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第88回ル・マン24時間の決勝スタートを翌日に控えた9月18日、プジョーとトタルは新たなカテゴリーであるル・マン・ハイパーカー(LMH)カテゴリーに2022年から参戦することをあらためて表明した。
TEXT◎世良耕太(SERA Kota)
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ル・マン・ハイパーカー(LMH)は2021年3月から始まるWEC(FIA世界耐久選手権)のシーズン9から、現行のLMP1に替わって導入される新たな最上位カテゴリーだ。市販ハイパーカーをベースに競技車両に仕立てるのが基本で、エンジンは車両ミッドに搭載して後輪を駆動。フロントに最高出力200kW(272ps)のモーターを搭載し、トータル出力は500kW(680ps)に制限される。
現時点でシーズン9からの参戦を表明しているのはトヨタと、プライベートチームのバイコレス、グリッケンハウスである。
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プジョーのWEC参戦プログラムは、同社モータースポーツ部門のプジョー・スポール(PEUGEOT Sport)と、フランスの石油大手トタル(TOTAL)がコラボラーションして進める。18日の発表では、LMH車両の方向性を示すスケッチが3枚公開された。プジョー・スポールWECプログラムのテクニカルディレクターを務めるオリビエ・ジャンソニーは、「まだルールを理解するフェーズ」と現在の状況を説明する。エンジンの詳細を含め、車両の細かな仕様はアナウンスされていない。
フロントビューで目を引くのは、3本線のライティングだ。これは最新プジョーのアイコンとなっているが、LMH車両の場合はプジョー・スポールの新しいロゴを表現したものだ。同様のモチーフはリヤでも反復されている。
サイドビューでは、リヤに向かってキックアップするラインと、その延長線上にあるオーバーハングしたリヤウイングが目を引く。これは、1992年と93年のル・マン24時間レースを制した905の引用である。プジョーのデザインダイレクター、マシアス・オサンはLMH車両のデザインについて次のように説明する。
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「パフォーマンスを追求するだけではなく、プジョーのDNAを込めることが重要だと考えている。(プジョー・スポールとの)コラボレーションは始まったばかりで、何ができて、何ができないのか、確認しているところだ。プジョー・ブランドのDNAをどのようにデザインに落とし込むかがチャレンジングで、昼も夜も容易に認識できるモチーフを用いなければならないと考えている。そのひとつの回答が、フロントとリヤのシグネチャー・ライティングだ」
オサンによれば、今回発表したスケッチは「プレ・プロジェクト」とのこと。プロジェクトのごく初期段階のアイデアだという。
「このスケッチの狙いは、プジョーのパフォーマンスを強調すること。効率の高さをうまく形状に落とし込み、アイコニックなシェイプにしたい。同時に、エレガントでアスレチックに見えるようにしたい」
レギュレーションで性能値に厳しい条件が設けられるとはいえ、車両開発側から要求される空力性能を満足させる必要もある。また、熱交換器やブレーキの冷却性能も満足させなければならず、デザイン一辺倒というわけにはいかない。これらについては2022年に向けて徐々に詰めていくことになる。その結果ディテールの変更は強いられるだろうが、コンセプトは変わらないはず。実戦仕様の完成を期待させるに充分なスケッチだ。