夏場のエアコン運転と言えば、冷房以外にも除湿機能の利用があると思います。「冷房」と「除湿」。この2つの機能の違いを理解して、的確に使い分けているという人は意外に少ないのではないでしょうか。
ルームエアコン「Eoria」(エオリア)シリーズを展開するパナソニックは5月、報道関係者向けのセミナーを開催。エアコンの冷暖房の仕組みの基本から、冷房と除湿運転の違いを解説しました。
「冷房」と「除湿」
エアコン冷房というのは、簡単に説明すると、部屋の中の空気から熱を奪って外に排出する仕組みです。エアコンには室内機と室外機の2つの本体がありますが、それぞれに熱交換器と呼ばれる部品を備えています。その名のとおり、熱がこの部分を通して内外に出入りします。
冷房の仕組み
冷房の際には、室内機によって取り込まれた室内の熱が「冷媒」と呼ばれる液体が流れるパイプを通って、室外機の熱交換器まで運び出されます。これは熱が多いところから少ないほうへ移動するという性質を利用したもので、この作用を繰り返すことにより、室内の熱が取り除かれていき温度を下げることができます。
冷たい氷水を入れたグラスを思い浮かべてください。グラスの表面には水滴がついていますが、これはグラス周辺の空気の温度が下がったことで空気中の水蒸気が水に変わってグラスの表面に水滴として付いていきます。
エアコンの冷房はこの原理と同じです。エアコンの冷房運転の際に室外のホースから排出される水は、グラスの水滴と同じです。
除湿の仕組み
一方、エアコンの除湿運転というのは、水蒸気を含んだ湿った部屋の中の空気を室内機で取り込み、冷媒によって冷やすことで、熱交換器の表面に水滴として付着させて取り除く仕組みです。空気中から取り去った余分な水分は、ドレン水として排出され、室内側には乾いた空気が送り込まれることで湿度を下げます。
実を言うと、除湿の際にエアコン側で行っている動作自体は冷房運転と同じです。冷房運転が室内の温度を下げることを最優先にした機能であるのに対して、除湿は空気中の湿度を下げることを最優先とした機能。目的が異なるだけで、実際には弱冷房で運転していることになります。
というのも、空気というのは、温度が高いほどたくさんの水分を保持できる性質があり、エアコンが取り込んだ室内の空気を冷やすことで、中に含まれる水分も必然的に取り去られます。つまり、結果的には温度を下げると同時に除湿も行っているということになるのです。そのため、冷房も除湿運転も消費電力はあまり変わりません。
ただし、運転効率という観点で言うと、「暑いのでまずは涼しくしたい! 」という時は冷房運転で一気に部屋の温度を下げてから、自動運転により設定温度を維持するほうが電気代の節約にはなります。これに対し、除湿運転は「暑いけれどジメジメ感も気になる! 」という時に行うのがベストな選択です。
なお、一部の機種には「再熱除湿」と呼ばれる運転機能を備えたものもあります。これは、室温を保ちながら除湿を行う運転で、冬場の結露防止や気温は低いものの衣類乾燥などのために除湿を行いたい時に適した機能です。ただし、冷えた空気を再度暖めてから室内に出すため、そのぶん冷房よりも若干電気代が高くなる傾向にあります。
ちなみに、暖房運転は室内外でこれとは逆のことを行っています。室外機で外気から熱を集めて室内に取り込む仕組み。しかし、そもそも外気温が低い冬場は、空気中に含まれる熱は多くはありません。そのため、暖房運転のほうが負荷がかかり、電気代もかかります。
エアコンは暖房より冷房が得意
エアコンはかつて"クーラー"と呼ばれていた時代もあったように、そもそもは冷房機能からスタートした電化製品。そのため、冷房に比べると暖房は得意ではなく、効きが悪いという印象を持つ人も多いと思います。
その原因の1つには「霜取り運転」が挙げられます。外気温が低いシーズンは、室外機に霜がつきやすくこれを取るための機能ですが、この運転中に暖房運転が停止するため、その間に室温が5~6℃ほど低下してしまいます。ところが、最新のエアコンの上位のモデルでは霜取り運転による温度低下を防ぐ仕組みが採り入れられた製品が多く見られ、かなり進化してきています。
例えば、パナソニックのエアコンで採用されているのが、「エネチャージシステム」と呼ばれる機能。コンプレッサーからの排熱を蓄え、霜取り運転中に暖房として有効活用することで、室温の低下を1℃以下に抑えられるのだと言います。これにより、室内の温度を一定に保つことができるため、ムダな急速運転を避け、快適さにつながります。
このように、エアコンの電気代の節約には、その仕組みや原理を理解しておくことがカギとなります。そして、稼働時の条件や目的に合った運転機能を正しく選ぶように心がけましょう。