メカニズムにも精通する世良耕太さんは今回、EV(電気自動車)の中から「運転が楽しいクルマ」を選出。その第1位は、マツダMX-30のEVモデルとなった。先にデビューしたマイルドハイブリッドモデルも走りの評価が高かったが、EVモデルはそれ以上。EVだからこそ実現できる走りがそこにあった。
TEXT●世良耕太(SERA Kota)
第3位:ホンダ e「EVだけど、EVっぽくない」
前に別のテーマで取り上げたクルマを選びそうになったので、電気自動車(EV)縛りを設けてみた。エンジン車(とくにガソリン)には、エンジン車でしか味わえない楽しさがあるが、加速側および減速側のトルクを緻密に制御することによって車両挙動を作り込むコントロール性の高さはモーターのほうが一枚上手で、ゆえに運転が楽しい。
ホンダ eはEVだが、EVっぽくない。それを象徴するのがタイヤで、低転がり抵抗を重視したタイヤではなく、スポーツタイヤを履いている。「それで少しくらい航続距離が落ちたとしても、走りが楽しいほうがいいでしょ」と。タイヤのおかげだけではないが、ホンダ eの運転は楽しい。モーターやインバーターが発する電気系の音はほとんど聞こえず、感覚的には無音で加速し、キビキビ動く。横一面にディスプレイを配した、先進的だけれども居心地のいいインテリアも、運転を楽しくする要素だ。
第2位:ポルシェ・タイカン「ワープしたかのような加速感と磁石のような安定感」
93.4kWhものバッテリーを積んでいるし、前後どちらか一方ではなく両方にモーターを積んでいることもあって、車両重量は2305kgに達する。しかし重さは一切感じないし、21インチのタイヤ(リヤは305/30R21だ)を履いていることも感じさせない。やさしく動き、だけどもボディがしっかりしていることを感じさせる乗り味だ。
タイカンは、おだやかに走りたいときはあくまでもおだやかに振る舞う。上質なサルーンといった印象。だが、速く走ろうと思って気分と機能を切り替えると、超ド級のスポーツカーに早変わりする。圧倒的なダイナミックレンジの広さがこのクルマの真骨頂だ。
白眉はSport Plusのモードに切り換え、460kWの出力(911 GT3ですら375kWだ)をフルに引き出したときの加速フィールである。2305kgの車重などなんのその。人工的に増幅したモーター音とシンクロして「ワープした?」と錯覚するほど強烈な感覚を味わえる。そのとき、どこに飛んで行くかわからない打ち上げ花火のような動きでは困るが、タイカンは磁石で路面に対付いているかのように安定しているのが感動ものだ。
第1位:マツダMX-30 EV MODEL「運転の楽しさに関してはエンジンの存在を危うくする」
マツダは車両の動きに合わせてトルクを制御することで、低速から高速まで、直進時からコーナリングまで、走行中のあらゆるシーンで滑らかな走行を実現する車両運動制御技術、Gベクタリングコントロール(GVC)の開発に力を入れている。
MX-30のEV MODELは高応答なモーターのトルク特性を生かし、より幅広い領域で最適な前後荷重移動を実現するe-GVC Plusを採用した。GVCの進化版で、内燃機関では対応できる幅が狭いマイナストルク側も緻密に制御しているのが特徴だ。
2Lガソリンエンジンとマイルドハイブリッドを組み合わせたe-SKYACTIV G搭載モデルに比べて「ステアリング軽い?」と感じたのだが、開発技術者とやりとりするうえで、どうやらe-GVC Plusによって回頭性が高まっているため、軽く感じたのではないかという結論に。芯はぶれずヒラヒラと舞うような動きに心酔。運転の楽しさに関して、内燃機関車の存在を危うくする実力の持ち主だと感じた。
『運転が楽しいクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
クルマ好きにとって、クルマ選びの際に大きな基準となるのは、
「運転が楽しいかどうか」ではないでしょうか。
とはいえ、何をもって運転が楽しいと思うかは、人それぞれ。「とにかく速い」「速くないけど、エンジンが気持ち良い」「足周りが絶品」などなど、運転を楽しく感じさせる要素は様々です。
本企画では、自動車評論家・業界関係者の方々に、これまで試乗したクルマの中から「運転が楽しかった!」と思うクルマのベスト3を挙げてもらいます。
どんなクルマが楽しかったか。なぜ楽しいと感じたのか。それぞれの見解をご堪能ください。
明日の更新もお楽しみに!