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終末世界の貴重なタンパク源を育てる!デス・ストランディングみたいな「昆虫スーツ」


デザイナーのパベルス・リーピンス氏は、「ポストアポカリプス」な状況での生存手段として、「昆虫スーツ」を開発しました。これにより、人間は廃プラスチックを食べるミールワームと共生し、生存可能性を高めます。このスーツには、体温で温められる小型のテラリウムが組み込まれており、ミールワームがそこで育成されます。廃プラスチックを餌にするミールワームは体内に有毒成分を蓄えないため、人間の貴重なタンパク源として利用できます。この革新的なアイデアは、「Design Educates Awards」で2022年に銀賞を受賞し、過酷な環境での生存手段として注目されています。

小説や映画、ゲームなどのフィクションでは、たびたび人類の大部分が死に絶えた終末世界「ポストアポカリプス」が扱われます。

その世界では、核兵器や自然災害、疫病によって資源のほとんどが失われています。

もし、そんな中で人類が生き延びないといけないなら、おぞましいと感じる手段を使ってでも食料を確保する必要が出てくるでしょう。

デザイナーのパベルス・リーピンス氏は、将来の危機的な状況を見据えて、廃プラスチックを食べるミールワームと共生する「昆虫スーツ(Inxect Suit)」を開発しました。

人間の体温と地上に散らばった廃プラスチックでミールワームがスーツ内で繁殖し、そのミールワームを食べて人間がタンパク質を得るというのです。

目次

  • 終末世界で人間と共生するのはプラスチックを食べるミールワーム?
  • 腹部のミールワームと共生する「昆虫スーツ」

終末世界で人間と共生するのはプラスチックを食べるミールワーム?

このスーツは、デザインがなんだかゲーム「デス・ストランディング」に登場するものに似ている気がしますが、実際荒廃した文明崩壊後の世界での利用が想定されているようです。

ちなみにこの昆虫スーツ(左)、どこかで見たことがあるような……
ちなみにこの昆虫スーツ(左)、どこかで見たことがあるような…… / Credit:(左)Pavels Liepins、(右)Raziel Igor(YouTube)_Player is the BB –Death Stranding(2019)

一部の生物には共生(相互関係をもちながら生活すること)が見られます。

例えば、ヤドカリと小型イソギンチャクは共生しています。

ヤドカリは毒をもったイソギンチャクを貝殻につけて身を守っており、イソギンチャクの方もエサのおこぼれをもらうのです。

終末世界では共生が必要?
終末世界では共生が必要? / Credit:Canva

もし終末世界のように多くの生物が絶滅し、資源も枯渇している状況になれば、人間も共生できる生物を見つけ出す必要があるかもしれません。

リーピンス氏は人間の共生対象として、飼育動物の生餌にされる「ミールワーム」に着目しました。

スタンフォード大学(Stanford University)の2015年の研究と2019年の研究では、一般的なミールワームが日常的に使用されるプラスチック「ポリスチレン」を食べて消化できると報告されています。

「発泡スチロールを食べるムシ」がプラスチック問題を解決する、と建築家が提案【ムシ注意】

しかも体内に有毒成分を蓄えることがありません。

ミールワームは廃プラスチックを食べる
ミールワームは廃プラスチックを食べる / Credit:Pavels Liepins

このことは、廃プラスチックを与えたミールワームが、動物や人間にとって貴重な食料(タンパク源)になる可能性を示しています。

そこでリーピンス氏は、人間とミールワームが共生できる一体型スーツ「昆虫スーツ」を開発しました。

腹部のミールワームと共生する「昆虫スーツ」

体全体を覆う昆虫スーツ
体全体を覆う昆虫スーツ / Credit:Pavels Liepins

この体全体を覆うスーツの腹部には、ドーム型のテラリウム(飼育器)が埋め込まれています。

その中では複数のミールワームが飼育されており、人間から排出された熱と湿気が供給されるようになっています。

腹部のテラリウムでミールワームを飼育
腹部のテラリウムでミールワームを飼育 / Credit:Pavels Liepins

さらにテラリウムの中には、食料として廃プラスチックが投入されています。

つまりミールワームは人間の体温と人間がつくり出した廃プラスチックで成長・繁殖していくのです。

荒廃した世界には廃プラスチックもたくさん転がっていることでしょう。

そんなゴミを利用してミールワームを育成し、人間は成長したワームをスーツから取り出して貴重なタンパク源として摂取するわけです。

そのためこのミールワームは、人間に「食料」と「廃棄物問題の解決」という2つのメリットを提供してくれます。

昆虫スーツの共生システム
昆虫スーツの共生システム / Credit:Pavels Liepins

まさに人間とミールワームの共生が昆虫スーツによって可能になっているのです。

ちなみに、昆虫スーツのプロトタイプは、2020年11月に英国の北に位置するデンマーク領フェロー諸島で実際にテストが行われました。

このテストではかなり寒い環境だったにも関わらず、スーツ腹部の飼育器に入れらたミールワーム200gは1時間あたり3~5mgのポリスチレンを分解しすくすくと成長しました。

100匹のミールワームと共生したケースでは、1日で39mgのポリスチレンを分解できたようです。

フェロー諸島で行われた実験時の様子(左)。フェロー諸島の壱(右)。
フェロー諸島で行われた実験時の様子(左)。フェロー諸島の壱(右)。 / Credit:Pavels Liepins/wikipedia

ここからは本来ミールワームが育成するには過酷な環境であっても問題なく生存可能なことや、廃プラスチックを食べて育成可能なことがわかります。

ポストアポカリプス的な世界における実用性はまだ不明ですが、人間との「共生」というテーマについては見事に達成したと言えるでしょう

「人間とミールワームの共生」を再現
「人間とミールワームの共生」を再現 / Credit:Pavels Liepins

その証拠に、優れた教育的アイデアを表彰するDesign Educates Awards」のユニバーサルデザイン部門では、このアイデアが2022年の銀賞を受賞しました。

ちなみに開発された昆虫スーツは、雨風や放射線、空気中の病原体に対する防護機能が備わっており、過酷な環境にも対応できるのだとか。

ちょっと気持ち悪いですが、文明崩壊後の世界ではこうしたものに頼って生きていかざる負えなくなるのかもしれません。

廃プラスチックを食べるミールワームは他にいくつか研究報告があります。

実際発泡スチロールを食べる様子なども公開されているため、虫が苦手でない方は下の記事も参照してみてください。

「発泡スチロール」を食べて消化できるスーパーワームを発見!

全ての画像を見る

参考文献

‘inxect suit’carries plastic-eating mealworm colonies, sheltered by human body heat
https://www.designboom.com/design/inxect-suit-plastic-eating-mealworm-colonies-pavels-liepins-10-10-2022/#

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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