自動車専門誌から一般誌まで幅広く活躍する塚田勝弘さんが選んだ「2020年の推しカー」は、シトロエン・ベルランゴ、トヨタRAV4 PHV、プジョー208。208は俊敏なフットワークと高速スタビリティを兼ね備えており、Bセグメントの枠を超えた走りに驚かされたという。
TEXT●塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)
「自宅のガレージに入れば」「MTがあれば」という2つの前提がクリアできれば個人的に欲しい!!と思ったのがシトロエン・ベルランゴ。つまり、買わないのだが...。
乗り心地はつい先日カタログモデルが発表されたばかりのプジョー・リフターの方が若干いいけれど、スタイルはこちらの方が好み。カングーと同様にフランス本国ではあくまでLCV(小型商用車)であると考えれば、若干粗めな面もある乗り味にも納得できる。
1.5Lディーゼルエンジンは、130ps/300Nmというスペック以上に力感があり、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープコントロールなどのドライバーサポート機能も万全でロングドライブも苦にしない。300km試乗してもシートがいいのか持病の腰痛は忘れていたほど。
モーター走行時は結構パワフルで、エンジンがかからなければとても静か。スムーズな走りや熟成がより進んでいるという面では、三菱アウトランダーPHEV(乗る度によくできていると感心させられる)には及ばない印象だが、隙はない。
ほぼ満充電状態で東京の九段下から杉並区に移動し、さらに平塚市まで高速メインで、流れをリードして走っても充電したバッテリーは尽きなかった。EV走行の航続距離はカタログ値95kmで、実走行では70-80%だとしても日常の買い物や送迎などは十分にまかなえそう。PHVだから電欠の心配も要らない。急速充電はできないが、最大1500W/AC100Vに対応しているからアウトドアや災害時でもいざという時に給電できる。
469万円〜という価格も話題になったが、エコカー減税や環境性能割、CEV補助金なども約40万円の優遇額がある。オーダー一時停止も頷ける仕上がり。
個人的に好みなのは、古いプラットフォームの「PF1」を使っているシトロエンC3のゆったり感もある乗り味ではあるが、「CMP」を使うDS3クロスバックの完成度の高さからすれば同じ「CMP」の新型プジョー208もいいはず、と思ったら想像以上に良かった。
プジョーらしいフットワークの高さに加えて、高速域のスタビリティも万全で、走りの質感はBセグメントを超えてCセグに近いかもしれない。ライバルの新型ルノー・ルーテシアもプジョー208に引けを取らないクオリティを備えているけれど、208ほどの俊敏性は感じられなかった。
なお、新型208以降の新しい「i-Cockpit」は、ステアリングのチルトが上側にまで可動する反面、上に上げるとメーターと完全に干渉するのはご愛敬か...。それでも走りの質感は、現在のBセグメントナンバーワンだと思う。
『2020年の推しカー』は毎日更新です!
いよいよ2020年もラストスパート! ということで、今年(2019年12月〜2020年11月)に発表・発売されたクルマ(マイナーチェンジ・一部改良・追加モデルなどすべて含みます)の中から、「他人はどうか分からないが、個人的に大好きだ!」という"推しカー”を3台、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに!