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アウディRS4アバント | 見る者を圧倒する派手なルックスはダテではない。が、日常ユースの相棒として付き合えるだけの快適性も併せ持つ


アウディのハイパフォーマンスシリーズであるRS。その「4」シリーズがRS4アバントだ。快足スポーツワゴンというだけでは語り尽くせないポテンシャルの高さは、そのルックスからも伝わってくる。


TEXT &PHOTO◎世良耕太

RS4は本国でもアバント(ワゴンボディ)のみ。セダンのRS4は存在しない。生産はドイツ・インゴルシュタット工場

性能の高さがこんなにはっきりと形に現れたクルマもめずらしい。アウディRS 4アバントは、どの角度で見ても、高い性能を備えていることがはっきりわかる。速そうだし、強そうだ。前後のフェンダーはファットなタイヤ&ホイールを収めるべく、外側に大きく張り出している。しかし寸法を確認してみると、拡幅分は20mmにすぎない。A4アバントの全幅が1845mmなのに対し、RS 4アバントは1865mmだ。真後ろから見たときは数値の差以上の迫力を感じる。275幅のタイヤが与えるインパクトは大きい。

全長×全幅×全高:4780mm×1865mm×1435mm ホイールベース:2825mm

トレッド:F1605mm R1595mm 最低地上高:105mm
車重:1820kg 前軸軸重1020kg 後軸軸重800kg

サイドビューも迫力満点だ。タイヤサイズは前後とも275/30R20で、幅広く、大径で、サイドウォールが薄いタイヤがホイールハウスに半ば隠れるようにして収まっている。タイヤチェーンの脱着? なにそれ? という感じだ。ここだけ部分的に切り取ってみれば、レーシングカーと似たような景色である。

タイヤサイズは275/30R20。銘柄はコンチネンタル・スポーツコンタクト6
セラミックブレーキ(フロント)・カラードブレーキキャリパーは96万円のオプション

インテリアもレーシーなムードで満たされている。「フラットボトム」と呼ぶ、底辺をカットしたDシェイプのステアリングホイールがアルカンターラ地なのはオプションで、通常はレザーだ。上から鷲づかみにするタイプのシフトレバーもアルカンターラ張りだ。試乗車はデコラティブパネルカーボンのオプションも装着しており、インパネやセンターコンソール、ドアトリムがカーボンパネルで埋め尽くされている。シートはダイヤモンドステッチの入ったナッパレザーで、フロントシートの背にはRSのロゴが入る。ラグジュアリーな品格と機能を保ったまま、レーシーなムードを効果的に付加した印象だ。

RSデザインパッケージ・フラットボトムステアリングアルカンターラは20万円のオプション。バング&オルフセン 3Dアドバンストサウンドシステム搭載

シートはファインナッパレザーでダイヤモンドステッチが施されている。
上質なインテリアとスポーティなシートもRSならでは。

ボンネットフードの下に収まるのは、2.9LV6直噴ツインターボエンジンだ。V6だがバンク角は120度でも60度でもなく、V8と共通の90度である。その広いバンク角を生かし、2基のターボチャージャーをVバンクの間に搭載する。いわゆる「ホットV」だ。前輪の切れ角を確保するためのレイアウトでもあるし、排気の経路を短くしてタービンの効率と応答性を高めるためでもある。2基のターボチャージャーで加圧された空気は、水冷インタークーラーで冷却される。

Vバンク90度のEA839型V6ツインターボ。バンク内の大きなスペースにターボを2基収める。

オーナーになったあかつきには、化粧カバーを外し、Vバンクに鎮座する2基のターボチャージャー(よく見えるのはコンプレッサー)をじっくり愛でてほしい。鑑賞に値する眺めだし、こういう眺めが好きな人がRS 4アバントのようなハイパフォーマンスカーを所望するのだろう。

エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ エンジン型式:DEC型(EA839型) 排気量:2893cc ボア×ストローク:84.5mm×86.0mm 圧縮比:10.0 最高出力:450ps(331kW)/5700-6700rpm 最大トルク:600Nm/1900-5000rpm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:DI 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:58ℓ

2基並んだターボチャージャーが見える。

このエンジンはアウディの得意芸であるカム駒切り替え機構を搭載している。いわゆる可変バルブリフトシステムで、電磁式のソレノイドピンをらせん状の溝に押し出すことでカム部をスライドさせ、小リフト小開角のカムと大リフト大開角のカムに切り換える仕組みだ。燃費と出力を両立する狙いである。最高出力は450ps(331kW)/5700-6700rpm、最大トルクは600Nm/1900-5000rpmだ。先代RS 4は7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を搭載していたが、現行RS 4はZF製の8速AT(名機8HPシリーズである)を組み合わせる。

