
落語家桂福團治(84)が21日、大阪市の松竹芸能で「芸歴65年記念公演-上方落語界最古参の福團治-」(11月29日、大阪松竹座)の取材会に出席した。
1960年に3代目桂春団治さんに入門し芸歴65年。60周年に続いて、今回も大阪松竹座で公演を開催し、ゲストに桂南光、笑福亭鶴瓶、笑福亭松喬、桂二葉、弟子の桂福楽が出演する。「鶴瓶ちゃん、南光ちゃん、二葉ちゃんと協力いただきありがたい」と感謝した。
当日は中入り前と大トリで落語を披露するが、演目は「当日のお楽しみ」。
前名の小春時代は、ダジャレを交えた小話にペケペンと合いの手を入れる「ペケペン落語」で人気を博したが、放送コードに引っかかることから封印。「しじみ売り」「やぶ入り」「ねずみ穴」などの人情噺を得意とし、“人情落語の福團治”と呼ばれてきただけに「次の時代に残したいこともある。それを披露したい」と人情落語を演じる予定だ。
10月26日の誕生日で85歳になり、「周囲を見ても私だけ。友達はみんな他界して誰もいなくなって、引退しないといかんのかな」と話すが、いたって健康。医者からも「大丈夫です。どこも悪くない」と太鼓判を押されそうで、「マネジャーが『性格が悪いんです』と言ったら、『その薬はございません』と言われました」。
80歳過ぎに自動車運転免許を返上し、散歩が日課で、「なるだけ足を使うようになった。今思うと良かったかな」。
物忘れや耳が遠くなったのはあるが、落語にはまったく影響していない。1日に10回般若心経を唱えており、「滑舌に効果あると思う」。暇があったらカラオケにも通い、「懐メロが多いですな。石原裕次郎とか。ただ、みんな嫌がる」と笑った。
自身は師匠が黒いものを白と言えば、「はい」と従う師弟制度の時代を生きてきた。「今はハラスメントと言われますけど、古典の世界の大事なもの、私の受け継いできたものを次の世代に回していきたい」といい、世間の情も薄くなってきたと感じるという。
60周年から65周年の5年間はコロナ禍にも見舞われた。それまで、全国各地で行っていた落語会も中止になっただけに、今後は「松尾芭蕉やないけど、地位も名誉も財産も捨てて全国各地を回りたい。そこに出向いていって噺を聞いていただきたい」と全国行脚の再開を希望した。
あと15年続ければ100歳になる。「座布団に座れんようになるかもしれない。高座は正座が売り物だからできれば最高。100歳で『百年目』。それもよろしいな。1つの夢としていきたい」と笑顔で夢を語っていた。