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宇宙で”火災”が起きる唯一の惑星「地球の自然火災はいつ始まったのか?」


人類の知るかぎり、地球は「火災」が起きる唯一の惑星です。

言われてみれば盲点かもしれませんが、自然下で火災が発生する惑星は他に見つかっていません。

しかしそんな地球も、約46億年前に誕生してから数十億年の間はまったく火災が起こらない状態にありました。

今では頻繁に山火事が発生していますが、地球では長らく”火のない時代”が続いていたのです。

では、どうして地球で自然火災が起こるようになったのでしょう?

そして、それはいつ頃のことだったのでしょうか?

目次

  • 自然火災に必要な「3つの条件」
  • 地球最初の自然火災はいつ?

自然火災に必要な「3つの条件」

まずもって、自然下で火災が起こるには3つの条件がそろっていなければなりません。

それは「燃えるもの」「酸素」「熱源」の3つです。

火とは科学的に説明すると、燃えるものと酸素が高い温度で結びつくことで生じる発熱反応を指します。

例えば、マッチは棒の先端の頭薬(燃える物)をマッチ箱にすばやく擦りつける摩擦熱(熱源)によって、酸素と反応し火がつきますね。

火をつけるには3つの条件が必要
Credit: canva

この3つの条件のうち、熱源は地球以外でも多くの惑星に確認できます。当然地球にも初期の頃から備わっていました。

最も一般的なのは「落雷」であり、これは今でも山火事の直接的な原因となっています。

他にも乾燥下での摩擦落石がぶつかる際の火花、稀ですが隕石の落下など、熱源は豊富に存在していました。

一方で、燃えるものと豊富な酸素については話が別です。これは他惑星でもなかなか見つけることが難しく、初期の地球にも存在していませんでした。

これらはいつ、どのように地球に誕生したのでしょうか?

地球に「酸素」はどうやって誕生した?

広く認められているように、地球最初の生命は約35億年前にあらわれたと考えられています。

それらの生命体は酸素を必要としない嫌気性であり、二酸化炭素を主成分とする大気中で暮らしていました。

しかし、それから長い年月を経た約24億年前に光合成をして酸素を生み出す「藍藻(シアノバクテリア)」が誕生します。

彼らが作り出した大量の酸素によって地球の酸素濃度は上昇し、そのおかげで大気中にオゾン層が形成され、太陽からの有害な紫外線をシャットアウトできるようになりました。

この約24〜20億年前にかけて起こった酸素濃度の急上昇を「大酸化イベント(Great Oxidation Event:GOE)」と呼びます。

シアノバクテリの出現で酸素が誕生
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

ここで初めて大気中に酸素が蓄積され始めましたが、それでも自然火災が起こるほどの濃度には達しませんでした。

大酸化イベントにより酸素は大気中の数%を占めるまでになったものの、英エクセター大学(University of Exeter)の先行研究で、大気中の酸素濃度が16%以下であれば、たとえ火がついても火は燃え広がらないことが判明しているのです。

(ちなみに現在の地球の酸素濃度は20.9%ですが、23%以上になると火災は急速に燃え広がり、自然環境にとって壊滅的な規模になるという)

要するに、大酸化イベント後でもまだ自然火災は起こりえなかったわけですが、大気の酸素濃度が上がったことで、より複雑な生命進化の舞台が整いました。

それが燃える物である「植物」の繁栄だったのです。

地球最初の自然火災はいつ?

地球最初の自然火災はいつ頃?
Credit: canva

これまでの化石研究で、約4億7000万年前のオルドビス紀には、植物が海から陸へ移動したことが分かっています。

さらに光合成をする植物は大気中の酸素濃度を10〜15%以上にまで高めることにも寄与しました。

ここまでくると、自然火災に必要な「酸素・燃える物・熱源」の3つの条件が十分に出そろったことになります。

そして現在、人類が知っている最初期の自然火災の証拠は、約4億2000万年前のシルル紀に遡ります。

イギリスのシルル紀地層から火に焼かれた木炭の化石が発見されたのです。

この頃には、地球上に自然火災が確実に発生するようになっていたと断定されています。

過去4億年の酸素濃度の移り変わり

他方で、先のエクセター大の研究が示すように、自然火災の規模や頻度は大気中の酸素濃度に大きく左右されるのものでした。

そこで英ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ(RHUL)の研究者が過去に、自然火災が起こり始めてからの約4億年間の酸素濃度の変遷を調べています。(Nature Geoscience, 2010)。

その結果、シルル紀以降は酸素濃度が一貫して上昇をつづけ、特に約3億8300万年前のデボン紀には自然火災が頻繁に起こり始めたことが判明。

さらに石炭紀(約3億5900万〜2億9900万年前)、ペルム紀(約2億9900万〜2億5200万年前)、白亜紀(約1億4500万〜6600万年前)は酸素濃度が高く、そのほとんどの期間で26%以上に達していると推定されました。

おそらく、この時期が地球で最も自然火災の過酷だった頃と見られます。

過去4億年間の酸素濃度の変遷
Credit: K. Cantner, AGI(Earth Magazine, 2018)

一方で、ペルム紀とジュラ紀の間にあたる三畳紀の前〜中期(約2億5200万〜2億2000万年前))は酸素濃度は非常に低く、現在よりも低い20%以下にまで低下しています。

この時期は自然火災があまり起きなかったか、小規模だったと推定されています。

そして白亜紀以降は、恐竜時代の終焉と重なるように酸素濃度も下り坂になり、26%から21%へと着実に低下していきました。

この数値は過去5500万年間でほとんど変動しておらず、現在に至っているようです。

山火事のニュースは世界各地から報道されており、火災は私たちが特に恐れる身近な災害の1つです。

しかし、それは宇宙全体で見ると地球ならではの珍しい現象と言えるのです。

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参考文献

For Billions Of Years, There Was No Fire On Earth https://www.iflscience.com/for-billions-of-years-there-was-no-fire-on-earth-71291 A flammable planet: Fire finds its place in Earth history https://www.earthmagazine.org/article/flammable-planet-fire-finds-its-place-earth-history The Origin of Wildfires and How They Are Caused https://www.treehugger.com/the-causal-history-of-forest-fires-1342893
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