
白石晃士(監督)×背筋(原作&脚本協力)の最恐タッグ!W主演:菅野美穂×赤楚衛二による、未体験《場所ミステリー》 映画『近畿地方のある場所について』が8月8日より公開となります。
行方不明のオカルト雑誌の編集者。彼が消息を絶つ直前まで調べていたのは、幼女失踪、中学生の集団ヒステリー事件、都市伝説、心霊スポットでの動画配信騒動など、過去の未解決事件や怪現象の数々。なぜ消息を絶ったのか?いまどこにいるのか?同僚の編集部員・小沢(赤楚衛二)とオカルトライターの千紘(菅野美穂)は、行方を捜すうちに恐るべき事実に気がつく。それらはすべて、“近畿地方のある場所” へとつながっていたのだった…。

映像化が難しいと思われる原作を見事に紡ぎ上げた白石監督、元々白石監督作品のファンであるという背筋さんのお2人に、作品へのこだわりなどお話を伺いました!
――白石監督は原作をお読みになった時、率直にどの様な感想を抱きましたか?
白石:最初は「カクヨム」で少しずつ更新されていく文章を読んでいました。書き手が、これを「フィクションとして読ませようとしている」のか、「完全なノンフィクションとして出している」のか、それともその間を狙っているのだろうか?と考えながら読んでいた記憶があります。「カクヨム」で他のホラー作品を読んでいれば、「フィクションなんだけど本当っぽい」という面白さを味わうものだと思ったのでしょうけど、予備知識が無かったので。なので、あの時に読んでいた皆さんと同じ感覚だったと思います。最初は、ちょっと“見極めよう”ぐらいの感じもあったんです。そのくらいのリアリティがあったので。
――背筋さんはそのラインを意識されていたのですか?
背筋:そうですね。今の監督の話をお借りするなら、「フィクションだけど、そういう立て付けの作品として楽しんでね」というつもりで書いていました。なぜそのバランスで書こうと思ったかというと、私は監督が作られた『ノロイ』(2005)という映画がすごく好きで。あの映画を観て、「これって本当なの?フィクションだよね?」という強烈な印象があり、そんな作品を作りたいと思い「近畿地方のある場所について」を書き始めたので。こうして白石監督に映画化していただけるなんて夢の様です。
――白石監督は読んでいて、自分の作品に近いものを感じたりしたのでしょうか?
白石:そうですね、もう読み始めた時にすぐ『ノロイ』っぽいって。ただ、そう思いつつも、本当はどうなのかという気持ちもありました。
背筋:もうこんなに嬉しい、ありがたいお言葉はありません。

――私も最近『ノロイ』を見返す機会に恵まれまして、改めて面白いなあと思っていたのですが、今はなかなか入手しづらいですよね。
白石:配信されていないのと、DVDも手に入りづらいかもしれませんね。最近、海外で「Jホラーセレクション」という形で、『リング』などの作品と一緒に、『ノロイ』や『口裂け女』(2007)が収録されて販売されています。
――背筋さんはリアルタイムでご覧になったということで羨ましいです。
背筋:まだ学生だったので、とても驚きました。ショッピングモールに友達と観に行って、その時は「これは映画館で上映されているのだからフィクションだろう」ということを考えない純粋さを持っていたんですよね。「とんでもないものを観た」という衝撃で帰り道は、みんな無言で自転車をこいでいました。
白石:私も当時、新宿の映画館に1回観に行ったんですけど、前の席が4人くらいの女の子グループで、終わった後に「これって本当なんだよね?」みたいに戸惑っていて嬉しかったですね(笑)。

――『ノロイ』の山中シーンも素晴らしかったですが、本作での山中シーンも最高でした。
白石:原作が最終的に山に向かっていく感じなので、クライマックスは山だなと思っていました。私は山が好きで。好きっていうか、山の中で怖いことが起こるのが好きなので。山に囲まれた町で育ったので、雨の日には荘厳な雲が山全体にかかったりして、独特な雰囲気になったりするんですよね。2年ぐらい前に帰省した際、そういえばこんな中で育ったよなって思い出して。そういう環境で育つと、山には得体の知れないパワーがありそうだなと思っちゃうんですよね。
背筋:本作の舞台を特別にそこに設定したわけではないのですが、奈良県生駒市と大阪府東大阪市の県境に「生駒山」という山があって、家が近かったので、たまに行くことがあって。監督がおっしゃったことの繰り返しになってしまうのですが、得体の知れない、大いなる力がありそうだなということを感じていたんですよね。あとは、物理的に天に近いので、宇宙的なパワーもあるのかしら…という、そんな深読みをしたくなっちゃうような場所で。別に神秘的な話でもなく、特別な空気を感覚として受け取っている部分がありました。
白石:神道的な感じというのかな、そういう不思議なパワーを感じますよね。

