野生生物の多くは自分だけの縄張り(テリトリー)を持っており、侵入者がいれば追い払うまで戦います。
縄張りの広さは、生物のサイズや行動範囲によって大なり小なり様々です。
しかし今回、カナダ・カールトン大学(Carleton University)の最新研究で、世界最小の縄張りが発見されました。
体長1〜2ミリのガの幼虫が極めて小さな縄張りを死守するための行動が確認されたのです。
それはどんな縄張りで、どのような行動を取るのでしょうか?
研究の詳細は2025年4月1日付で科学雑誌『Journal of Experimental Biology』に掲載されています。
目次
- 世界最小の縄張り争いを発見!
- 侵入者を追い払えない場合はどうする?
世界最小の縄張り争いを発見!
「縄張り争い」と聞くと、大型の動物や鳥の激しい戦いを思い浮かべるかもしれません。
しかし今回の主役となるのは「ファルカリア・ビリネアタ(Falcaria bilineata)」という蛾の幼虫です。
本種は北アメリカに広く分布し、大人になると翼開長2.8〜3.3センチになりますが、幼虫のときはさらに小さく、体長1〜2ミリほどしかありません。
そんな彼らは葉っぱの先端に陣取って生活することが知られています。
これは葉っぱの先端が他の部位に比べて栄養価が高いから、捕食者が来ても物理的に逃げたり、隠れやすい位置にあるから、といった理由が指摘されています。

そして研究チームはこのほど、ファルカリア・ビリネアタの幼虫が同種のライバルに対して、縄張りを死守するための様々な行動を取ることを新たに確認しました。
チームは、葉っぱの先端に陣取った幼虫に、もう1匹の幼虫を侵入させる実験を実施。
その結果、先住していた幼虫は体を激しく動かして、葉っぱを振動させたり、(人間の耳には聞こえない)音を出して警告することがわかったのです。
これによって、侵入してきたライバルは縄張りから去っていく確率が高くなっていました。
また興味深いのは、彼らの縄張り争いにおいては決して相手に手を出さないことです。
葉っぱを揺らして「こっちに来るな!」とは伝えるものの、お互いが物理的に接触することはありませんでした。
以上の結果は、ファルカリア・ビリネアタの幼虫が縄張り争いをすると同時に、これが世界最小の縄張り争いであることを示しています。
さらに縄張り争いに負けた場合に、ファルカリア・ビリネアタの幼虫は非常に面白い行動を取ることがわかりました。
侵入者を追い払えない場合はどうする?

先に述べた一連の追い払い行動が通用しない場合、ファルカリア・ビリネアタの幼虫はどのような行動を取るのでしょうか?
観察の結果、非常に興味深い行動が確認されています。
上の映像を見ると、侵入者が無理やり葉っぱの先端を陣取ることで、先住していた幼虫は葉っぱの外に落下していきました。
これで場外アウト…かと思いきや、次の瞬間、驚きの光景が見られます。
なんと弾き飛ばされた幼虫はまるでスパイのように、葉っぱに糸をつないでぶら下がっていたのです。

この状態で侵入者が去るのをじっと待つか、そうでなければ、また別の場所へと去っていく行動が確認できました。
今回の研究では、キャタピラーが振動を使って縄張りを守る様子が明らかになりましたが、まだ解明されていない部分も多くあります。
例えば、この縄張り争いは他種の生物に対しても行われるのか、それとも同種のライバルだけに行われるのかといった点です。
今後のさらなる研究で、世界最小の縄張りを守るための詳しい戦略が明らかになることが期待されています。
参考文献
Newborn Warty Birch Caterpillars Claim the World’s Tiniest Territory
https://bioengineer.org/newborn-warty-birch-caterpillars-claim-the-worlds-tiniest-territory/
Newborn warty birch caterpillars defend the world’s smallest territory
https://phys.org/news/2025-04-newborn-warty-birch-caterpillars-defend.html
元論文
Buzzing boundaries: tiny caterpillars vibrate to defend leaf tip territories
https://doi.org/10.1242/jeb.249796
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部