はじめに
ホテルの「リモートワークプラン」をはじめ、コロナ禍によってホテルステイの形にもさまざまな変化がありました。そして今、注目を集めているのが暮らすようにホテルに泊まる長期滞在プラン。日常そのものを旅気分で過ごせるホテルステイの形ですが、せっかく長い時間を過ごすならば、より快適な暮らしができるホテルを選びたいもの。そこで、ホテル評論家の瀧澤信秋さんに、長期間を快適に過ごせるホテルのポイントと、実際に泊まってみて過ごしやすかったホテルを3つ、教えていただきました。Photo&Text:瀧澤信秋
いま、ホテルの長期滞在プランが注目されている
社会のさまざまなシーンにおいて、これまでの常識が通用しなくなっていることは周知の事実です。コロナ禍で出掛けることそのものが忌避される中で、旅の需要が激減し、大打撃を受けている宿泊産業では、他の需要を創出し活路を見いだそうとする姿が際立っています。さまざまなホテルから「リモートワークプラン」や「デイユースプラン」「フレックスプラン」など日中に短時間滞在できるプランも出されていますが、最近では短時間とは逆にホテルに長期滞在というようなプランも注目されるようになってきました。ステイホーム・在宅ワークというように、「家」がフォーカスされる機会が増えています。宿泊がホテルにとって基本的な機能と捉えると、やはり住まうこととホテルは近しい関係にあります。実際に昔からホテルを住処とする有名人が話題になることも。ホテルが住まいとまではいかなくても、筆者の知人には自宅の改修工事中にホテルを仮住まいとして活用したという話を聞いたことがあります。

「サービスアパートメント」や「レジデンスホテル」というワードもにわかに脚光を浴びてきており、既存のホテルも長期滞在に資するような客室リニューアルや備品の導入などを進めるケースが目立ちます。そうしたホテルは高級ホテルからビジネスホテルまでさまざまですが、いずれにしてもホテル暮らしがより身近になったことは間違いないでしょう。今回は、実際に長期ホテル暮らし体験もある筆者が、滞在型ホテル・滞在型プランにおいて実際に“住まう”ためのポイント、おすすめホテルなどを紹介します。

長期滞在を快適に過ごすために注目したい6つのポイント
▲リラクゼーション設備の有無も重要なポイント(ヒルトン東京お台場)長期滞在となれば、一般的な客室ステイよりも着目すべきポイントはより多くなります。以下に6点挙げてみました。
ポイント1 【客室】
・客室の面積は十分か
・窓は開閉できるか
・デスクサイズ
・客室の向き
・ネット環境
・調度品・備品のクオリティや使いやすさ
・照明のポジションや照度 など
ポイント2 【食事】
・朝食のメニューやその内容に変化はあるか
・電子レンジやキッチン、器具・食器の有無
・近隣にコンビニエンスストア、スーパーマーケット、価格・内容等バラエティに富んだ飲食店、できればテイクアウトが気軽にできるようなお店があるか など
ポイント3 【サービス】
・ラウンジの有無
・コンシェルサービス
・洗濯機の設置 など
ポイント4 【付帯施設】
・ジムやスパ、サウナなどリラクゼーション設備の有無
ポイント5 【アクセス】
・最寄り駅の近さ
・路線の便利さ
・駐車場の有無、料金 など
ポイント6 【周辺環境】
・日用品の買い物ができるお店の有無
・ウォーキングやランニングの快適な環境 など
おすすめの長期滞在ホテル3選
これらのほかにも、個々人によって着目するポイントはさまざまでしょう。今回は実際に一定期間滞在してみて快適に過ごせた3つのホテルを紹介します。“窓が開閉できることはポイント”と前述しましたが、今回紹介する3軒(3室)はいずれもバルコニーが備えられており、気分転換にも最高です。①展望大浴場 あさひ湯 ドーミーイン・global cabin浅草(東京都台東区)



◆展望大浴場 あさひ湯 ドーミーイン・global cabin浅草
住所:東京都台東区花川戸1-3-4
②hotel MONday Premium 京都駅東九条(京都市南区)



◆hotel MONday Premium 京都駅東九条
住所:京都府京都市南区東九条上御霊町15-1
③ヒルトン東京お台場(東京都港区)



◆ヒルトン東京お台場
住所:東京都港区台場1-9-1
おわりに
長期滞在プランを活用して実際に宿泊した体験をもとに、重視すべきポイントなどを見てきました。無論、利用料金は一番気になる点でしょう。こうした施設やプランでは、社員使用等を前提とした企業が契約することも多いですが、個人についていえばそれぞれの価値観によるところもあるのは言わずもがな。とはいえ、提供される客室やサービスなどを鑑みると“安い”と感じる都市生活者の声は多いのは事実です。今後、多様化していくことが想定されるサービスアパートメントやレジデンスホテル、ホテルの長期滞在プランだけに、それぞれのスタイルに合ったサービスが見つけやすくなるかもしれません。
1971年生まれ。ホテル評論家、旅行作家。国内ホテルを対象に、利用者目線やコストパフォーマンスを重視した取材調査、評論、批評を行う。財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボードを務めるほか、多数メディアでも幅広く活躍。著書に『辛口評論家、星野リゾートに泊まってみた』(光文社新書)など。