
山岸凉子氏の原作漫画を初舞台化する能 狂言「日出処の天子」(8月7日から、観世能楽堂GINZA SIX)制作発表会見が9日、都内で行われ、山岸氏と主演、演出の野村萬斎らが出席した。
80~84年に雑誌「LaLa」に連載された原作は、飛鳥時代を舞台にまったく新しい厩戸王子(聖徳太子)像を打ち出し、漫画史に残る傑作として一世を風靡(ふうび)した。
山岸氏は、「能、狂言は日本で最も古い伝統芸能。サブカルチャーの位置にある漫画の作品を舞台化したいというお話が来た時はとても驚きました。常日頃からこの人はすごいと思っていた野村萬斎さんだったのでさらに舞い上がってしまった」と笑顔で話し、「40数年たっても舞台化の話をもってきていただけるのだから、私の作品の中でも大事なものだったんだなと思います」と話した。
80年代の連載当時を「あのころの聖徳太子は1万円札の聖徳太子像。当時は同性愛という言葉を使うのもはばかられ、ジェンダーという言葉もまったく出ていないころでしたから、編集部と相当もめました」と振り返り、「相手が同性であろうと異性であろうと、愛するということの尊さを誰はばかることなく書くべきと思った」とした。
厩戸王子を演じる萬斎は、「中学か高校のころ、姉2人が読んでいたものをお下がりで読んで、ショッキングなことも覚えつつ引き込まれて読んだ」。あの世とこの世をつなぐ舞台である能、狂言のアドバンテージを語り、「恐れ多くも(厩戸王子に)シンパシーはある。能の真骨頂を見せつけないと」と語ると、山岸氏は「作者冥利(みょうり)に尽きる」と感激した。
舞台化に向け萬斎は「山岸先生が『全部が自分だ』とおっしゃっていたので、キャラがすべて山岸先生に見えてくる」と笑い、「とにかくぶっ飛んでいますね。ぶっ飛ぶ、飛躍するというところが能や狂言の真骨頂」と自信をみせていた。