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知能が低く低学歴な人ほど占星術を根拠があると信じやすい


ミネソタ大学の研究によれば、占星術を科学的と信じる傾向は、主に知能や学歴が低い人に見られることが明らかになりました。約8,553人を対象に、知能、学歴、宗教、政治的立場などを調査した結果、知能や教育年数が低いほど占星術を信じる傾向が強いことが統計的に示されました。これに対して、宗教性や政治的立場、科学への信頼度と占星術への信念との関連はほとんど見られませんでした。

占星術の悪口ではありません。

アメリカのミネソタ大学(University of Minnesota Twin Cities、UMN)で行われた研究によって、占星術を科学的だとみなす人々には明確な傾向があることがわかりました。

その傾向とは、“知能や学歴が低いほど占星術を科学的な根拠があると信じやすい”というもの。

結果だけ見ると少し衝撃的かもしれませんが、決して一律に「頭が悪いから占星術を信じてしまう」という短絡的な話ではありません。

とはいえ、占星術そのものに科学的根拠が乏しいことは、長年多くの科学者が指摘してきたところ。

にもかかわらず、若い世代を中心に占星術の人気は根強く、スマホアプリで運勢や相性をチェックする人も少なくありません。

この“科学からは否定されがちなのに、なぜこんなに多くの人が占星術を信じるのか”という疑問は、占星術だけでなく、私たちが疑似科学やオカルト的なものに惹かれる理由を探るうえでも非常に興味深いテーマです。

どのような人々が占星術を科学的だと感じる傾向が強いのか、そして私たちの“信じる・信じない”の判断を左右する要因は何なのか――いったいその理由はどこにあるのでしょうか?

研究内容の詳細は『Journal of Individual Differences』にて「知能と占星術信仰における個人差(Intelligence and Individual Differences in Astrological Belief)」とのタイトルで発表されました。

目次

  • 8500人超のデータが示した“占星術信仰”の真実
  • なぜ知能と学歴が低い人は占星術を信じやすいのか?

8500人超のデータが示した“占星術信仰”の真実

知能が低く低学歴な人ほど占星術を根拠があると信じやすい
知能が低く低学歴な人ほど占星術を根拠があると信じやすい / Credit:Canva

占星術は、はるか古代バビロニアや中国の宮廷から、ケプラーやガリレオといった天文学者たちの時代に至るまで、さまざまな文化圏で「個人の運命や性格は天体の動きに左右される」という考え方として親しまれてきました。

中世の神学者アウグスティヌスは、まったく正反対の性格を持つ双子を例に「同じ日に生まれてもまるで違う」と占星術に疑問を投げかけ、16世紀の宗教改革者マルティン・ルターは「星々が決めるのではなく神が決める」と言及するなど、早い時代から批判の声も上がってきたのです。

しかし、現代においても占星術の人気は衰えず、たとえばアメリカでは約3割の人が占星術を「信じる」と回答したという調査結果もあるほか、若い世代の女性のうち4人に1人が占星術アプリをダウンロードしているとのデータもあります。

さらに血液型を知らなくても、星座は知っているという人は決して少なくありません。

心理学者ハンス・アイズンクは、「もし占星術の予測が再現性を持って当たるなら、それは疑似科学ではなく科学かもしれない」として真面目に検証を行い、一時は「火星効果(Mars Effect)」が話題を呼びました。

しかし、その後の厳密な研究では“火星効果”は再現されず、占星術自体には有意な科学的根拠がないという結論が主流です。

それでも「星占いが当たっている気がする」と感じる人が多いのはなぜか――神秘的なものへの飽くなき好奇心や、不安をやわらげるための心理的作用だけで説明できるのかどうかは、疑似科学・オカルト研究においても大きなテーマとなっています。

こうした疑問に関連して、「学歴や知能が高いと占星術を否定しやすく、逆に低いと信じやすい」という見方や、「宗教や霊的な信念を強く持つ人が天体の力を求めがちなのでは?」という仮説、あるいは「保守的・権威主義的な人々は占星術のような運命論を受け入れやすいのでは?」といった推測が以前から議論されてきました。

しかし、それらを大規模かつ多面的なデータで同時に検証した研究は意外と多くありません。

そこで今回研究者たちは、数千人規模の社会調査データを統計解析し、「いったいどのような要因が占星術を“科学的”だと感じさせるのか」を探るアプローチをとることにしました。

調査では、アメリカを代表する大規模社会調査「General Social Survey(GSS)」のデータを使用。

ここでは多様な質問がランダムに割り当てられ、さらにサンプリングにも工夫が施されており、アメリカ全体の人口構成をなるべく正確に反映するよう設計されています。

研究者たちは、このGSSの膨大な回答の中から「占星術を科学的だと思うか?」という質問に注目し、計8,553人分を抽出。

そして、それらの人々について、以下のポイントを詳しく調べました。

知能レベル(Wordsumテスト

簡単な語彙テストで、一般的なIQテストとも強く関連する指標です。

難解な問題ではなく、「単語と最も近い意味を持つ選択肢を選ぶ」というシンプルな形式なので、多くの人が回答できるユニークな方法といえます。

教育年数

人が何年学校教育を受けたかを数値化したもの。いわゆる学歴のめやすになります。

その他の要素

宗教性やスピリチュアリティ、政治的立場、科学への信頼度、そして年齢や性別、人種といった基本的なプロフィール。

占星術を信じやすいかどうかに関わっていると思われる要因を、一挙に調べました。

このように多角的なデータを組み合わせ、統計的に関連を分析したところ、知能や教育年数が低いほど「占星術は科学的だ」と信じている人が多いという傾向が、非常に明確に浮かび上がりました。

