災害時に活躍する災害救助犬って知ってる?
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災害救助犬は、人命救助を行ううえでとても大切な役割を担っています。
近年、地震や台風などの自然災害が非常に多い日本では特に貴重な存在です。
今回は「レスキュードッグ」とも呼ばれている彼らがどんな仕事を行っているのか、その内容についてご紹介します。
また、災害救助犬に適しているのはどのような犬種か、ということについてもご紹介します。
災害救助犬の発祥はスイス
災害救助犬の発祥地は「スイス」だと言われています。
ヨーロッパでは古くから牧羊犬を用いていた歴史があり、災害救助犬の育成にも早くから力を入れていました。
特にスイスアルプスでは、雪崩による遭難者が多いことから、山岳救助に犬を用いました。
この理由から、スイスが災害救助犬の発祥の地と言われています。
この当時最も活躍していた災害救助犬は、バリーという名の「アルペン・マスティフ」という犬種です。
アルペン・マスティフは、現在スイスの国犬として認定されているセントバーナードの祖先といわれています。
バリーは、生涯にわたって40人以上の雪山遭難者を救助しました。
災害救助犬の活躍がとても大きいことが分かりますね。
災害救助犬と警察犬のちがい
「災害救助犬」と似た存在として取り上げられる「警察犬」ですが、実は違いがあります。
その違いは、捜索を行うときの鼻の使い方や、捜索対象とするにおいの数です。
警察犬は特定の人(容疑者)を探し出すために、その人特有のにおいを探し出す必要がありますが、災害救助犬は不特定の行方不明者を探し出す必要があるため、鼻の使い方やにおいの数に違いが生じます。
まず警察犬は特定のにおい(容疑者のにおい)を追って歩くために、鼻を下向きに使って捜索を行います。
しかし災害救助犬は、生存者を探し出すために空気中の浮遊臭を追って歩くために、鼻を上向きに使って捜索を行います。
この空気中の浮遊臭には、呼吸のにおい、また助けを求めている人のたんぱく質などを含んだストレス臭といったにおいが含まれます。
災害救助犬と警察犬では、探す対象が異なること、また探すにおいが異なるため、違いが生じます。
災害救助犬の仕事内容は?
人命救助のために非常に大きな役目を担う災害救助犬。
その仕事内容はどのようなものなのでしょうか。
倒壊した建物から行方不明者を探す
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地震や台風、土砂崩れなどの災害で倒壊した建物の下敷きになっているかもしれない行方不明者を捜索します。
災害救助犬は「3頭3名+隊長」が1チームになって捜索します。(チームの大きさは被害の大きさによって異なります。)
災害救助犬1頭につき、1名の指導手がつき、共に捜索を行います。
捜索の方法は、まず3頭のうち1~2頭の災害救助犬が捜索を行います。
待機している災害救助犬とその指導手は、隊長と共に、捜索活動を行っている災害救助犬の動向を見守ります。
その内の1頭が行方不明者発見の反応を示したら、同じ場所を違う災害救助犬に確認させます。
2頭目の反応が違う場合は、3頭目の災害救助犬に確認させます。
もし、3頭中2頭の災害救助犬が同じ反応を示した場合、その場所に行方不明者がいる確率が高いとして救助作業要請を依頼します。
このように、1頭が独立して捜索を行うのではなく、チームで協力しながら捜索を行っていきます。
山で遭難した行方不明者を探す
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災害救助犬は、登山やハイキング、山菜採りといった目的で山林に入り、遭難してしまった行方不明者の捜索でも活躍します。
複数の災害救助犬がいた場合の捜索方法は、まず「偵察班」と「確認班」に分けて捜索を行います。
ほとんどの場合、道に迷ってしまうこと、また滑落してしまうことが遭難の大きな理由となるため、捜索範囲の見当がつけにくく広範囲にわたって捜索を行う必要があります。
そのために、まず偵察班が先行し、人のにおいがあるかどうかを軽く浅く探索しながら進んでいきます。
何らかのにおいを救助犬が察知した場合は、それ以上深追いはせず、近くの木にテープなどで印をつけて先に進んでいきます。
ここで確認班の出動です。
確認班は印のついている場所に行き、印のついている地点のみを深く捜索していきます。
このように、複数の災害救助犬がいる場合は、チームに分かれて捜索を行っていきます。
