犬との散歩の運動効果を調査
犬と暮らすことで人間が得るメリットについては、様々な方向から研究が行われ発表されています。中でも一般的でわかりやすいもののひとつは、「運動不足の解消」があるのではないでしょうか。
犬と暮らしていると毎日の散歩は必須ですから、このように考える人が多いのは無理もありません。また運動不足は心血管疾患などのリスクを高くするため、定期的な運動は現代人にとって重要な課題でもあります。
では犬の運動は、実際に運動不足を解消するほどの効果をもたらすのでしょうか?この点についてオーストラリアのシドニー大学医学部と獣医学部、アメリカのペンシルバニア大学獣医学部の研究チームが調査を行ない、その結果が発表されました。
心拍数計や歩数計を付けて犬の散歩を計測
この調査への参加者はソーシャルメディア、印刷広告、口コミを通じて募集されました。参加資格は18歳以上であること、週に4回以上犬を散歩させていること、散歩に影響する身体的制限がないこと、シドニーに居住していることなどでした。
犬の参加資格は1歳以上であること、体重5〜32kgであること、散歩に影響する身体的制限がないこと、短頭種でないこと(運動によって健康リスクが高まる可能性があるため)でした。
調査には43名が参加し、参加者の内訳は女性が27名男性が16名、平均年齢は34.26歳だったそうです。
参加者は7日間の犬の散歩の回数と、時間を自己記録して提出します。ベースラインのデータとして平常時の血圧、心拍数も測定されました。
参加者は毎日の散歩の際に心拍数モニターの装着、歩数や時間を追跡するために携帯端末機器の携行をした上で、毎日最低20分間のオンリードでの犬の散歩が指示されたといいます。
犬の散歩は運動としては軽度〜中度
測定結果を分析して犬の散歩の運動強度を計算したところ、心拍数と歩行速度などから単純に算出された結果では運動強度は「軽度」とされました。しかし、散歩中の停止時間などを考慮調整したところ「中度」という結果となりました。
ご存知のように犬の散歩は途中で立ち止まる回数が多いものです。立ち止まってまた歩き出すことは「加速と減速を伴う歩行」となり、一定速度での歩行よりもエネルギー消費が大きくなるのが一般的です。
健康のために推奨される身体活動の強度は「中度〜強度」と言われているため、この調査で得られた結果ではこの基準を満たすのは難しいことが示されました。
しかし中度〜強度の基準に達していなくても、定期的な身体活動や有益だと認識することが重要だと研究者は述べています。
犬の散歩だけで理想的な運動強度に達することは簡単ではないが、他の戦略と組み合わせることで健康的な身体活動を行なうことが可能だということですね。
さらに犬のサイズや犬種によっても運動の強度に違いが出ますので、この点については今後さらに研究が必要だとのことです。
まとめ
犬の飼い主を対象に散歩中の心拍数、歩数、速度などを7日間計測した結果、一般的に犬との散歩の運動強度は「軽度」〜「中度」に分類されたという研究結果をご紹介しました。
犬との散歩は「体を動かす」というだけでなく、愛犬とのコミュニケーションという重要な目的が含まれています。
そもそも散歩の目的は「犬の楽しみと運動」なので、飼い主の運動不足解消は愛犬との散歩のちょっとしたオマケ程度に考えて、犬ファーストで歩いた方が良さそうですね。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.pmedr.2024.102715
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