「なすは栄養がない」とイメージを持たれがちですが、実際はどのような栄養素が含まれているのでしょうか?効率よく栄養素を摂るためのコツを知り、なすの栄養をムダなく摂りましょう。今回は管理栄養士がなすに含まれる栄養素や期待される効能、おすすめのレシピなどをご紹介します。
なすは本当に栄養がない?
「なすは栄養がない」といわれることがありますが、実際は食物繊維、カリウム、葉酸、ポリフェノールなどの栄養素を摂ることができます。
「ほかの野菜に比べてずば抜けて栄養豊富」とはいえませんが、旬の時季は安価で手に入ることもあり、野菜不足解消に役立てたい野菜です。
「栄養がない」といわれるのは、なすに含まれる水分が約93%と多いから。そのため100gあたりのカロリーは18kcalで、同じく「栄養がない」といわれるきゅうり(13kcal/100g)やもやし(15kcal/100g)と同程度のカロリーです。カロリーが低い野菜に分類されるので、ダイエット中にもおすすめできる野菜です。
なすに含まれる栄養素と期待される効能
なすの栄養素は、通常のなす(長なすや長卵形なす)と米なす(ヘタが緑色のなす)の2つが日本食品標準成分表に掲載されています。2つのなすの栄養素は、気にするほど大きな違いはありません。
ここでは通常のなす100gあたりの栄養素をご紹介します。なす1本はおよそ80gなので、100gだとやや大きめのなす1本分となります。
便秘解消や健康づくりに役立つ「食物繊維」
なす100gあたりには、2.2gの食物繊維が含まれます。同じくカロリーが低い、もやしの1.7倍、きゅうりの2倍の量です。
食物繊維は便のかさを増したり、腸内環境を整える手助けをしたりするため、便秘の予防や解消には欠かせない栄養素です。
また食後の血糖値の急激な上昇を抑えたり、血中コレステロール値を下げたりする働きもあるため、血糖値や血中コレステロール値が気になる方は積極的に摂りましょう。
むくみ解消や高血圧の予防に「カリウム」
なす100gには、220mgのカリウムが含まれます。これはきゅうりの1.1倍、もやしの3.2倍の量です。
カリウムは余分なナトリウムを排出してくれる働きがあるので、塩分を摂りすぎたときの調整に役立ちます。そのため、塩分の摂りすぎが原因となるむくみの解消や、高血圧の予防に役立ちます。
野菜不足の方は気をつけたい「葉酸」
なす100gには、32μgの葉酸が含まれます。これはもやしよりは少ないのですが、きゅうりの1.3倍の量です。
葉酸は不足することで貧血の原因となることや、血清ホモシステイン値という動脈硬化の引き金になる値を高くしてしまうことが知られています。
葉酸は主に野菜に含まれる栄養素なので、野菜不足の方は不足している可能性もあります。なすなどの野菜をたっぷり食べ、不足しないよう注意しましょう。
ポリフェノールの一種で抗酸化作用のある「ナスニン」
なすの皮の部分にはポリフェノールの一種であるアントシアニンが含まれており、アントシアニンの中でも多くを占めているのが「ナスニン」です。
ポリフェノールは抗酸化作用があり、動脈硬化・がん・老化・免疫機能の低下の一因となる活性酸素を取り除いてくれる働きがあります。日々の健康づくりのため、また美容が気になる方は積極的に摂りたいものです。
なすは食べすぎても大丈夫?