トランスミッションは、ZF製8AT(8HP)を採用する。ギヤ比は1速:5.000 2速:3.200 3速:2.143 4速:1.720 5速:1.313 6速:1.000 7速:0.823 8速:0.640 後退:3.478 最終減速比:前軸3.197 後軸3.204

そして、クワトロ(quattro)だ。四輪駆動である。縦置きパワートレーンのRS 4はセルフロッキングディファレンシャルと呼ぶ、遊星歯車機構を用いたセンターデフを搭載(トランスミッションケースの後端に位置)。前2輪、もしくは後ろ2輪がスリップしたら4WDになるのではなく、常時(フルタイム)4WDだ。車両の走行状況や路面コンディションの変化に応じて、前後のトルク配分は変化する。

DRC(ダイナミックライドコントロール)付スポーツサスペンションプラスは、対角線上に位置するダンパーを油圧パイプと各中央バルブを介して連結し、ピッチングとローリングの動きをコントロールする。

半ばフェンダーに隠れた薄いタイヤを見て、「ひょっとして乗心地はガチガチ?」と覚悟したが、たとえ満腹の状態でRS 4アバントに乗り込んだとしても、「勘弁して」と白旗を揚げたくなるような、過酷な乗心地ではない。さすがにA8のようなフラットライド感とは比ぶるべくもないが、覚悟も我慢も必要なく、付き合うことができる。RS 4アバントは、対角線上のダンパーの油室を連結したDRC(ダイナミックライドコントロール)付きスポーツサスペンションを搭載する。過度なロールを抑制しつつ、ワープ(例えば、フロントが左にロールするいっぽう、リヤは右にロールするような複合的な動き)は許容するのが、対角線連結ダンパーの一般的な狙いだ。RS 4アバントの剛性感としなやかさが同居した絶妙な乗り味は、DRCのなせるわざだろうか。

サスペンションはフロントリヤともにウィッシュボーン式。こちらはフロント
リヤサスペンション

エアコン操作パネルの下にはアウディドライブセレクトのスイッチがあり、エンジン特性や電動パワーステアリングのアシスト量、トランスミッションの特性、エグゾーストフラップの調整などを切り換えることができる。モードは「オート」「コンフォート」「ダイナミック」「インディビジュアル」の4種類だ。

「ダイナミック」は高速コーナーが連続する箱根の山道ですら、過激な排気サウンドとガチガチに硬い脚が間尺に合わない(満腹時は避けたほうがヨロシイ)。「オート」で充分である。ダイナミックはサーキットでRS 4アバントのポテンシャルを存分に引き出す際の専用モードと捉えるのがいいだろう。箱根の山道など、このクルマにとっては朝飯前であることが、ちょっと振り回してみるとよく分かる。

0-100km/h加速は4.1秒。最高速は280km/hという高性能スポーツワゴン。

上限は試していないが、見る者を圧倒する派手なルックスはダテではない。といって下限をおろそかにしているかというとそんなことはなく、日常ユースの相棒として付き合えるだけの快適性を担保している。よく考えたら後席のスペースも充分だし、広い荷室も備えている。アウディRS 4アバントは高い実用性を備えながら、日常走行からサーキットまでカバーする、ダイナミックレンジの広いクルマということだ。

トランク容量は、VDA値で通常が495ℓ。後席を倒せば1495ℓの容量を確保する。

クワトロシステムは、ノーマルのA4シリーズがカップリング式オンデマンド4WDなのに対して、アウディ得意のセンターデフ式を採る。

アウディRS4 Avant


全長×全幅×全高:4780mm×1865mm×1435mm


ホイールベース:2825mm


車重:1820kg


サスペンション:F&Rウィッシュボーン式


エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ


エンジン型式:DEC型(EA839型)


排気量:2893cc


ボア×ストローク:84.5mm×86.0mm


圧縮比:10.0


最高出力:450ps(331kW)/5700-6700rpm


最大トルク:600Nm/1900-5000rpm


過給機:ターボチャージャー


燃料供給:DI


使用燃料:プレミアム


燃料タンク容量:58ℓ


トランスミッション:8速AT〔ティプトロニック)


駆動方式:AWD


WLTCモード燃費:9.9km/ℓ


 市街地モード7.1km/ℓ


 郊外モード9.9km/ℓ


 高速道路モード11.8km/ℓ




車両価格○1250万円


試乗車はオプション込みで1519万円

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