冬は寒ささえ防げばアウトドア向きの季節。なにもせず、お気に入りのテントで「冬籠り」。必要なのは、点ととキャンピングベッド、そして薪ストーブだ。
TEXT&PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)
「冬籠り」は楽しい。いや、春も夏も秋も「籠る」は楽しい。何もせず、ただ息をして食事をし、眠くなったら寝る。そんな時を過ごせたらまさに至福。経済成長期、誰もが前へ前へと進もうとした時代には、当然理解されず「世捨て人」とか「怠け者」の扱いであったのだけれど。
冬は寒さを防げばアウトドア向きの季節である。照明に誘われて寄って来る虫や、蚊やアブのようなやっかいな昆虫もいない。冬のキャンプに訪れる人は多いけれど、絶対数はやはり夏に比べれば少ない。また、マナーを守る人が多いので、花火の音や大騒ぎの話し声で煩わされることも少ない。
キャンプの楽しみのひとつには、自分の所有するアイテムを組み上げていくことが挙げられる。難しい組み立てを克服して、そのアイテムの機能を使いこなすのは楽しい。ところがこれに懲りすぎると、設営や撤収に時間を使うことになり、「籠って何もしない」」からどんどん離れていってしまう。手を抜ける所は抜いて「まぁこれくらい良いか」くらいが僕にはちょうど良い。
「冬籠り」用に気になっていたテントは手に入れてある。テンマクデザインのサーカスTC DXダックグリーンである。もちろん形や流行に流されての購入ではあるが、欲しくて我慢が出来なくなってしまった理由はこの色である。「冬籠り」をするならば、朝は寝坊がしたい。厚めの生地で深い色。陽が当たりテント内が明るくなり過ぎ、目覚めるのは避けたかったからだ。目覚まし時計にも、他人の声で起されるもの嫌だけれど、太陽に起されるのも嫌なので、この色が発売された時に即購入となった。
「冬籠り」がアウトドアで注目されるようになったのは、テント内に入れ込むのに程よい大きさの薪ストーブが発売されたこと、燃えにくい素材のポリコットン製のテントが注目を集めたこと、そしてキャンピングベッド(コット)が多くのキャンプ用品メーカーから発売されたことであろう。例えば廉価なもので選べば、この3点で5万円ちょっとで揃えられる。昔なら山岳テントひとつでこれくらいの金額を超えてしまう。
暖房は対流型、アラジンのシリーズ15(多分後期型)を持ち込んだ。この輸入元はクルマ好きにはたまらない「ヤナセ」で、すでに半世紀は前のものだ。メルセデスのチューニングで有名な「ミストラル」にあったものを「ちょっと貸してぇ〜」と、もう長期に渡り貸り続けている。
僕のコットと呼ばれるキャンプ用のベッドは、10年以上前のものだろうか。鉄製のパイプフレームでかなり重量がある。ベッドの足を差し込むブラケットは何度も壊れ、その都度溶接しながら使っている。ファブリックの部分も痛んできているので、グリーンの布を掛けて奇麗に見えるようにごまかしてはある。
アウトドアでのベッドを使う利点は、地面がデコボコでも寝づらくない。また地面からの温度の影響も受けにくい。テント内への水の侵入も問題はない。夏には風が下を通り抜けるので、涼しく過ごせるのも魅力である。
このくらいのアイテムを揃えれば、冬のキャンプはそこそこ楽しめるが、冬用のシュラフ、ベッドの上に敷くマットは必要だ。え、「トイレ?」まぁ、確かに簡易トイレを持ち込めば、テントから一歩も出ずに済むが、トイレぐらいは外に行こうぜ。片付けも嫌だし、それを積み込むラゲッジのスペースはスズキ・ジムニーにはないということで。
食事はレトルト食品や缶詰を利用すれば良いのだが、それでは少し味気ない。僕は3日間くらいなら、ずっとカレーを食べていても平気な人間ではあるが、そこは少しアレンジをしてみようと思う。ベースとなる煮込んだものを大量に作り、アラジンの上に置いておく。そこから小量をメスティンや小さな鍋に入れて味付けをする。これで肉じゃが、カレー、クリームシチュー、そしてビーフシチューも楽しめる。他に何か美味しいルーがあれば、それもあるとよいのだけれど。フランスパンでも用意すれば、炊飯の手間も要らないが、それくらいはやってみても良いかなぁとは思っている。