後輪駆動車に搭載される日産の1モーター2クラッチ式ハイブリッドシステム。その構造と特質を、2008年試作機登場時のインプレッションから振り返ってみよう。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)
*本記事は2009年8月に執筆したものです。
下は試作時の写真。1モーター+2クラッチのパラレルハイブリッド。実験車両のエンジンは自然吸気3.5ℓのVQ35。ジヤトコ製7速ATのトルクコンバーター部分に乾式クラッチ、その後方にモーター~7速ATのギヤセット~湿式クラッチとつづく。動力伝達系が非常にコンパクトに収まっているが、これもこだわった部分。
走りの楽しさを向上させつつ、燃費をコンパクトカー並みにするのが、日産が考えるハイブリッド化の狙い。V6ガソリン車を超越した動力性能をドライバーに体感させながらも、燃費は1.5ℓ車並み、を目標とする。発進はモーターによる動力が基本。
乾式クラッチを採用した理由のひとつは、湿式に比べてクラッチオフ時の引きずりトルクが小さく燃費に有利だからだそう。一方で、エンジンの動力を乗せる際の接続で、微細なショックが生じるのが難。テストコースでの短い試乗でも、乾式クラッチらしい微細なショックは体感できた(取り立てて不快とは感じなかったが......)。と同時に、乾式クラッチらしく、アクセルの踏み込み量と駆動力がダイレクトな関係を築くのも確認済み。エンジンのみの走行では乾式クラッチ+7速ATの走行。トルクコンバーターを介さないステップATの走行は新鮮であり、好印象だった。
アクセルを少しでも戻すと、すかさずエンジンは停止する。踏み込み量を大きくするとエンジンが始動して乾式クラッチがつながるが、速度域が高い領域ではつながる際のショックはさほど気にならない。モーター+エンジンの走行でも、エンジン回転は控え目。主役はあくまでモーター。エンジンの力が必要なときだけ必要最小限使うといったスタンス。モーターアシストならぬ、エンジンアシスト的な使い方だ。