MotoGPにおいて多くの人気を集めるバレンティーノ・ロッシにとって、2020年シーズンは一つの節目のシーズンとなった。ヤマハのファクトリーチームからの参戦に終止符を打ち、2021年はサテライトチームへと移籍することとなったのだ。
TEXT●伊藤英里(ITO Eri)
PHOTO●MotoGP.com、Yamaha Motor Racing Srl
MotoGPについて詳しく知らずとも、バレンティーノ・ロッシの名はなんとなく知っている。そんな人も多いだろう。ロッシはこれまで絶大な人気を集め、現在もその人気は続いている。1996年にロードレース世界選手権にデビューしてから2020年シーズンまで、実に25シーズンもの間、世界を舞台に戦ってきたのである。そしてその間に、125ccクラス(現在のMoto3クラスにあたる)で1度、250ccクラス(現在のMoto2クラスにあたる)で1度、そして最高峰クラスでは7度(500ccクラスで1度、MotoGPクラスで6度)、通算9度、チャンピオンを獲得している。2020年シーズンはチャンピオンシップのランキングでは自己ワーストの15位だったが、第3戦アンダルシアGPでは3位に入って表彰台に立っている。
2000年から参戦してきた最高峰クラスのキャリアの中で、ロッシにはいくつかのターニング・ポイントがあったはずだ。2004年、ホンダからヤマハへ移籍。2010年は、母国グランプリの第4戦イタリアGPフリー走行で転倒して右足を骨折し、4戦の欠場を余儀なくされた。このとき、ロッシは連続参戦の最多記録を伸ばしていたが、その記録は230で途切れた。ロッシにとって、これが初の欠場だったのである。
このシーズンでは、関係性に緊張感を増していたチームメイトのホルヘ・ロレンソがチャンピオンを獲得。ロッシは2011年にドゥカティへと移籍する。しかし、ドゥカティでは表彰台を3度、獲得するのみに終わった。そして2013年、ヤマハに舞い戻った──。こうしたポイントは、いくつもある。
そしてこの2020年シーズンも、ロッシにとって一つの節目と言えるのかもしれない。というのは、2020年をもってヤマハのファクトリーチームを離れ、2021年シーズンはヤマハのサテライトチームに移籍となるからだ。MotoGP開幕前の1月下旬、ヤマハは早くも2021年シーズン以降のチーム体制を発表した。2021年シーズンはマーベリック・ビニャーレス、そしてファビオ・クアルタラロがファクトリーチームライダーとなり、ロッシはファクトリーチームを離脱することになったのである。
この発表当初は、ロッシの去就についてシーズン半ばに決断が下されるとされていた。そして、もしロッシが現役続行を決めた場合、ヤマハはファクトリーマシンであるYZR-M1と、技術サポートを行うこともあわせて明言された。果たして、ロッシのレースへの情熱は依然として変わらなかった。9月下旬には、ヤマハのサテライトチームであるPetronas Yamaha SRTから2021年シーズンを戦うことが発表されたのだった。
Petronas Yamaha SRTは2019年からMotoGPクラスに参戦を開始したサテライトチームであるが、そのチーム力は高く、クアルタラロとフランコ・モルビデリを擁した2019年シーズン、チームとして参戦初年度でありながらインディペンデントチーム(サテライトチーム)タイトルを獲得。2020年シーズンも連覇している。2021年には42歳となるロッシ。冷めやらぬレースへの情熱とともに、新しい環境の中でどのような戦いを見せるだろうか。