一方で、これまで「宗教的・霊的な信念」「保守・リベラルなどの政治的立場」「科学への信頼度」が関わっているのではないかと議論されてきましたが、今回の解析ではそれらはほとんど影響を与えていないか、あるいは有意な関連が見られなかったのです。

なぜこれが革新的なのか?

従来の研究はサンプル数が小さかったり、一部の要素だけを見ているものが多かったため、「本当にどの要因が占星術信仰に深く関わっているのか」ははっきりしませんでした。

ところが今回の研究では、膨大な人数(8,553人)を対象に、知能・学歴・政治観・宗教心などを一度に比較。

すると、占星術を「科学的」とみなす人の特徴として際立ったのは、“知能・教育の低さ”だけだったのです。

こうして、“占星術への信念と知能(あるいは学歴)”の相関が大きくクローズアップされたことで、疑似科学やオカルトを信じる心理を解き明かす手がかりが、よりはっきりしたと言えるでしょう。

なぜ知能と学歴が低い人は占星術を信じやすいのか?

知能が低く低学歴な人ほど占星術を根拠があると信じやすい
知能が低く低学歴な人ほど占星術を根拠があると信じやすい / Credit:Canva

今回明らかになったのは、占星術に対する信念を左右していた主な要素が「知能や学歴の差」であり、他の要因――たとえば宗教性やスピリチュアリティ、政治的傾向、科学への信頼度――があまり影響を与えていないという点です。

これは「学問的リテラシーや思考力の習熟度が乏しいほど疑似科学に引き寄せられやすい」という、いわゆる“表面的知識(Superficial Knowledge)”仮説を裏づける結果とも言えます。

以前から、「霊的世界観や宗教心が占星術信仰を支えている」「政治的に保守・権威主義的な人が運命論を好む」といった見方がありましたが、今回の大規模データの解析ではむしろそれらの影響がほぼ見られなかった、あるいは逆方向さえ示唆される部分もありました。

また、占星術をめぐる議論では、その神秘性や運命観が宗教・信念体系とどう結びつくのか、といった問題にも注目が集まりがちです。

しかし今回の調査対象では、スピリチュアル志向や政治的スタンスよりも、“知的理解力や科学リテラシー”といった面が大きくものを言っている可能性が高いと改めてわかったわけです。

たとえば過去の研究では、科学的な思考法や論理的検証を十分に身につけていない場合、見かけ上「それっぽく」感じる情報に引き寄せられやすいとされています。

学歴が低い、あるいは知能が低いと、こうした“それっぽさ”を見抜くための批判的思考力や知識が不足しているため、「占星術は科学だ」と誤って受け取りやすくなるのでしょう。

さらに教育や知能が限られていると、天文学と占星術を混同する人が多いという報告もあり、そもそも「どれが科学的根拠をもつ学問で、どれが疑似科学なのか」を明確に区別しにくくなる可能性があります。

加えて、知能や学歴が低い人ほど複雑な要因が絡み合う現実をシンプルな説明で理解したいという傾向を示す研究もあります。

占星術は「星のせい」と片づけることで認知負荷を減らし、安心感を得やすくしている面があるのかもしれません。

これは、占星術に限らず、疑似科学やオカルト的主張全般を人々が信じる理由を探るうえでも興味深い示唆となるでしょう。

一方で、研究としての限界も存在します。

「占星術は科学的だと思うか?」という問いが、必ずしも「占星術そのものを本気で信仰しているか」を正確に測るわけではない点です。

なかには、天文学そのものと混同し、「どこか科学的かもしれない」という曖昧なニュアンスで回答している人もいるかもしれません。

それでも、何千人ものデータを用いて多角的に分析している点は本研究の大きな強みであり、「占星術を科学だと見る人にはどんな特徴があるのか」を大きく前進させたと言えます。

占星術をはじめとする疑似科学全般に対する理解を深めるためには、単に「科学的根拠がない」と否定するだけでなく、そもそも人々がどのような思考パターンでこれらを支持しているのか、その背景にある教育や知能、情報の受け取り方などをより広い視野で考察していく必要があるでしょう。

今後は、より精密な測定手法や異なる文化圏のデータを用いて検証を進めることで、私たちがなぜ星の動きに一喜一憂し、どこまで現実と結びつけてしまうのかが、さらに鮮明になっていくかもしれません。

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元論文

Intelligence and Individual Differences in Astrological Belief
https://doi.org/10.1027/1614-0001/a000434

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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