国産のキャンピングカーは、ガラパゴスな市場を形成しているが、その極みとも言えるのが軽キャンパーだ。軽自動車というクルマの最小カテゴリーにおいて快適性を追求するのは、この国のお家芸であることはほかならない。ここでは、ホンダN-VANをベースとしたキャンピングカーをご紹介しよう。
TEXT●山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka)
ホンダN-VANがベースの軽キャンパー。気軽に日本版バンライフを楽しもう
軽キャンパーの魅力は、何と言ってもその手軽さだ。キャブコンだと保管場所や旅先での宿泊地に頭を悩ませる時もあるが、軽自動車であればそれらの問題から一気に解消される。8ナンバー登録しなくても税金は安いし、燃料費なども抑えることができる。
東日本大震災以来、軽キャンパーは常に人気のカテゴリーで、市場には様々なモデルが投入されている。その中で昨今人気なのが、やはりホンダN-VANベースの軽キャンだ。そもそもノーマルで車中泊を意識した作りとなっており、車中泊派に当初から注目されている車種だった。しかし、それをさらに快適にするのがビルダーの腕。N-VANベースのキャンパーの中で、特に注目したのが、ダイレクトカーズの「リトリートミニ」だ。
ダイレクトカーズは、ハイエースをベースとしたバンコン製作を得意とするビルダー。そのキャンピングカー造りの特徴は、モデルのライフスタイルを明確にして装備をインストールしているという点だ。レース観戦、愛犬家、フィッシング...。使用目的がはっきりとしているからこそ、ユーザーも選びやすいのである。
さて、ダイレクトカーズは「リトリート」というハイエースベースのバンコンをリリースしているが、リトリートミニはその弟分。“隠れ家”という意味のモデル名は、まさにピッタリだ。数年前から日本でも広まっている、欧米初のライフスタイル「バンライフ」をテーマに製作されている。
バンライフとは、家を持たず、クルマに必要なものだけを積んで生活するスタイルが本来的な意味だ。ラルフローレンのデザイナーだったフォスター・ハンティントン氏が始めた生き方だが、同氏が愛車のフォルクスワーゲン・ヴァナゴンキャンパーの車内にウッディーな家具がインストールされていたことから、日本ではそういうキャンパーの雰囲気=バンライフということになっている。
リトリートミニもそのプロトコルでコーディネイトされており、車内には無垢のリアルウッドがふんだんに使用されている。バンライフ調のキャンパーは多く存在するが、ダイレクトカーズのウッドパネルは柔らかみのある質感という点ではピカイチだ。思わず触りたくなるような表面は、車内にいる人に安らぎを与えてくれる。経年劣化によって出る“侘び寂び”も、非常に楽しみなインテリアとなっている。
装備はシンプル。幅1150×長2130(運転席側1450)mmのフラットベッドに、車外で使うリアルウッドテーブル。頭上にはちょっとしたモノを置ける収納、リアはベッドマットを固定する台になっている家具が配置される。天井にはデイジーチェーンが付けられており、ランタンなどを吊り下げられるように考慮されている。ギャレーなどは一切インストールされておらず、購入後はオーナー自らのアイデアによって愛車を進化させることができるのが、このモデルの良さでもある。
ベッドは基本、常設するタイプだが、運転席直後のマットを外して荷室にすることや、最後部のマットを外して荷室にすることも可能だ。何かを積載して出かけたい場合でも、フレキシブルに対応してくれる。就寝スペースは1名+α。自分と荷物、愛犬を連れて...などといった使い方がいいかもしれない。
エクステリアには、ウッド調のデカールとスチールホイール調のクラシカルなアルミホイールが奢られており、カスタムカーベースとしても楽しむことができる。人とは違うN VANを創り上げたいというドレスアップ派にもマッチした1台だ。
“オートキャンプに行くぞ”などと肩肘張らず、気が向いた時にフラッと出かけて、旅やアウトドアスポーツを楽しむ時間を作る。リトリートミニは、そんな日本版バンライフを楽しむ軽キャンパーなのである。
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