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内燃機関超基礎講座 | SKYACTIV-Xは「16.3(欧州仕様)」そもそも「圧縮比」ってなんだ?


マツダSKYACTIVの登場から、一気にスペックの主役級に躍り出た「圧縮比」。しかしそもそも圧縮比って何のことを指すのだろうか。


TEXT:髙橋一平(TAKAHASHI Ippey)

 エンジンの諸元表などで見られる圧縮比は、ピストンが上死点と下死点、それぞれの位置にあるときの燃焼室まで含めたシリンダー内の容積の比率。ボアとストロークの寸法で構成される行程容積と燃焼室の容積という、幾何学的な要素で表される計算上の数値だ。あくまで計算値ではあるが、エンジン設計上の基本スペックである。

燃焼室とは、上死点にあるピストン冠面と、シリンダーヘッドによって構成されるエリア。バルブレイアウトなどにより、その形状はさまざまだ。行程容積とは下死点にある時の燃焼室を除いた円柱状部分の容積。ボア径とストローク長から計算で求める。実際には円柱部分の上面と下面がピストンの冠面となるため複雑な形状となるが、計算上では円柱の容積である。

圧縮比の求め方は[(行程容積+燃焼室容積)÷燃焼室容積]。上のイラストで、行程容積が400cc/燃焼室容積が40ccとすると、圧縮比は[(400+40)÷40=11 ]となる。

 一般に圧縮比は、ピストンが下死点にある状態で燃焼室まで含めたシリンダー内の容積と、ピストンが上死点にあるときの燃焼室部分の容積の比率。シリンダー内に取り込んだ混合気(直噴の場合は空気のみ)を点火(膨張行程)前にどれだけ圧縮できるかを判断する指標として広く知られてきた表記だが、近年、高効率化の要求から圧縮という要素への注目度が高まっており、これらをより正確に捉えるべく、圧縮比に関わる表現は多様化してきている。




 具体的には、ミラーサイクルを採用するエンジンが増えている現在では「圧縮比」が示す混合気の圧縮比率よりも、膨張行程における燃焼ガスの膨張比率、つまり膨張比を推し量る指標とされることが多くなっている。




 そもそも、オットーサイクルを用いる通常型のエンジンの多くにおいて、吸気バルブは下死点後も開いており、容積の比率で表される圧縮比通りに混合気が圧縮されるとは限らない。そこで、増えつつあるのが、燃焼室容積やボア径、クランクのストローク値などといった幾何学的要素によって決まる従来通りの表記を「幾何学的圧縮比」、バルブタイミングなどを考慮して実際に混合気が圧縮される比率を「実圧縮比」などと呼び、区別する例。特に、熱効率を追求すべく膨張比を大きく(高く)しながら、圧縮行程では吸気バルブを閉じるタイミングを意識的に大きく遅らせ実圧縮比を低く抑えるミラーサイクルでは、こうした表現なしに全体像を捉えることが難しくなっている。

(PHOTO:BMW)

 シリンダー内径やピストン冠面形状などのように設計で決定され、そのとおりに工作されていて「動かしようのない」燃焼室容積=「幾何学的圧縮比」がまず存在する。一方、ドライバーの運転操作は複雑であり、いきなりエンジン回転を上げたり下げたりという動作もある。ガソリンエンジンの多くはスロットルバルブがあり、急激なスロットル操作では必要な吸気量を確保できない。また、高回転域では機械の宿命としての応答遅れが発生しやすく、バルブの開閉タイミングか設計値からズレることもある。その結果、実際の圧縮比は幾何学的設計値とは異なったものになる。




 幾何学的圧縮比を「容積比」と呼び、実圧縮比を単に「圧縮比」と呼ぶことで、両者を区別できる。実際の膨張比は「容積比」とは異なるが、一般に「膨張比≒容積比」とみなせるだろう。

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