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【歩く・転がる・泳ぐ】動物界全体の知恵を「変形しながら駆使するロボット」が登場


スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームが開発した「GOAT」は、移動中に形状を変えられるロボットです。このロボットは、険しい山岳地帯から、瓦礫が散乱する災害現場、さらには水中まで、多様な地形を柔軟に移動できます。GOATは、動物界からインスピレーションを受け、クモやカンガルーのように特有の動作を再現します。平坦な場所では車輪型、急斜面では安定性を保ち、下り坂は球体に変形しエネルギーを節約します。さらに水中を泳ぐ能力もあり、カメラがないにも関わらずセンサーで自己判断し最適な形に変形します。GOATはすでに異なる環境でのテストを成功させ、4.5kmの自律移動を達成しました。この技術は、災害救助や惑星探査に革命をもたらす可能性があります。

険しい山岳地帯や瓦礫が散乱する災害現場、あるいは月や火星のような未知の惑星。


これらの極端な環境をスムーズに移動できるロボットがいたら、人類の探査や救助活動に革命をもたらすことでしょう。


スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームが開発した「GOAT(Good Over All Terrains)」は、まさにそんな未来の移動技術を実現するロボットです。


GOATは、周囲の地形に応じて形状を自在に変えながら移動できる「変形ロボット」として設計されており、従来の車輪型や四足歩行型ロボットでは困難だった場所でもスムーズな移動を可能にします。


研究の詳細は、2025年2月26日付の科学誌『Science Robotics』に掲載されました。




目次



  • 動物界全体からインスピレーションを受けた変形ロボット「GOAT」
  • GOATは変形して前進し、転がり、泳ぐ

動物界全体からインスピレーションを受けた変形ロボット「GOAT」


従来のロボットは、車輪型、四足歩行型など、いくつかの移動タイプに分類されています。


それぞれにメリットとデメリットがありますが、共通する課題として、特定の地形には適応できても、異なる地形には対応しづらいという点が挙げられます。


例えば、車輪型ロボットは、平坦な道では素早く移動できますが、岩場や砂地では立ち往生してしまいます。


四足歩行ロボットは、障害物を乗り越える能力は高いものの、速度やバッテリー消費に課題があります。


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新しく開発された変形ロボット「GOAT」 / Credit:EPFL

EPFLの研究チームは、こうした課題を克服するために、一つの形状に依存せず、状況に応じて変化できるロボット「GOAT(Good Over All Terrains)」を考案しました。


GOATは交差する2本の弾性グラスファイバーロッドと、モーター付きの車輪4つという安価かつシンプルな構成となっています。


GOATの最大の特徴は、環境に応じて形状を変えられるという点です。


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シンプルな構成だが、環境に応じて変形できる / Credit:EPFL

このアイデアは、クモ、カンガルー、ゴキブリ、タコなど、動物界全体からインスピレーションを受けています。


動物たちはそれぞれの特徴をもっており、それらが移動面でも特有のメリットを生み出しています。


GOATは、自ら変形することで、状況に応じてそれら動物たちの特徴を再現できるのです。


では、そんなよくばりな変形ロボットGOATは、実際にどのように動くのでしょうか。次項で見てみましょう。


GOATは変形して前進し、転がり、泳ぐ


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様々な地形を進むGOAT / Credit:Max Polzin(EPFL)et al., Science Robotics(2025)

GOATは、平坦な道で車輪型に変形し、高速移動することが可能です。


また安定性に特化した形状に変化することで、急斜面でも安定して登ることができました。


これは崩れやすい砂利道でも同様であり、形状を変えることで転倒せずに移動できました。


また、下り坂では球体になり、エネルギーを節約しながら転がって移動します。


加えてGOATは地上を前進するだけでなく、水域を泳いで渡ることもできます。


特に驚くべきは、ロボットが自己判断で最適な形状を選択する能力です。


GOATにはカメラが搭載されていませんが、複数のセンサーから取得した情報に基づき、最適なモードに自動で変形することができるのです。


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GOATは変形してどんな地形でも効率よく移動できることを示した / Credit:EPFL

そして研究チームは、これらの能力を証明するために、さまざまな環境でGOATのテストを行いました。


結果的にGOATは、山岳地帯、水上、都市部の経路を合計4.5km自律的に移動できました。


GOATは、これまでのロボットが克服できなかった環境適応の壁を打ち破る、画期的な技術です。


EPFLの研究チームは、今後さらなる改良を進め、実用化を目指しています。


将来的にはGOATの子孫が、災害現場での探索、様々な環境の監視・調査、惑星探査などで利用されるかもしれません。



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参考文献

Morphing robot turns challenging terrain to its advantage
https://actu.epfl.ch/news/morphing-robot-turns-challenging-terrain-to-its-ad/

元論文

Robotic locomotion through active and passive morphological adaptation in extreme outdoor environments
https://doi.org/10.1126/scirobotics.adp6419

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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