NTNは、自動車のトランスミッションやデファレンシャル向けに開発した「自動車用ULTAGE(アルテージ)円すいころ軸受」の量産納入を開始した。
トランスミッションやデファレンシャルなどの動力伝達装置は、自動車の省燃費化を背景に小型・軽量化が進んでおり、これに伴い、軸受の使用環境は過酷さを増している。小型かつ軽量な装置で従来と同等のトルクを出力するために、装置の高出力化が進み、軸受には高速回転性能が求められている。また、軽量化のために用いられるアルミ製ハウジングは、従来の鉄製のハウジングよりも剛性が低くなり、軸受に加わる偏荷重が増加する。こうした過酷な使用環境下においても軸受寿命を確保するために、高負荷容量を実現する必要がある。
NTNは、長年にわたる内部設計と加工方法の双方の改良により、優れた低昇温性(耐焼き付き性)を誇る自動車用円すいころ軸受を市場に展開している。この度、量産受注を得た「自動車用ULTAGE 円すいころ軸受」は、NTN独自のころ(転動体)形状により、低昇温性に加え、従来品を上回る世界最高水準の高速回転性能と高負荷容量を実現した商品だ。本開発品のころ形状により、軌道面の接触面圧を最小化させるとともに、つば面の温度上昇を抑制することが可能だ。これにより、転動疲労寿命を向上させ、高負荷容量を表す基本動定格荷重は従来品比で1.2 倍、軸受寿命は1.8 倍以上、許容回転速度は約10%向上させている。
2017 年の開発発表後、同年の「”超”モノづくり部品大賞(モノづくり日本会議/日刊工業新聞社主催)」で「自動車部品賞」を受賞するなど、専門機関からも高い評価を得ながらも、ユーザーへの提案を進めていたところ、トランスミッションの小型化(軸長短縮化)を実現する長寿命性とともに、優れた低昇温性を評価され、このたびの量産につながった。この商品は、特定のサイズから量産を開始し、順次展開を進めていく予定だ。