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昨年10月に虚血性心疾患のため76歳で亡くなった俳優西田敏行さんのお別れの会が18日、東京・増上寺で営まれ、俳優、スタッフ、芸能関係者ら約850人や一般のファンら約700人が参列した。
にぎやかに送ってほしいという生前の言葉通りの、役者人生の軌跡が見える会となった。50年来の仲間「五人会」のメンバー柴俊夫、松崎しげる、「ドクターX」で共演した米倉涼子、劇作家、演出家三谷幸喜さんが弔辞を読み、西田さんをしのんだ。
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会場へ続くアプローチには、映画「植村直己物語」「ステキな金縛り」「星守る犬」「敦煌」など数々の出演作のポスターが展示された。入り口では「ドクターX」シリーズで長年演じた蛭間院長のパネルが出迎え、「釣りバカ日誌」シリーズや大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のオフショットやプライベートショットなど、さまざまな写真が飾られた。西田さんの76年間の人生、58年間の役者人生の軌跡が分かるようになっていた。
所属事務所の小林保男代表は謝辞で「生前『自分の葬儀やお別れの会はにぎやかな会にしてほしい。笑顔でお帰りいただきたい』と娘さんたちに話していたそうです」と明かした。その言葉通りの会で、会場には代表曲「もしもピアノが弾けたなら」をはじめ、尾崎紀世彦さんのヒット曲をカバーして歌った「また逢う日まで」などの楽曲や、出演作VTRも流された。
故郷福島の磐梯山や猪苗代湖を約4000本の花で模した祭壇には、2年前に撮影された写真が飾られた。西田さんらしいチャーミングな笑顔で、参列者に話しかけそうな雰囲気を見せていた。
幅広い年代の参列者が集まり、西田さんがいかに愛されていたかを思わせた。弔辞を読んだ「五人会」のメンバー柴、松崎はそれぞれ「さよならは言いません」「またな」と声をかけ、米倉は「大好きだよ」と涙した。三谷さんは、西田さんの思い出話を笑いとともに振り返った。
増上寺は、西田さんがNHK大河ドラマ「葵 徳川三代記」(00年)で演じた徳川秀忠らが眠っている。秀忠の臨終シーンで「お江が眠る増上寺に葬ってほしい」と遺言した縁もあった。境内には一般の献花台も設けられ、ファンが手を合わせる姿も見られた。
役者、エンターテイナーとして生きた西田さんを表すように、戒名は芸の文字が入れられた「芸月院敏那覚優居士(げいげついんびんなかくゆうこじ)」。【小林千穂】