フォーミュラのレース経験もあるモータージャーナリストの岡島裕二さんが選んだ「最強のお買い得車」は、ルノー・トゥインゴ、トヨタ・プロボックス、トヨタ・ヤリスクロス。特にプロボックス(ハイブリッド DX コンフォート)は燃費が良いハイブリッド、使い勝手の良いワゴンタイプという売れ線の要素が揃いながら、189万900円という低価格が自慢。道具として使い倒したい存在だ。
TEXT●岡島裕二(OKAJIMA Yuji)
1台目:ルノー・トゥインゴS|181万5000円
3代目となる現行型ルノー・トゥインゴはスマートと共同開発を行っていたため、今時珍しいリヤエンジンの後輪駆動車だ。主力は897㏄3気筒ターボに6速DCTを組み合わせたトゥインゴEDCだが、その下に997㏄の自然吸気に5速MTを組み合わせたトゥインゴSというグレードがある。このトゥインゴSの価格はナント181.5万円。ポルシェ911と同じRRレイアウトのMT車が約180万円で買えるのだからお買い得だ。
エンジンパワーは73ps/9.7㎏mしかないのでハッキリ言って遅いが、MTを駆使して高回転域(タコメーターがないので感が頼り)をキープして走れば、そこそこ気持ちよく走ってくれる。
リヤエンジンでフロントが軽いからステアリングの操舵感は軽快だし、アクセルの踏み加減で狙ったラインをトレースする、後輪駆動車特有の走りも走りも楽しめる。
最小回転半径も軽自動車並みの4.3mだから取り回しも抜群に良い。フットワークもスポーティな味付けではないが、車両重量が950㎏しかないから身のこなしは軽い(重量税も安い!)。
トゥインゴSはホットハッチのような刺激はないが、手頃な価格で昔ながらの後輪駆動&MT車の走りが味わえる希少なクルマだ。
2台目:トヨタ・プロボックス ハイブリッド DXコンフォート|189万900円
低価格で燃費が良く、荷室が広くて、使い勝手のいいクルマが欲しい人に注目してほしいのが、プロボックスのハイブリッド。プロボックスは小型の商用バンだが、2018年12月にアクアと共通の1.5エンジンを採用したハイブリッドを追加した。
その価格は最も安いDXなら185万円台からと、荷室の広いワゴンタイプ(バンですが...)のハイブリッドとしては激安。カローラ フィールダーやホンダのシャトルなら220万円以上はする。
ただし、バンなので内外装の質感が低いのと、後席が狭いのが弱点。また、初回の車検が2年で訪れ、2回目以降の車検も毎年になるといった難点もあるが、バンは自動車税が安いので、ユーザー車検を利用して、車検代を安くできれば、トータルの維持費は抑えられる。
プロボックスは積載性が良く、後席を倒せば約180cmのフラットな荷室が作れるのでキャンプなどでの車中泊も楽勝だ。ハイブリッドなら燃費もアクアなみに良いので、長距離を走っても燃料代が節約できる。
乗り心地は悪いが、ハイブリッドはエンジン音が静かなので意外に快適性は高い。骨のあるクルマに乗りたい、アウトドア派の人にはオススメだ。
3台目:トヨタ・ヤリスクロス X|189万6000円
急に現実的な選択になってしまったが、このクルマはお買い得だ。最初はマツダCX-3の15Sをピックアップしようかと思っていたが、ライバル車のヤリスクロスを見ていたら、X(1.5Lガソリン)の安さに惹かれた。
このグレードはヤリスクロスの下から2番目となり、あと10万円安いX Bパッケージも用意されているが、Bパッケージは安全装備が省かれているので買ってはいけない。Xになると上級グレードと同じトヨタセーフティセンスが標準装備となり、LEDヘッドランプなどもオプションで選べるようになる。
マニュアルエアコンというのが少しショボいポイントだが、この価格でありながら車線維持機能付きの全車速域追従式レーダークルーズコントロールや、電動パーキングブレーキまで標準装備されている。ほぼ同価格のCX-3の15Sだとアダプティブクルーズコントロールはおろか、スマートキーも付いていない。
内外装の質感ではCX-3のほうが勝る気がするが、荷室の広さや居住性ではヤリスクロスに軍配が上がる。なによりヤリスクロスは発売されたばかりだから新鮮味もある。走りの面では3気筒特有のパラパラとしたエンジン音が気になるが、動力性能に不足はなく、街中から山道までバランスよく走ってくれる。
ヤリスクロスのX1.5Lは「クルマは買い替えたいけど、欲しいクルマが見つからない」という人にイチオシの、誰が買っても失敗しない、お買い得なSUVだ。
『プロが選ぶ最強のお買い得車』は毎日更新です!
予算に限りがある庶民にとって、車選びの際にこだわりたい要素が「コストパフォーマンス」。つまり、その車がお買い得かどうか、ということ。ただ安ければいいというわけではありません。ポイントは「値段と性能が釣り合っているか」。だから、価格が安い軽自動車だからコスパがいいとは限りませんし、1000万円以上のスーパーカーだってその価格に見合う機能や魅力があればお買い得と言えます。
というわけで、自動車評論家・業界関係者といった「クルマのプロ」たちに、コストパフォーマンスが高い「お買い得」な新車を3台ずつ、毎日選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに。