みなさんこんにちは。トラベルジャーナリストの橋賀秀紀です。
いきなり昔話で恐縮ですが、かつて「ハイアッター」という言葉がありました。今でこそホテルの上級会員だの修行だのというといの一番に挙げられがちなのはマリオットですが、少なくとも2000年代半ばに独走していたのは、おそらくハイアットでした。
なにしろ内容がすごかった。「ファースターフリーナイト(通称:FFN)」というキャンペーンは、世界中のハイアットどこかに2滞在すれば、世界中のほぼすべてのハイアットに無料宿泊できるというとんでもないものだったのです。
当然のことながら、世界中で安いハイアットを探して2滞在しては、貯めた無料宿泊の権利を世界中で最も高い部類のハイアットで泊まる人が多数誕生したわけです。筆者もニュージャージーのハイアットに37ドルで泊まり資格を獲得し、パークハイアット東京やパリ、ミラノなどに無料で宿泊したことがありました。
しかし、そんな逸話もすっかり過去のものとなりました。ハイアットのホテルプログラムは「ゴールドパスポート」から、「ワールドオブハイアット」と名前を変え、いまではすっかりおとなしいプログラムとなってしまいました。
ところが、コロナ禍がその状況を変えました。大人しくしているだけでは、厳しい状況で生き残っていけません。そこで、ハイアットは第一の矢を放ちました。
「ボーナスジャーニー」の登録で2倍カウント
それが「ボーナスジャーニーキャンペーン」です。これは、10月1日から2021年1月15日までの間にハイアットの公式サイトで登録を済ませると、2021年2月28日までの滞在で貯まるポイントが3倍になるうえ、上級会員資格獲得のための宿泊数が2倍(つまり1泊すると2泊分としえカウント)されるというもの。
ハイアットの上級会員制度のうち、事実上の最上級会員はグローバリストです(その上にライフタイムグローバリストがありますが、これは資格獲得のために数千万円単位の資金が必要なのでここでは省略します)。
ハイアットでは、ラウンジアクセスの権利はこのグローバリスト以上にしか与えられていません。ですが、そのハードルが高い。無茶苦茶高い。なんと年間60泊です。年間365日しかないわけですから、6日に1日はハイアットに泊まらないと達成できないという…。
このグローバリストは、スイートルームへアップグレードされる可能性が高いことでも知られています。そのために必要な年間60泊が、「ボーナスジャーニー」によって半分の30泊ですむことになりました。正直これだけでは記事にするほどではありませんでした。30泊でも筆者も含む普通の人には十分ハードルが高いと考えたからです。
グローバリスト資格獲得への泊数が半分に!
ところが、11月30日になり、もう一つビッグニュースが入ってきました。今度は、上級会員の資格獲得のための泊数を半分にしますというものです。
リンク先にはグローバリストには30泊(もしくは50,000ポイント)で達成とあります。先述の「ボーナスジャーニー」のダブルステイカウントと、この泊数半分のキャンペーンを組み合わせると、年間60泊という鬼のようなハードルが15泊という、まあ頑張ればいけるかな、というところまで下がってきました。
もう一度まとめましょう。
(1)まずはワールドオブハイアットの「ボーナスジャーニー」キャンペーンに登録(会員になっていない人はもちろん会員登録をすませてから)。
(2)公式サイトから予約の上で、2021年1月1日から2月28日(チェックアウト日)までに、世界中のいずれかのハイアットに15泊する。
(3)これにより、2023年2月末までの間、ハイアットのグローバリストの資格を獲得。という流れになります。
日本で一番安い修行向きハイアットはどこなのか?
60泊が15泊で済むのか、それはわかった。では、いったいいくらあればグローバリストになれるんだ?というのが当然の疑問だと思います。
通常であれば、世界中のハイアットから安いところを探すところですが、2021年2月までという期間の縛りがある以上、日本在住者にとって現実的なのは日本国内のハイアットとなります。
比較的安いといえるのは、ハイアットハウス金沢。1室2名で総額15,000円ほどです。これに続くのがハイアットリージェンシー那覇で16,200円。グランドハイアット福岡なら17,000円ほど。ハイアットリージェンシー大阪で18,900円ほど、横浜で20,800円ほどとなります。
連泊ならさらに安くなります。グランドハイアット福岡に7連泊(Go Toトラベルキャンペーンの適用は7泊まで)した場合、1泊あたり1室2名での総額が11,325円となりました(12月上旬時点での調査)。
しかし、みなさんお忘れではないでしょう。いまはGo Toトラベルキャンペーンが行われています。ですから、このホテル代のうち、直接割引で35%、地域共通クーポンで50%ほどが還元されるわけです。
となると、ハイアットハウス金沢は地域共通クーポンの分も差し引けば1泊7,750円ほどとなります。これが15泊でトータル116,250円。通常であれば60泊必要なうえ、Go Toトラベルの割引もありませんから、約90万円の出費が必要となります。つまり87%引きの値段で実現可能となるわけです。
無料宿泊分を換算すると、修行は「実質無料」?
それだけではありません。ハイアットにはマイルストーンリワードという宿泊数ごとに提供される特典があり、30泊の時点でホテルカテゴリー1~4の無料宿泊特典、60泊の時点でホテルカテゴリー1~7の無料宿泊特典の特典などが得られます。カテゴリー4のハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄が1泊2万円以上。カテゴリー7のパークハイアット京都は1泊最低でも10万円。この2つの無料宿泊だけでもすでに修行の「元が取れている」ことになります。もちろん海外には、有償ならさらに高額のホテルが数多くあります。
実際にはこのほかにトリプルポイントも獲得できますから、さらにトクな修行だといえるでしょう。現時点で2021年2月以降のGo Toトラベルの詳細は明らかになっていませんが、それを見越していまのうちに2月以降の予約を入れておくという手もあります。
上級会員はなるよりも維持が大変?
このキャンペーンに限った話ではありませんが、「下駄をはかせる」キャンペーンは、既存の上級会員には概して評判がよくないものです。しかし、「無理して」上級会員を獲得した人は結局資格を維持できずに、いずれグローバリストの数は元に戻るでしょう。もし、維持できた人が多ければ、プロモーションによって優良顧客を多く獲得できたわけですから、ハイアットの企業戦略が正しかったということになります。いずれにしても、今回のキャンペーンでがんばってグローバリストになったとしても、その後ハイアットに泊まらなければ「グローバリストの持ち腐れ」となります。
ただし、グローバリストのホルダーになることで、今後ステータスマッチでほかのホテルプログラムの上級会員の資格が得やすくなるとはいえます。そうしたことも視野に入れながら、戦略を練ってみてはいかがでしょうか。
もう一つ、ハイアットが口火を切ったことで、ほかのグローバルチェーンも同様のキャンペーンを打ち出す可能性があります。かりにハイアット修行をしないにしても、その波及効果はある程度期待してもよさそうです。