デザインテーマの一つには「四角いクルマ」というキーワードがあったミツオカ・バディ。実はこのテーマありきで、その四角いボディを検討していった結果、RAV4がうまくいけそうだという話になったという。つまりバディの企画は、もともとRAV4をベースに考えたのではなかった、というのである。それはどういったことなのか、実際に見にいって、その理由を考えてみた。
勝手にベースにできそうな車を考えてみると…
四角さを表現できる車を大変恐縮ながら勝手に考えてみると、純粋に造形的な観点だけで見てみる。直線的な造形をベースとしているものは、トヨタRAV4の他に、マツダCX-5、日産エクストレイル、スバル・フォレスターなどがあげられると思う。
バディはフロント周りでは、フェンダー、バンパー、ボンネットを変更。リヤ周りではリヤバンパー、バックドアパネルを変更。これによって大きくイメージ変更を行なっている。
となると、特にドア面の流れをフロントフェンダー、ボンネットで受けつつ四角い形に繋いでいかなければならない。
CX-5は後方から持ち上がってくる面によって、ボンネットを高く盛り上げるのには、非常に良いかもしれない。かなり優雅に持っていけるが、全体の柔らかな面に対して四角さを通していくにはちょっとデザイン開発も精神力や、強いメンタルが要りそうだ。
エクストレイルは、ショルダーも含めて非常に有機的で、ちょっと四角い造形を全体に作るのは難しいかな? とも思われるところ。また、リヤバンパーの分割線が低いのでリヤ周りの大改修は結構やりにくいのかな? とも思われる。
フォレスターはショルダーの2つの流れを受け、さらにフェンダーの造形を活かすこともできそうだ。しかしウインドウラインも含めかなり強いウエッジシェイプを全体的に形作っているので、その整合性はちょっとうまく行きにくいかもしれない。
そうやって考えてみると、RAV4の水平感は確かにいい感じかもしれない。ウインドウラインと黒いオーバーフェンダーの造形は、狙いの四角いボデイをイメージさせるには、極めて良い素材となったのかも、と思う。大きなリヤバンパーと直線的につなががるランプの構成も、有利だったようだ。
しかしRAV4で問題なのは、リヤドアからリヤフェンダーに繋がるブリスターのように盛り上がった力感ある造形と、ドア下部分で鋭く前傾する力強い造形だ。これは四角さを全体的にイメージさせる上で、ちょっと課題となるはず。
リヤフェンダーの力感をフロントフェンダーで受ける!
RAV4は直線的と言いながらも、全体的に前傾するボディ造形に、リヤフェンダーの力強い造形を合わせることで、パワフルさを表現。それでいて水平なサイドウインドウと、フロントフェンダーを整合させることで、全体として落ちつきのある安定感をも表現している。
リヤフェンダーへの強いアクションの中で全体のバランスを取るのは、フロントフェンダーの造形。一つオリジナルの水平を保つオーバーフェンダーを活かしているところと、四角いフェンダーながらややグリルを内側に寄せて、その分グリルからホイールアーチに向けてフェンダーを膨らませている。その際により強い面を出すためにL字のキャラクターラインを入れて、グリルへ向かうシャープさと、フェンダーへの膨らみを面として切り替えている。また、このラインがノスタルジックでもある点がいい。
この造形が、リヤドアから広がっていくフェンダーのふくよかさとバランスをとっているのだと思う。この辺り、すごく悩んで作られたのではないかな、と実感する部分だ。リヤバンパーの分割線はどうしても消せない部分だが、リヤコンビランプの自由度が高まったことで、思い通りの縦型ランプが採用できたようにも思う。バックドアパネルのクラシカルさも、全体を引き締めている。
ボンネットはアウターがスチールで、インナーがFRP。持ってみるとかなり重いが、四角い強いボデイを演出する要となっている。
また、今回は部品精度と生産性の向上を図る目的で、金型を使った成形法を多く採用。フロントフェンダー、リヤフェンダー後半部分ともにインジェクション整形によりPPを採用。バンパーはABSにクロムメッキを施す。こうして構成されたのが、ミツオカ・バディだ。
マツダ・ロードスターをベースとしたロックスターとは異なり、限定生産ではなく永続的なカタログモデルとなるというだけに、様々なパーツの生産性が存分に考慮された高品質なモデルでもあるという。