中国最大手のメッセージアプリ「WeChat(微信)」の開発企業であるテンセントが、現在、ARプラットフォームを独自開発中であることが判明した。
WeChatは「Weibo(微博)」に並び、中国で非常に広く普及しているSNSアプリの1つ。メッセージアプリの枠を超えて独自の決済機能サービスも搭載されており、現地ではタクシー支払いなどにも使用されるケースもある。
まだ詳細はあまり明かされていないが、どのようなプラットフォームに設計されるのか、各方面から注目が集まっている。
WeChatによるARプラットフォーム開発の狙い
決済サービスなどの世界展開を目指した戦略!
Tech in Asiaは今回のニュースを紹介した記事の中で、ARプラットフォームの開発は、ARコンテンツを決済サービスやエンターテイメント、ショッピングなど幅広いサービスをWeChatが世界展開していく上で重要な一歩になる、と語っている。
先にも述べたように、WeChatは単なるメッセージングアプリではなく、ユーザーの日常生活の各局面において活躍するように様々な機能を盛り込まれたアプリになっている。WeChatを使えば、医者の診察予約をはじめ、その診察代を電子マネー決済することも可能だ。
こうした諸機能の性能をARによって向上させることができれば、よりサービスの利便性を高める事ができるだろう。
とはいってもこれらのサービスがARによって一体どのように変化するのか、具体的に想像できないという人も多いかも知れない。
そこで、ここでは決済サービスを例にとって説明してみよう。XR技術を活用したフィンテックの中でも、VRを活用した決済サービスは、「Worldpay」をはじめ既に多数リリースされている。
「Worldpay」では「AirPIN」と呼ばれるセキュリティ技術を活用した暗証番号入力システム。ユーザーの周囲にランダムに配置されたナンバーを組み合わせる入力方式にすることで、第三者に暗証番号が漏れるリスクを最小限にすることが可能だ。
もちろんこれはあくまで一例であり、このようなアプリが実際に開発されるかは不明だ。しかしXR技術を用いることで、既存の技術、サービスがどの様に変化するかを伺い知る1つの参考例にはなるだろう。
中国政府の規制対策
WeChatがARKitやARCoreなどを活用したアプリが並ぶプラットフォームではなく、あくまで「独自開発」のプラットフォームを求めているのには別の理由もある。中国政府がFacebookやTwitter、Instagramなどの欧米圏で制作されたアプリケーションをしばしばシャットダウンする傾向にあるからだ。
加えて中国はプラットフォームの締め出しも厳しい。たとえばGoogle Playは完全に締め出されているし、アップルのアプリストアのラインアップにも厳しい制限が設けられている。
このため将来的に巨大なARプラットフォームが誕生したとしても、中国国内からアクセスできなくなってしまう可能性は高い。だからこそ、中国国内企業がプラットフォームを開発する意味があるのだ。
「WeChat Mini Programs」にもARアプリがある
またプラットフォームとは別に、WeChatが昨年12月に「WeChat Mini Programs(微信小程序)」と呼ばれるWeChat内で使えるアプリを集めたページを公開している点にも注目するべきだろう。
「WeChat Mini Programs」のカテゴリにはARアプリも含まれているのだ。
「WeChat Mini Programs」は通常のスマートフォン用アプリと違い、個別にアプリをダウンロードしてインストールする必要はない。QRコードなどからアプリを検索するだけで、WeChat内で使用することができるようになっており、アプリ仕様の利便性が高められている点が特徴だ。
「WeChat Mini Programs」の中国現地での評判は分からないが、手軽にアプリを使えるという利点から多くのWeChatユーザーに利用されているのではないかと予想される。このためARアプリが中国で急速に普及していくようになるかも知れないのだ。
ラインアップにはARゲームアプリが多くなる?
また最後になるが、運営企業であるテンセントがオンラインゲーム業界における最大手企業であることも忘れてはならないだろう。このため新プラットフォームにもARゲームが多数登場することが予想される。
実際Tech in Asiaによれば、独自の3Dレンダリングエンジン開発などを担当しているWeChatのAI開発チームが、鎧を着たゲームのキャラクターらしき人物が写ったAR画像を公開していたようだ。
WeChatのARプラットフォームがいつリリースされるのかは現段階では不明だが、しかし一度リリースされれば、そのAR・VR業界に与える影響力はとても甚大なものになるだろう。
どのようなプラットフォームにデザインされ、また、どのような種類のARアプリが並ぶことになるのか。続報を待ちたい。
参考URL:
Tech in Asia
https://www.techinasia.com/wechat-first-look-ar-platform
Road to VR
https://www.roadtovr.com/chinas-largest-messaging-app-wechat-creating-ar-platform/
Copyright ©2017 VR Inside All Rights Reserved.