空から飛来する「触手ドローン」が開発されました。
中国科学技術大学(USTC)の研究チームが開発したロボット技術SpiRobsは、タコの腕やゾウの鼻など、自然界のデザインを模倣しています。
「対数螺旋」という形状を活用することで、驚異的な適応力を実現しています。
研究の詳細は、2024年12月6日付の『Device』誌に掲載されました。
目次
- タコの腕やゾウの鼻に見られる「対数螺旋」を応用したロボット触手
- 空から飛来する触手ドローンが物体を「そっと」つかむ
タコの腕やゾウの鼻に見られる「対数螺旋」を応用したロボット触手
ロボットが物を掴むとき、どのような形状が最適なのかを考えたことがありますか。
従来のロボットアームは、関節や指を使って物を掴むのが一般的でした。
しかし、タコの腕やゾウの鼻は、それとは異なる方法で対象を掴みます。
彼らは自然界に見られる「対数螺旋」の法則に従って巻きつくことで、対象を柔軟に掴み、しっかりと保持することができるのです。

この対数螺旋は、巻貝の殻や銀河の渦、台風の構造など、自然界に広く存在するパターンです。
この形状は、最小限のエネルギーで力を伝達でき、物体への適応能力が高いのが特徴です。
研究チームは、これらを模倣し、ロボット技術「SpiRobs」を開発しました。
SpiRobsは3Dプリンティング技術を活用して製造され、サイズは数センチから1メートル以上まで拡張可能です。
駆動方式はシンプルで、ロボット内部に通された2本または3本のケーブルを引っ張ることで、巻きついたり、解除したりする動作が可能になります。
ではSpiRobsはどのような性能を示すのでしょうか。
空から飛来する触手ドローンが物体を「そっと」つかむ

開発されたSpiRobsは、タコやゾウの動きをロボットに適用することで、繊細な対象である卵やイチゴを傷つけることなく掴むことができます。
また、自身の260倍の重さの物体を持ち上げることも可能です。
さらに、対象物の形や大きさに自動的に対応できるため、これまでのロボットでは難しかった様々な物体をも掴むことができます。
また今回研究チームは、異なるサイズのプロトタイプを開発しました。
ミニチュア版では、昆虫のような小さな対象を掴むことに成功しました。
中型版では、日常的なオブジェクト(ペンや果物)を柔軟に掴むことができました。

大型版では、ドローンに搭載し、遠隔操作で物体を捕獲するシステムを開発しました。
その姿は、まるで空から飛来した触手生物のようにも見えます。
これら複数の例から、「SpiRobsはさまざまな環境で活躍できる汎用性を持つ」と言えるでしょう。
この技術が本格的に実用化されると、さまざまな分野での活用が期待されます。
医療や介護分野では、高齢者の補助ロボットとして物を優しく掴み、サポートすることも可能です。
同じように、宇宙開発、産業や物流の分野でも利用できるでしょう。
「対数螺旋」という自然界のデザインを活かしたSpiRobsは、単なるロボット技術の進化ではありません。
それは、生物の知恵を応用した「新たな生命体」のような技術なのです。
参考文献
Logarithmic Spirals: Robots inspired by octopus and elephant math
https://thekidshouldseethis.com/post/logarithmic-spirals-robots-inspired-by-octopus-and-elephant-math
SpiRobs: Octopus-inspired Logarithmic Spiral Robot
https://www.roboticgizmos.com/spirobs-octopus-inspired/
元論文
SpiRobs: Logarithmic spiral-shaped robots for versatile grasping across scales
https://doi.org/10.1016/j.device.2024.100646
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部