アルプスアルパインは、ハンドルの握り方を細かく判別することで自動運転支援システムに対応するハンズオフ検知(HoD: Hands Off Detection)用の ECU(※1) を開発した。2021年春より量産を開始しており、順次搭載車種の拡大を計画している。自動運転支援機能の向上に伴い次世代モデル向けにも開発を開始しており、人々の安全かつ快適な移動に貢献していく。
取り組み背景
自動車業界ではCASE(Connected, Autonomous, Shared &Services, Electric)の技術革新が加速している。Autonomous(自動運転)の領域では、特定条件下において車線を維持しながら前方車両に自動追従して走行できる自動運転支援システムの普及が進んでいる。昨今では、高速道路走行時や低速走行時などの条件下に限り、システムが全ての運転タスクを実行する高度な自動運転支援システムが開発され、販売が開始されている。
これらの機能を搭載した自動車では、自動運転支援と手動運転の切り替えを安全かつスムーズに行うためにドライバーの運転状態を検知・判断する必要がある。その一つとしてドライバーのステアリングホイール掌握状態を判断するハンズオフ検知機能があり、その他複数の運転状態判断システムと連携することで安全な運転主体の切り替えが可能となる。自動運転支援システムの高度化に伴う安全機能の搭載は、国際規格R79ガイドラインに定められ、法制化が進められている。
自動運転支援と手動運転の切り替えタイミングの判断においては、安全を担保するために走行状態とドライバーの運転姿勢を常に検知する必要がある。自動運転支援の継続が不適切と判断された場合、ドライバーに対し迅速に自動運転支援中止を告知、即座に手動操作に戻ることを促す必要がある。安全担保のためには、これまで以上に高精度かつ多様なステアリングの掌握検知が求められる。
取り組み内容
ステアリングホイールのタッチ検知はコスト・性能面から静電容量方式が主流である。ECUはステアリングホイールに巻きつけられた専用静電容量センサで検知した情報からドライバーのタッチ判定を行い、先進運転支援システム(ADAS)へタッチ合否を展開する。既存のハンズオフ検知システムは1極のみのモノゾーン仕様に対し、アルプスアルパインは4極のマルチゾーン仕様を開発。ステアリング、掌握パターン判定を細分化することでシステムの効率的な切り替えとタッチ判定の信頼性向上を実現した。
1) 業界初のセンサ4極対応
センサ電極を4分割して多彩な掌握状態の判定を実現した。既存のセンサ1極による単純なタッチ有無の判定と比較し、より詳細な運転状態を把握できる。
2) 独自の静電制御ASIC(※2)
耐久性と汎用性を上げ、車載の厳しい規格に適合した独自の静電制御ASICを開発した。
3) アプリケーションごとの最適なアルゴリズム提供
ステアリンング形状やセンサ材料、EMC(※3) 環境など車種ごとに条件が異なるため、静電容量センサで検出される情報に差が生まれる。これら個別事情に対して、パラメータ変更など個別最適を図ったアルゴリズムを独自開発し提供することが可能。
4) 自己故障診断機能
独自の故障判定にて信頼性を向上。自動車の電気/電子に関する機能安全についての国際規格ISO26262に適合している。
今後について
2025年度には、自動運転支援機能のさらなる高度化が見込まれており、ハンズオフ検知機能のニーズ拡大が世界的に拡大していくと想定されている。アルプスアルパインは、本製品の開発実績をベースに自動車メーカー様やステアリングメーカー様へ提案・拡販を進めていく。また、ハンズオフ検知向け以外にも、車室内外のさまざまなHMI(Human Machine Interface)システム向けに静電容量技術を応用した製品提案を推進し、自動車による安全かつ快適な移動に貢献していく。
※1:Electronic Control Unitの略。自動車のエンジンや電子制御を行う組み込みシステム。
※2:特定の用途向けに特化した集積回路。
※3:Electromagnetic Compatibilityの略。電子機器が放出するノイズを抑えるとともに、周囲からの電気的ノイズにより誤動作を起こさない性質。