もし災害救助犬の数が少ない場合は、チームを分けることが出来ないため、偵察と確認を両方行います。
ただ、災害救助犬のスタミナを考慮する必要があるため、往路は偵察のみに集中し、復路に確認を行うなど、工夫をしながら捜索を行っていきます。
災害救助犬の数や能力、またその指導手の数や能力を考慮しながら、隊長の判断により捜索方法が決められます。
遭難者や遭難者の所有物らしきものを発見した場合は、救助チームに連絡を取り、ヘリコプターや救急車などの手配を行います。
水難救助を行う
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災害救助犬の活躍の場は陸だけではありません。
海や川などで溺れてしまった人の救助や捜索といった、水難救助も行います。
水難救助における災害救助犬の役割は、溺れている人にロープや救命胴衣、浮き輪を運び渡すことです。
また、溺れている人の服を噛み、浅瀬まで連れて行くこと、そして溺れて意識を失っている人を探し出すといったことも行ないます。
災害救助犬も命をかけて、沢山の場面で人命救助を行ってくれていることが分かりますね。
災害救助犬に向いているのはどんな犬?
人命救助のため、厳しい環境の中でも命をかけて働いてくれる災害救助犬。
そんな災害救助犬に向いているのはどのような犬種なのでしょうか。
その特徴をご紹介致します。
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犬種や血統は限定されていない
意外に思われるかもしれませんが、災害救助犬になれる犬は「犬種」や「血統」で決まっているわけではありません。
つまり、どんな犬種でも災害救助犬になることが出来ます。
一般的に、「狩猟本能」が強い犬、また「警察犬」や「牧羊犬」として活躍している犬種が災害救助犬に向いていると言われていますが、大型犬が入り込めないスペースには小型犬が入り、捜索や救助を行うケースもあります。
体格に関わりなく災害救助犬になれるということですね。
では、災害救助犬になるために重要なことはなんでしょうか。
それは、犬の性格と能力です。
では、どんな性格や能力を持つ犬種が災害救助犬に向いているのでしょうか。
以下にその幾つかをご紹介致します。
人や動物に対して攻撃性がないこと
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災害救助犬の主な役割は「行方不明者の捜索」また「人命救助」です。
この役割を果たすために、人間に対する見方・行動や、チームとして働く他の災害救助犬との良い関係を築くことが大切なものとなります。
ですので、災害救助犬は人や動物に対して攻撃的な性格ではいけません。
災害救助を行う犬種は、温厚な性格であることが重要です。
嗅覚が優れていること
災害救助を行うために最も重要なのは嗅覚です。
遭難者や救助者を探し出すために、災害救助犬は臭いを頼りに探します。
災害時はけむりの臭いや土の臭い、水の臭いなど、沢山の臭いが発生する中で人間の臭いを嗅ぎ分けなければいけません。
それも、特定の人の臭いとは違い、不特定多数の人間の臭いを嗅ぎ分ける必要があります。
災害救助犬は嗅覚が優れていることが重要です。
体力があること
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災害地といった慣れない環境や、不安定な足場で行われる救助活動。
救助者を発見するのには時間がかかりますし、多くの救助者を探し出す必要があります。
また、水の中や山の中、がれきに覆われた場所といった過酷な状況で救助活動を行います。
自分の身に危険が生じる可能性もあるため、機敏に行動する必要もあります。
災害救助犬には、過酷な状況の中で救助を長期にわたって行うための体力が求められます。
その他にもこんな性格が向いています
他にも、突然の物音などに動じないことも重要な適正ポイントです。
災害現場では、がれきが崩れたり、土砂が落ちてきたりと、何が起こるか分からない状況です。
突然の大きな物音でも動じずに、災害救助を冷静に続けられる必要があります。
また、災害救助を行うために、高いところを捜索したり、狭いところや暗いところを捜索することもしばしばあります。
ですので、高所や暗所、また狭所を怖がらないという点も、災害救助犬の重要な適性ポイントです。
他にも、捜索を行う意欲があることや、集中力や忍耐力があることも重要です。