいトレーニング中の方やダイエット中の方、食事量が低下してきた高齢者など、さまざまな年代で不足することなく補いたい栄養素です。
貧血予防に「鉄」
鉄は、鉄欠乏性貧血の予防に必要です。
マグロに含まれる鉄は「ヘム鉄」といい、吸収率が65%ほどと高いことが知られています。
鉄が不足することで起きる貧血は、疲れやすさやめまい、息切れ、頭痛など、さまざまな不調を引き起こす原因となります。
とくに月経のある女性は鉄が不足しやすいため、積極的な摂取が必要です。
骨の健康づくりに必要「ビタミンD」
ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあり、骨の健康づくりに必要です。
ビタミンDが不足すると、骨粗しょう症や骨折のリスクが高まることが知られています。
ビタミンDは野菜には含まれず、きのこ類や魚介類に多く含まれるため、意識的に取り入れる必要があります。
高血圧を防ぐ「カリウム」
カリウムは、高血圧の予防のために摂取が推奨されている栄養素です。
高血圧の原因となる余分なナトリウム(塩分)を排出し、血圧を下げる働きがあります。
カリウムは野菜に多く含まれる栄養素ですが、マグロのような魚などの動物性の食品にも意外にも含まれています。
※参照:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」,厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
マグロの種類、部位による栄養価の違い
マグロはさまざまな種類がありますが、普段よく食べているものはどれかご存じですか?
種類や部位による栄養価の違いを見てみましょう。
種類による違い
マグロはよく食べられる種類が5つあります。
もっとも高級種なのが「クロマグロ(本マグロ)」で、お正月に行われる初競りで話題となるマグロです。
EPAやDHAをはじめとするさまざまな栄養素を豊富に含みます。
一方で、もっともポピュラーなのが「メバチマグロ」です。
回転寿司や刺身としてよく用いられています。
EPAとDHAはクロマグロに次いで多いため、手頃でありながら栄養豊富な種類といえます。
ほかにも、鉄が豊富なのがキハダマグロ、ビタミンDが豊富なのがビンチョウマグロです。
こちらは「ツナ缶」に加工されることも多く、手軽な栄養補給に役立つでしょう。
部位による違い
マグロは赤身と脂身(トロ)に大別され、栄養価が異なります。
一般的なメバチマグロの赤身と脂身の違いを見てみましょう。
赤身のほうが脂質が少ないためカロリーが低く、またカリウムや鉄も多く含まれています。
一方で脂身は、脂質が多い分カロリーが高くなっていますが、EPAやDHAの含有量は優れています。
取り入れたい栄養素によって部位を選んでもよいですし、ダイエット中の方は赤身を選ぶようにするなど、目的によって上手に使い分けましょう。
マグロの栄養効果を高めるおすすめの食べ方
栄養豊富なマグロですが、さらに効率的に栄養を摂る場合におすすめの食べ方をご紹介します。
刺身や寿司、タタキがおすすめ
マグロは生で食べるのがおすすめです。
脂質に含まれるEPAやDHAは、焼いたり揚げたりすることで減ってしまいますが、生であればムダなく摂ることができます。
刺身や寿司、タタキなどがよいでしょう。
アボカドとあわせて美容効果をアップ
マグロとアボカドは、栄養面でも味の面でも相性のよい組み合わせです。
とくに美容面でうれしい効果が期待できます。
アボカドには、マグロにはほとんど含まれないビタミンCや食物繊維が豊富で、整腸作用や美肌づくりを助ける働きなどが期待されます。
マグロとアボカドで作る「ポキ丼」は、美容にもダイエットによいとして話題になったこともあるほどです。
マグロは赤身の部分を使うと、よりカロリーを抑えられますよ。
カルシウムを含む食べ物をあわせて骨を丈夫に
マグロに含まれるビタミンDはカルシウムの吸収を助けますが、マグロにはカルシウムが含まれていません。
せっかくのビタミンDをムダにしないためにも、カルシウム豊富な食べ物と組み合わせましょう。
