人気テレビ番組『クルマでいこう!』のキャスターとしても活躍中の岡崎五朗さんさんが選んだ「運転が楽しいクルマ」の第1位は、フェラーリ488ピスタ。イタリアまで赴き、フェラーリのテストコースでフルアタックした際の思い出は、人生のハイライトだったとまで言い切る。
TEXT●岡崎五朗(OKAZAKI Goro)
運転が楽しいクルマベスト3。シンプルなようで実はなかなか難しいお題だ。というのも運転の楽しさは走る環境とセット。街中で楽しいクルマとサーキットで楽しいクルマはぜんぜん違う。考えた末に今回ピックアップしたのが以下の3台だ。
第3位:ジープ・ラングラー(JL型)「こんなところは走れないという常識を打ち砕いて見せた」
いまやSUVブランドとして様々なモデルを生産しているジープ。そのなかでオリジナルモデルの精神をもっとも濃密に残しているのがラングラーだ。
JL型と呼ばれる現行モデルはオンロードでのハンドリングや乗り心地をかなり高めてきたものの、オフローダーとしての性能には一切の妥協がない。2018年に登場したてのラングラーでルビコン・トレイル(ネバダ州からシエラネバダ山脈を越えカリフォルニア州のレイクタホに達するオフロードコース)を走ったのだが、悪路走破性とタフネスぶりは驚異的だった。
副変速機付きならではの粘り強い駆動力と岩場でも路面を捉えて離さない4輪リジッドサスペンションの組み合わせは、クルマでこんなところ走るなんて無理でしょ、という僕の常識を粉々に打ち砕いて見せた。まちがいなく一生の想い出となるアドベンチャー体験だった。
第2位:KTMクロスボウGT「こんなクルマに公道で乗れるのは奇跡だ」
世の中には様々なスポーツカーが存在するが、X-BOW(クロスボウ)ほどレーシングカーに近い存在はない。
ダラーラ社製カーボンモノコックのミッドにアウディ製2Lターボ(285psps)を搭載し、サスペンションは前後ダブルウィッシュボーン。プッシュロッド式のフロントサスはバネ/ダンパー部が剥き出しで、走っているとサスペンションの動きがはっきりと見える。
ワインディングロードでも文句なしに楽しいが、KTMの地元であるオーストリアのレッドブルリンクでの走行体験は最高だった。とにかくすべてがダイレクト、かつ800㎏台という圧倒的な軽さと強力なダウンフォースが生みだす走りはまさにレーシングカーそのもの。2輪車メーカーとして有名なKTMのキャッチフレーズは「Readyto Race」だが、それを地でいく4輪車がX-BOWだ。
こんなクルマにナンバーが付いて公道で走れること自体、奇跡的である。
第1位:フェラーリ488ピスタ「僕のクルマ人生のハイライト」
純粋にエンジンの魅力だけで評価すれば458が好みだ。クォォォォーンという甲高いサウンドを奏でる4.5L自然吸気V8は内燃機関の最高傑作だと思う。けれど、ドライビング体験という意味でそれを凌ぐのが488PISTA(ピスタ)で体験したフィオラノサーキットだ。
フェラーリの本社工場に隣接する全長約3kmのこのコースは市販車の他、F1のテストも行われるフェラーリの聖地。コース脇にはエンツォ・フェラーリの執務室だった建物が残されている。そんな場所で最高出力をノーマルの670psから720psまで高めた488ピスタに試乗、しかもフルアタックを許されたのだから興奮しないわけがない。
弾けるような加速、タイヤが路面を掴む感触、じりじりとリアが流れる感覚、強烈なストッピングパワー...3年前のことだが、いまでもすべてが生々しく記憶に残っている。誇張抜きに、僕のクルマ人生におけるハイライトだ。
今回は3台のクルマを最高に贅沢な体験とセットで紹介した。もちろん、すべてに人が同じ体験を出来るわけではないけれど、だからこそメディアを通してその楽しさを多くの方と共有することが僕らモータージャーナリストに与えられた役目だと思うのです。
『運転が楽しいクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
クルマ好きにとって、クルマ選びの際に大きな基準となるのは、
「運転が楽しいかどうか」ではないでしょうか。
とはいえ、何をもって運転が楽しいと思うかは、人それぞれ。「とにかく速い」「速くないけど、エンジンが気持ち良い」「足周りが絶品」などなど、運転を楽しく感じさせる要素は様々です。
本企画では、自動車評論家・業界関係者の方々に、これまで試乗したクルマの中から「運転が楽しかった!」と思うクルマのベスト3を挙げてもらいます。
どんなクルマが楽しかったか。なぜ楽しいと感じたのか。それぞれの見解をご堪能ください。
明日の更新もお楽しみに!