塚田勝弘さんが選ぶおすすめSUVは、すべて電動車。予算300万円までならスバルXV Advance、予算600万円までならトヨタRAV4 PHV、そして予算無制限はボルボXC60のPHEVモデル(Recharge Plug-in hybrid T8 AWD Inscription)。最もリーズナブルなXVは、全高1550mmの車高によって立体駐車場への入庫が容易な点もお気に入りのポイントだ。
TEXT●青山尚暉(AOYAMA Naoki)
これからSUVを手に入れるのであれば、世界の潮流である電動車を候補に挙げたいと考える。もちろん、せっかくSUVならではの世界を堪能するなら、駆動方式は4WDである。最近発売されたクロスオーバーモデルのなかには、2WDのほうが走りがよい...と感じられる車種もあったりするのだが、ここは、男は黙って4WDである。ただし、日本で一般ユーザーが使うぶんには、極悪路の走破性に特化している必要はない。荒天、悪路走行を含むアウトドアシーンや雪道に強ければそれで充分ではないか。
予算300万円までなら「スバルXV Advance」
そんな基準で、300万円以下のSUVとして使いやすく、オン/オフの走り、そして先進運転支援機能にも満足できるのが、292万6000円のスバルXV Advance。ポルシェとスバルだけの水平対向形式を採用する2Lエンジン+モーターのe-BOXERのエンジンフィールは、実用スバル車の中で最高すぎる質感、パフォーマンスの持ち主と断言できる。
そしてシンメトリカルAWDとXモードの組み合わせによって、すずしいルックスをしていながら、悪路の走破性も見事。片輪凸凹の雲泥、片輪雪路という現実的にはあまりない極悪のシチュエーションでのテスト走行を経験したこともあるが、サマータイヤでさえなんなく走破できるほどの実力なのである(実際には雪道ではスタッドレスタイヤを履きましょう)。また、普段使いでは、全高1550mmの車高によって、立体駐車場への入庫も容易なのだから、全方位において最高ではないか。
予算600万円までなら「トヨタRAV4 PHV」
600万円以下で、国産車に最高の1台がある。それは2019-2020年日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したトヨタRAV4に新たに加わったRAV4 PHVである。現在、リチウムイオンバッテリーの供給が間に合わないほどの人気ぶりで、2020年度の生産分は完売しているが、個人的にもウェイティングリストに名を連ねる価値は150%あると思える。
内外装デザインは、より上級なあしらいを持たせている以外は、ガソリン車、HVのRAV4と大きく変わらないものの、実は、2.5Lエンジン(177ps、22.3kg-m)、フロントモーター(182ps、27.5kg-m)、リヤモーター(54ps、12.3kg-m)、システム最高出力306psの強大なパワー、トルクに対応するため、GA-Kプラットフォームは北米で売られている、RAV4より上級のハイランダーのものをベースにしているのだ。
動力性能、環境性能もすごく、0-60マイル加速は6秒とスポーティカー並みで、実燃費に近いWLTCモード燃費はRAV4 HVの20.6km/Lに対して22.6km/Lへと向上。最大航続可能距離は1300km!!にも及ぶほど。
同種のPHVにはアウトランダーPHEVが先輩格として君臨しているが、RAV4 PHVのリチウムイオンバッテリーは、アウトランダーPHEVの総電力量13.8kWh、EV走行可能距離65kmに対して総電力量18.1kWh、EV走行可能距離95kmと大きく上回るスペックを備える。実質、約65~70kmのモーターのみでのEV走行をこなしてくれるというのだから、電欠のない電動車のモーター走行性能としてもなかなかなのである。
しかも、アウトランダーPHEV同様、クルマが(搭載エンジンが)発電機となり、アウトドアはもちろん、災害時に大いなる威力、安心をもたらしてくれる点は、地震大国、災害大国の日本において、最強の存在となりうる。
ちなみに、RAV4は全グレードともに、モノトーンボディだといきなり地味。標準車系でアドベンチャーグレードを”勝手に最上”としているのも、唯一、スタイリッシュな2トーンボディが選べるから。よってRAV4 PHVでも、ブラックルーフとなる539万円のPHV BLACK TONEが、この価格帯最高のSUVとしたい。
予算が無制限なら「ボルボXC60 Recharge Plug-in hybrid T8 AWD Inscription」
予算無制限なら、1000万円オーバーの超高級SUVがゴロゴロいるのだが、ここは冷静に、くるまの未来を見据えた、電動SUVの中から選ぶことにする。とすれば、個人的なお気に入りは、全モデルを電動化させる世界で最初のプレミアムブランドとなったボルボのXC60 Recharge Plug-in hybrid T8 AWD Inscription、949万円である。
商品性、走行性能の良さはXC60本体の2018年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー受賞、2017-2018年日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞の受賞歴からも察することができるが、何よりも都会にも似合うスタイリッシュさ、北欧モダンなインテリアの素晴らしさ、そして世界最高峰の先進運転支援機能にノックアウトされている。
そんなXC60に電動車であり、ウルトラスムーズかつ上質極まる走行性能と経済性を兼ね備えたPHVが加わったのだから、これはもう文句なし。この時代にジャストなSUVの1台と言っていい。5年の長期保証にも注目である。