たとえば、チーズや牛乳などの乳製品、ほうれん草や小松菜、水菜などの色の濃い野菜があります。
副菜や汁物の具材として取り入れるとよいでしょう。
栄養豊富なマグロを食べる際の注意点とは
マグロを取り入れる際は、知っておいてほしい注意点が2つあります。
食べすぎに気を付ける
マグロが体によいとはいえ、食べすぎは禁物です。
食べすぎによりカロリーや脂質を摂りすぎてしまい、太る原因となることがあります。
1日の適量はおよそ50g(刺身5切れ分)が目安です。
これは食事バランスガイドを参考にした量となっています。
多少前後したり、たまにたくさん食べたりするのは問題が少ないと考えられますが、毎日続けてたくさん食べるのは控えたほうがよいでしょう。
妊婦さんは量に注意
妊婦さんがマグロを食べる場合、量や種類に気を付ける必要があります。
大型の魚は食物連鎖の関係で水銀がとり込まれているため、たくさん食べることでお腹の赤ちゃんに影響を与える可能性があることが知られています。
以下は注意が必要なマグロの種類と目安の量です。
<注意が必要なマグロの種類と量>
・ミナミマグロ(インドマグロ):週に160g程度まで
・クロマグロ(本マグロ):週に80g程度まで
・メバチマグロ:週に80g程度まで
※マグロを組み合わせて食べる場合は、たとえばメバチマグロ40g+クロマグロ40gが1週間の上限量となります
以下のマグロは水銀の含有量が低く、注意が必要でないとされています。
<とくに注意が必要でないマグロの種類>
・キハダマグロ
・ビンナガマグロ
・メジマグロ
・ツナ缶
詳しくは厚生労働省のWEBサイトにパンフレットが掲載されています。
量を守れば恐れすぎる必要はありませんので、マグロを適切に取り入れるようにしましょう。
※参照:農林水産省 厚生労働省「食事バランスガイド」,厚生労働省「妊娠中と産後の食事について」
マグロは色とスジをチェック!おいしく栄養を摂ろう
せっかく栄養豊富なマグロを食べるなら、おいしいものを選びたいですよね。
購入する際は、色とスジをチェックしてみましょう。
<おいしいマグロの特徴>
・赤身:クロマグロは深い赤色、メバチマグロは鮮やかな赤色
・脂身:クロマグロは深みのあるピンク色、メバチマグロは薄いピンク色
・身の色に透明感があり、黒ずんでいない
・ドリップ(汁)が出ていない
・スジが目立たない
スジが目立っているものは、食感が悪くなってしまいます。
しかし、スジが入ったものは加熱調理をするか、角切りにして漬け丼などにすると、食感が気になりにくくなりおいしく食べられます。
スジが入ったものは安売りされていることもあるため、ぜひ上手に活用してみてくださいね。
マグロは栄養補給に優秀な魚!子どもから大人まで取り入れよう
今回の記事では「マグロの栄養」について管理栄養士が解説しました。
身近な魚であるマグロは、おいしいだけでなく栄養豊富な魚でもあります。
子どもから大人まで、ぜひ取り入れたい食べ物です。
食べすぎに気を付けながら、ぜひマグロを上手に活用しましょう。
マグロを使ったおすすめレシピ【栄養満点】
最後に、マグロを使った栄養満点なレシピを3つご紹介します。
マグロのたたきピリ辛サラダ
マグロの表面をオリーブオイルで軽く焼き、風味と栄養をプラス。野菜もたっぷり摂ることができますよ。
まぐろのたたきピリ辛サラダ
まぐろ(刺身用)、豆苗、塩・こしょう、○ポン酢、○ごま油、○豆板醤、オリーブオイル、大葉(あれば)
調理時間:10分
マグロアボカド巻き寿司
アボカドの豊富な栄養もたっぷりと摂れる、巻き寿司のレシピです。
まぐろアボカド巻き寿司
まぐろのすきみ、アボカド、酢飯、白いりごま、焼き海苔、しょうゆ(好みで)
調理時間:15分
マグロのたたきサラダ仕立て
マグロの表面をサッと焼き、うま味と栄養を閉じ込めます。マグロのEPAやDHAをムダなく摂れますよ。
まぐろのたたきサラダ仕立て
まぐろ(刺身用)、新玉ねぎ、小ねぎ(あれば)、塩・こしょう、○ポン酢、○白いりごま、○ごま油、サラダ油
調理時間:15分