なすは通常考えられる量であれば、少々食べすぎても問題ないでしょう。「体を冷やす」といわれることもありますが、食べすぎたからといって体温に大きく影響するとは考えにくいものです。また、なすに含まれる栄養素の多くは水溶性のもので、摂りすぎた場合は尿中に排泄されます。
ただし、どんな食べ物でもひとつの食べ物を大量に連日とると、思わぬ不調を引き起こすことも考えられます。さまざまな食べ物をとることを心がけ、摂取する栄養素の偏りがないようにしましょう。
なすの栄養素をムダなく摂るコツ
なすの栄養素をムダなく摂るには、以下のことに気をつけてみましょう。
・皮ごと食べる
・水に長時間さらさない
なすに含まれるポリフェノール(ナスニン)や、食物繊維の多くは皮の部分に含まれます。なるべく皮のついたまま調理していただきましょう。もし皮が硬くて食べづらいと感じる場合は切り込みを入れたり、ところどころ皮を剥いたりするなどの工夫をしてみましょう。
またなすに含まれるビタミンやミネラルの多くは水溶性といわれるものです。
水に長く浸けることで流れ出てしまうため、変色予防で水にさらす場合は5~10分程度を目安に。長時間にならないように気をつけましょう。
さらにもう一つ、なすは「淡色野菜」という色の薄い野菜に分類されます。
なすばかり食べていると、にんじんやかぼちゃといった色の濃い「緑黄色野菜」に含まれる栄養素(ビタミンAなど)が不足してしまいます。なすとあわせて、緑黄色野菜もバランスよくいただきましょう。
なすを使った料理のカロリーを抑えるコツ
なすはカロリーが低い野菜に分類されますが、ほかの野菜に比べ調理中に油をよく吸うため、調理法によってはカロリーが高くなります。
たとえばなす100gを素揚げすると、油を吸うために18kcal→142kcalほどにもなります。カロリーが気になる方は、油を使わない調理法(蒸す・焼く)にするか、油が少量で済むように工夫しましょう。
油少なめでも、炒め物をおいしく調理するには以下の方法があります。
・切ったなすに油をまぶして、電子レンジである程度火を通してから炒める
・塩もみして水分を抜いてから炒める
なすの油が気になるときは、試してみてくださいね。
なすを使ったおすすめレシピ
なすと相性のよい食材やを使ったおすすめレシピをご紹介します。
厚揚げとなすの焼きびたし
なすと厚揚げを焼き、めんつゆに浸したメニューです。厚揚げと組み合わせることで、なすにはあまり含まれない、たんぱく質、カルシウム、鉄などの栄養素を補給できます。なすの旬である夏は食欲の落ちやすい時季ですが、しょうがが入ることでさっぱりと食べられておすすめです。
厚揚げとなすの焼きびたし
厚揚げ、なす、しょうがチューブ、めんつゆ(3倍濃縮)、サラダ油
調理時間:25分
なすの肉はさみレンジ蒸し
なすと豚ひき肉をレンジで蒸して、ぽん酢であっさりといただくメニューです。豚肉のビタミンB1は糖質の代謝に必要な栄養素で、不足することで疲労感の一因となることがあります。とくに食欲が落ちて食事が偏りやすい夏の時季は、豚肉などのビタミンB1が摂れる食材を積極的にいただきましょう。
なすの肉はさみレンジ蒸し
豚ひき肉、なす、小ねぎ、○オイスターソース、○しょうゆ、○酒、○しょうがチューブ、ポン酢(好みで)、ごま油
調理時間:15分
ひき肉となすのピリ辛炒め
なすと豚ひき肉を豆板醤でピリ辛に炒めたメニューです。食欲がない時季でもピリ辛味とにんにくの風味で箸が進みやすい味つけです。豚肉のビタミンB1は糖質の代謝に必要な栄養素で、不足することで疲労感の一因となることがあります。食事が偏りやすい夏の時季は、豚肉などのビタミンB1が摂れる食材を積極的にいただきましょう。
ひき肉となすのピリ辛炒め
豚ひき肉、なす、豆板醤、にんにくチューブ、薄力粉、○オイスターソース、○酒、○しょうゆ、ごま油
調理時間:15分
なすとベーコンのアラビアータ
なすとベーコン、トマト缶を使ったスパゲティです。トマトはなすに比べ、β-カロテンやビタミンCが豊富です。どちらも抗酸化作用があり、なすの皮に含まれるナスニンと同じように身体によい働きをしてくれます。
なすとベーコンのアラビアータ
なす、ベーコン、にんにく、赤唐辛子、スパゲティ、○トマト缶(ダイスカット)、○洋風スープの素(顆粒)、○酒、オリーブオイル、塩・こしょう、パルメザンチーズ(好みで)
調理時間:30分
なすにも食べる価値はある!旬の時季は積極的に食べよう
さまざまな栄養素が摂れるなすは、和・洋・中どれでも相性がよく、飽きずに食べられるのも魅力です。旬の時季は安価で手に入りやすい野菜でもあるので、積極的にいただいて、野菜不足解消に役立ててくださいね。