
フジテレビとフジ・メディア・ホールディングス(FMH)は27日、取締役会を行い、日枝久取締役相談役(87)の退任決定と経営体制の刷新を発表した。6月の株主総会を経て、金光修社長(70)がFMH会長、専務取締役の清水賢治氏(64)がフジテレビ社長との兼任で、代表権を持つ社長に就任する。両社とも取締役を減員するほか、多様性の観点から女性取締役の比率を3割以上とするなど刷新を図った。日枝氏はフジサンケイグループ代表も退く。
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フジサンケイグループの象徴的存在が退場した。日枝氏が在任期間は実に40年以上にわたる。取締役会後の会見には27社60人の報道陣が集まり、同氏に関する多くの質問が飛んだ。退任の背景について金光社長は「総合的な判断」と言うにとどめたが、同氏は早い段階から経営刷新に賛成していたという。同グループ代表を辞任する意思は、この1カ月以内で同氏から金光社長へ伝えられた。金光社長は退任理由について「聞いていない」とし、日枝氏の長期在籍と企業風土の関連性は「因果関係を決め付けることは難しい」と語った。別の役職で残る可能性も否定し、組織とは距離を置く格好となった。
日枝氏は2月下旬に自宅で転倒し腰椎を圧迫骨折。現在も入院中という。1980年代のフジテレビの視聴率黄金期に大きく寄与した人物。金光社長は「長い間お疲れさまでしたという気持ちでいっぱいです」、清水氏も「今までの貢献に感謝したい」と述べた。
新経営体制も大きく見直された。実効性の強化と意思決定の迅速化を狙いとし、FMHは取締役人数を17人から11人、フジテレビは22人から10人にスリム化。両社とも新取締役は、コンサルティングやITなど多様なジャンルの知識を持つ人材を選定し、女性の登用増加につながった。年齢面でも両社とも50代以下の起用を増やした。最年少は42歳で、取締役の平均年齢はフジテレビで67・3歳から59・5歳になるなど、約10歳近く引き下がり、経営陣の入れ替えを図った。
フジは3月末をめどに提出される第三者委員会の調査報告書を受け役員体制を見直す方針を示していたが、金光社長は前倒しの理由を「信頼回復のためには経営体制の刷新が大きなポイント。できる限り早急にやった方がいいと判断した」と説明した。