――脚本協力に背筋さんが入っていらっしゃいますが、どの様な部分で協力しあったのでしょうか。
白石:映画の限られた尺に収めるために原作のエピソードから取捨選択する必要があり、なおかつクライマックスで(原作から)アレンジした新しい方向に向かっているので、そのままだと整合性がガタガタしている時があったんですよね。その段階で背筋さんにチェックしていただいて、整合性に関するアドバイスを色々いただきました。原作の整合性についても詳しくまでは伺っていなかったので、そこも聞きながら「映画版だとこれが良さそうですね」という感じで提案していただいて。
色々な要素が絡み合った原作なので整合性を保ちながらラストに向けて盛り上げていくということは難しかったですけれど、面白かったです。あとは「もっと白石監督っぽくしてください」みたいなことも言ってくれました。
背筋:白石作品ファンとしては、“あの”雰囲気を感じられる映像を観たいなと思っていたのでお願いしていました。あと、今思い出したのですが、劇中に“昔話パート”が出てくるのですが、そこについて色々と提案をさせていただきました。私、昔話が大好きで。昔話ガチ勢なんです。それで、本作の中にも昔話パートを入れてくださるというお話しがあったので、書かせてくださいとお願いして。昔話に対しては急にすごい熱量で話していたので、皆さん謎だったと思います(笑)。
――昔話、めちゃめちゃ怖かったです…!
背筋:私が書いたのはあくまで文字なので、映像に仕立ててくださった皆さんに感謝です。
――怪物、もしくは怪物になる前の存在が、母性というか、女性を強く求めている所が怖いですよね。
背筋:原作もそうなのですが、“執着心”というものは一つのテーマになっています。その執着は突き詰めれば愛や自己実現だったりするのですが、その表現の仕方を間違えると不気味ですし、怖いですよね。

――背筋さんは、原作者であり映画の制作に携わっていますが、いち白石作品ファンとして、どのタイミングで映画を観るか迷ってしまいそうですね。
背筋:そうですね。脚本もすごく丁寧に、確認のために何度もお送りいただいて、撮影現場もお邪魔したのですが、なるべく薄目で見ていました。一番最初は観客として映画を観たかったので。原作者として脚本協力もしている立場として、全力で関わらせていただいていますが、ファン心理としては複雑なんです(笑)。
白石:そういえば、現場で菅野(美穂)さんが、率先して「背筋さんこれ見てください!」って動画を見せていましたよね。
背筋:「これ見てください!」って笑顔で過酷なシーンを見せてくださったのですが、笑っていいのか、怖がった方がいいのか、お疲れ様でしたと言った方がいいのか、どうしたらいいか分からなかったです(笑)。でも菅野さんは爆笑していたので、あ、笑っていいんだって安心しました。
――背筋さんが学生の時に白石監督の作品を観ていて、そんなお2人が一緒に作品作りをするというのが胸熱だなと思います。世代的に、子供の時に触れたホラーコンテンツが違っても通じ合えることも素敵ですよね。
白石:私が小中学生の頃って心霊番組がたくさんありましたからね。超能力番組、UFO番組もたくさんありました。ユリ・ゲラーと一緒にスプーンを曲げようとしていた子供でしたから。
背筋:私が子供の頃は監督の頃と比べて少ないと思うのですが、「奇跡体験!アンビリバボー」とか「USO!?ジャパン」とかは放送されていて、怖くて好きでした。あとは夏になると「学校の怪談スペシャル」的な番組とか。私の子供時代が、ギリ地上波で心霊番組が放送されていた頃なのかなと思います。
怖い話って、多くの子供は好きな気がしていて。私が小学校の頃は図書館の「学校の怪談」の本とかいつも貸し出し中になっていて。今の子供たちも地上波の番組ではない方法で怖い話やホラーコンテンツを楽しんでいるんだろうなと想像しますね。
――本作が若い方のトラウマになってほしいなという期待も勝手にあります。
白石:「なんだこれは」と思って、ホラー映画をたくさん観てくれるようになったら、私の仕事も増えるから嬉しい限りですね(笑)。
背筋:私は「ノロイ」をまだ観たことの無いひとに、どんどん観て欲しいので、この作品を観て、色々検索して知ったことがきっかけになれば嬉しいなと思います。
――今日は楽しいお話をありがとうございました!

撮影:オサダコウジ

『近畿地方のある場所について』 8月8日(金)公開
原作:背筋「近畿地方のある場所について」(KADOKAWA)
出演:菅野美穂、赤楚衛二
監督:白石晃士
脚本:大石哲也 白石晃士
脚本協力:背筋
音楽:ゲイリー芦屋 重盛康平
主題歌:椎名林檎「白日のもと」(EMI Records/UNIVERSAL MUSIC)
配給:ワーナー・ブラザース映画
オフィシャル:http://KINKI-MOVIE.JP
コピーライト:©2025「近畿地方のある場所について」製作委員会