デビューから6年が経ったマツダ・CX-3。今や激しい合戦場となったSUV勢力圏でも、その流麗なルックスは引けを取らない。そんなスタイリッシュな雰囲気を醸し出すCX-3の秘密に迫っていこう。
レポート=河村康彦[本文]/山本晋也[写真解説] フォト=神村 聖
改良で常に最新の技術を投入、多彩なパワーユニットを用意
昨今のブランド流儀に従って、小規模なアップデートはこれまでもたびたび行なわれてきた。しかし、基本的なパッケージングやデザインなどは、2015年2月のデビュー時から変わらず……そんな内容の持ち主が、『CX』の記号で始まるマツダSUVラインアップのなかにあって、“末っ子”のポジションに位置付けられたCX-3という一台だ。
前述のように、すでにモデルライフは6年近くという長きに及び、当初は少なかったライバルも、今や内外に百花繚乱の状況。さらに、身内からもキャラクターの近いCX-30が出現したことで販売面での苦戦も伝えられるものの、いささかも揺るぐことがないのがそのスタイリングの魅力。ロワボディの逞しい造形でSUVらしい足腰の強さを演じながらも、スタイリッシュでスピーディな雰囲気を全身でアピールするそのルックスは、デビューからの6年近くという歳月をまったく意識させないばかりか、現在でも“ベストルックSUV”という称号を与えたくなる仕上がりだ。
そんなルックスが大きな売り物であるCX-3だが、ディーゼルエンジンの搭載も特徴のひとつ。そもそもデビュー時はディーゼルエンジンのみの設定だったが、その後17年に2.0ℓの自然吸気ガソリン、20年には1.5ℓの自然吸気ガソリンエンジン搭載モデルを追加。パワーユニットの選択肢が大きく広がる結果になっている。
力強い加速を誇るディーゼル、前席着座感と静粛性も好印象
テストドライブを行なったのは、「CX-3のオリジナル」とも言うべきディーゼルエンジンを搭載したFFの6速ATモデル。ただし、デビュー当初のターボ付き1.5ℓエンジンとは異なり、現在のモデルが積むのは、同じターボ付きながら1.8ℓ。18年に実施されたリファインで、「実用燃費を向上させつつ、動力性能にもさらなる余裕を持たせる」という目的から、排気量アップを伴う世代交代が行なわれたのだ。
新エンジンを搭載したモデルの動力性能は、必要にして十二分という印象。常用域のトルクが太いことから、エンジン回転数の高まりに頼ることなく、次々と早めのシフトアップが行なわれても強い加速力が継続される感覚は、ディーゼルならでは。
実は、エンジン換装と同時にドアパネルやリヤドアガラスの板厚アップ、ヘッドライナーの変更などが行なわれたことで、静粛性全般が向上。一方、その結果“暗騒音”のレベルが下がり、相対的にエンジン音がやや目立つ結果にもなったのは、ちょっと皮肉でもある。やはり同じタイミングで手が加えられ、「CX-8と同素材のクッションを採用」と謳われるフロントシートは、確かに着座感が向上。ただし、各部に手が加えられタイヤも変更された足まわりは、未だしなやかさが不足気味。最新の骨格を使うライバル各車やCX-30に比べると、ここだけは多少の古さを実感させられてしまうポイントだ。
ボディカラー:ポリメタルグレーメタリック
オプション装備:CD/DVDプレイヤー+地上デジタルTVチューナー〈フルセグ〉
(3万3000円)/360度ビュー・モニター+フロントパーキングセンサー〈セン
ター/コーナー〉(4万4000円)
後席は、着座位置が高めなため頭上に余裕はないが、逆に視界が広がっているので後席でも眺めは良好だ。センタートンネルの張り出しが大きく中央席はエマージェンシー的といえる。
前席は、手動調整タイプのベーシックなシートだが、しなやかでドライバーの身体にぴったりフィットする。ステアリングの調整範囲も広くポジションを合わせやすいのは特筆すべき点だ。
サブトランクを含めて350ℓというスペック以上に、ホイールハウスの張り出しが少なく、とても使いやすいラゲッジという印象だ。6対4分割の後席を格納した時には少々段差が生まれるが、気になるほどではないだろう。
河村康彦はこう買う!
デビュー当初に比べるとエンジンの選択肢が広がり、1.5ℓモデルであれば190万円を切る価格から手に入れられるようになったCX-3。それでも、「プレミアム感あふれるルックスのボディには、プレミアムな心臓が相応しい」とこのように思う。すなわち、個人的にはディーゼルエンジン搭載モデルを選びたいということだ。
※本稿は2020年10月発売の「モーターファン別冊統括シリーズVol.128 2020年コンパクトカーのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。