
女優鈴木京香(57)が、映画「キリコのタクト~YELL~」(雑賀俊朗監督、26年公開)に主演することが14日、分かった。
タクトに生徒を輝かせる魔法が宿ると言われる、関西弁でまくし立てる伝説の高校音楽教師を演じる今作で、指揮に初挑戦する。「原田貴理子という教師像に引かれて、この役をやらせていただく決意をしました。今はピアノやコーラスの稽古に励む熱い夏を過ごしています」と、今夏のクラインクインを前にピアノと指揮のレッスンを幾度も重ね、徹底した役作りに挑んでいる。
「キリコのタクト-」は、高校の合唱コンクールで全国一を勝ち取る伝説の音楽教師・原田貴理子が突然、退任し、失踪したことを受けて、教え子の音楽雑誌記者・北村翔が当時の合唱仲間と恩師の記憶をたどり、取材を通して彼女の謎に迫っていく物語。NHK全国音楽コンクール中学校の部の課題曲として、いきものがかりが制作した09年の楽曲「YELL」に着想を得た雑賀俊朗監督(66)が企画し、脚本も手がけた。
鈴木は、松谷鷹也(31)とのダブル主演映画「栄光のバックホーム」(秋山純監督)の公開も11月28日に控える中、映画としては2作連続、しかも「キリコのタクト~YELL~」は単独と、主演作が続く。今回、タッグを組む雑賀監督は、有村架純(32)が天才指揮者を演じた12年「リトル・マエストラ」や、小芝風花(28)が主演し、タップダンスをテーマにした2月公開の「レディ加賀」など、音楽と登場人物が深いつながりを持つ作品作りに定評がある。鈴木は「生徒役の皆さんと一丸となって、合唱コンクールの舞台を心から楽しみたいと思っています」と期待を寄せた。
雑賀監督は11年に、被災地の中学生たちが歌声で希望をつなぐ復興支援番組「「YELL~こころからこころへ声を繋ぐ~」を企画・制作。「妻の出身校がこの(NHK全国音楽)コンクールの地区予選を勝ち抜き、全国大会に進んでNHKホールの舞台に立ったのをきっかけに曲を知り、この曲の持つ歌詞のメッセージに引かれていました」と「YELL」との接点を明かした。
その後も、雑賀監督の心には「悲しげに始まる曲調でありながら希望を歌うこの作品がずっと気になっていました」と「YELL」が残り続けた。そして、いきものがかりが路上ライブをしていた“原点”として知られる小田急電鉄本厚木駅の接近メロディーに、同曲が使われていると知ったことがきっかけで「キリコのタクト~YELL~」の構想が生まれた。「『YELL』を何度も聞き『サヨナラは悲しいコトバじゃない。(中略)次の空へ』の歌詞に『人生は、出会い、別れ、次のステージへ向かう』という繰り返しである事を感じ、先生と生徒の再会と言う発想が浮かび、ストーリーを紡ぎました」と振り返った。
鈴木が演じる、貴理子の教師生活に関わっていく人々を演じる俳優陣も、経験を重ねた芝居巧者がそろった。榊原郁恵(66)が厚木学園の校長・高木ひとみ、小西博之(65)が厚木相模高校の校長・皆川逸郎、宅麻伸(69)が貴理子の教え子・北村翔の父親で自転車屋を営む恭治、名取裕子(67)が貴理子の大学時代の先輩・美国亜希子を、それぞれ演じる。
「YELL」のミュージックビデオの撮影が行われた厚木市は、今年2月1日に市制70周年を迎えたことを記念し、さまざまな事業・イベントを企画。「キリコのタクト~YELL~」も、その一環として製作され、ロケ地にもなった。鈴木は山口貴裕市長(52)の表敬訪問を行い、クランクインを予定している。
◆「キリコのタクト~YELL~」 北村翔は小さな音楽出版社に勤め、「音楽ジャーナル」の特集企画「伝説の音楽教師」の取材を任されることになった。今回、取り上げる教師は、全国合唱コンクールで数々の賞を獲得し「優勝請負人」とまで呼ばれた原田貴理子(鈴木京香)だが最近、退職し、消息不明となっていた。北村にとって、貴理子は学生時代に全国優勝を果たした際の恩師で、取材を始めて彼女の足取りを追って母校を訪ねるも、有力な手がかりは得られない。そんな中、かつての合唱部のメンバーだった同級生と再会し、謎に満ちた貴理子の探す旅に出る。次第に明かされていく、教師の素顔と生徒たちに隠されていた真実とは…。