帝国データバンクは、出版業の業績動向について調査・分析を実施。
今回、その結果を公表した。
赤字が過去20年で最大
2023年度決算の損益状況が判明した出版社675社を分析すると、36.6%にあたる247社が「赤字」となり、構成比は過去20年で最大となった。
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さらに、前年度から「減益」(29.5%)となった企業を合わせた「業績悪化」の割合は66.1%に達し、過去最大を記録。
雑誌媒体が大幅に落ち込み
また、コロナ禍での巣ごもり需要により、電子書籍などのデジタルコンテンツ需要が拡大したものの、書店での販売部数の減少を補うまでには至らなかった。
さらに印刷用紙やインクなどの仕入れコスト、人件費、物流費といった各種コストの上昇も業績悪化に大きく影響し、特に雑誌媒体が大幅に落ち込んだ。
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そして、「委託販売制度」(書店で売れ残ったものを定められた期間内であれば返品できる販売方法)を利用した返品率は3~4割超で高止まり。
出版社の物流費や在庫負担増の要因となっている。
価格転嫁が難しい
価格転嫁への動きも鈍い。
帝国データバンクが2024年8月に発表した「価格転嫁に関する実態調査(2024年7月)」では、出版社の74.9%が価格転嫁率50%未満であると回答。
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価格転嫁率は27.7%と、全業種(44.9%)を大きく下回る結果となった。
新刊本の価格転嫁は徐々に進んでいるものの、既刊本については価格転嫁が難しいというのが実情のようだ。
先行きも不安視
なお、2024年に発生した出版社の倒産および休廃業・解散件数は62件。
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2年連続で60件を超えており、政府の各種支援策によって抑制されていた発生ペースは、コロナ禍前の水準に戻ったことがうかがえる。
企業からは、「印刷費の高騰や出版取次の仕入制限で業況は良くない」、「書店の閉店に歯止めがかからず、返品も増えている」といった先行きを不安視する声が聞かれる。
市場の変化に対応するオリジナリティ
紙媒体の出版物の低迷が続くなか、今後はデジタルシフトや出版流通の効率化が焦点となる。
業界大手のKADOKAWAは、2025年1月にソニーグループと資本業務提携を締結。
IPビジネスを強化し、デジタルコンテンツを武器に海外市場への展開を加速させるなど、大手出版社では新たな市場の開拓が進められることが予想される。
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一方で中小出版社は、書店との関係性強化や、特色ある企画で読者ニーズに応えるなどの市場の変化に対応するオリジナリティが求められる。