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カワサキ・Z H2試乗|200馬力×スーパーチャージドエンジンの組み合わせは意外と紳士的だった。


ズバリH2 SXのネイキッドモデルである。その名も“Z H2”! カワサキブランドを象徴する「Z」の称号と、誰もが認める世界最強最速マシン「H2」のパワーユニットを融合して誕生。2020年4月4日に新発売された。




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力⚫️カワサキモータースジャパン



メタリックスパークブラック×メタリックグラファイトグレー

カワサキ・Z H2.......1,892,000円

 3月末に発表されたカワサキZ H2のプレスリリースによれば、「Zシリーズのフラッグシップモデルとして誕生」と記されていた。次世代型Zの登場である。


 何と言っても最大の特徴はバランス型スーパーチャージドエンジンを搭載している点にある。その最高出力は147Kw(200ps)を発揮する。市販車にしてリッター当たり200psの高性能ぶりには、やはり大きなインパクトがある。


 ちなみにその最高出力データはサーキットを征すコンセンプトを掲げてデビューしたヤマハYZF-R1と同じ。同様に本気で頂点のハイパフォーマンスを追求して投入されたホンダCBR1000RR-Rの160Kw(218ps)には及ばない物の、Z H2はどれよりも低い回転域でそれを発揮している。ちなみに最高出力回転数はCBRが14,500rpm。YZFは13,500rpm。そしてZ H2は11,000rpmだ。


 そして何よりも驚くべきは、最大トルクの太さだ。CBRもYZFも共に113Nmをそれぞれ12,500rpmと11,500rpmで発揮。対するZ H2の最大トルクは137Nm(14kg・m)を8500rpmで発揮してしまう。まさに過給パワー恐るべしなのである。




 もうひとつ興味深いのは、基本的に共通エンジンを搭載するH2 SXと比較すると最大トルクの発生回転数はH2 SXの9,500rpmに対して、Z H2は8,500rpmに低くなっている事。さらにドリブンスプロケットが2丁大きな46丁を装備して二次減速比がH2 SXの2.444からZ H2では2.555へと低められていた。吸排気系とバルブタイミングはオリジナル設定だ。


 つまり本来のポテンシャルを発揮できる領域が、より常用域に近づけられている。その結果、最大級のスロットルレスポンスが期待できるという点が見逃せないのである。


 それはまさに、自分で走らせることができる地上の乗り物の中で、世界最速レベルのポテンシャルを備えていることを意味している。日本において、そんなハイパフォーマスを遺憾なく発揮して楽しめる公道は残念ながら無いのも事実だが、トップレベルのエンジン搭載にはロマンと魅力があふれているに違いない。


 同時にそれはゆとりある走りを楽しむ事へ、ライダーマインドの成長を促してくれる要素になってくれるのかもしれない。

お利口さんだから許されたものすごいパワー。その仕上がりは決して乱暴者ではない。

 グリーンのパイプワークが目立つトレリスフレームの試乗車に跨がると、いかにも高剛性を狙ったワイドなデザインが印象的。エンジンこそH2ベースだが、フレームは完全に新設計されたニューモデルである。


 足つき性も考慮してシート前方はスリムに仕上げられているが、ニーグリップを利かせると両膝がフレームに触れて、ガッシリした印象を直接感じ取ることができる。


 シート高はやや高めだが、シート前方は細身。両足を地面に伸ばすと、ステップが邪魔する事もあるが、足は意外と遠い位置に接地でき、ハンドル位置の関係も相まって、車体を支えるのは楽で不安が無い。車両重量は239kgもあるが、感覚的には220kg程度のバイクを扱う様な感じである。


 


 エンジンを始動すると何とも低く太い籠もった吸気音が耳に入るが、2000rpmを超えるとその音はフッと消え去り、3000rpm以上で今度は何処か遠くの方からタービン音が聞こえてくる。


 5000rpmからは過給パワーモリモリで強大なトルクの膨らみを実感。さらに7000rpm付近ではまさに壮絶な過給トルクが炸裂する。未体験ゾーンの世界を思わせる、そのハイパフォーマンスは計り知れないレベルだ。


 ただ、その凄さを認める一方で、Z H2のそんな高性能ぶりは、決して「ヤンチャ」ではない。言い換えると全然乱暴者ではない事を敬意を持って報告しておきたい。


 電子スロットルの採用を始め、最先端のセンシング技術が投入されており、例え無神経なライダーがスロットルを全開にしても、必要以上過度な駆動力は発揮されないように調教されるから、なんとも大人びた走りに徹することができる。


 もしもZ H2が単に強烈なじゃじゃ馬だったなら、こんな高性能はいらない!と、早々に結論付けたかもしれないが、本音を吐露すれば、純粋な気持ちとして、むしろどこかでその実力を試してみたいと思えたのが正直な感想である。




 まあ、普段の市街地では常に爪を隠して走ることにはなるのだが、自分の周囲を走るクルマやバイクのどれよりも早いポテンシャルを発揮できるという備えは、心に大きなゆとりを生む。しかも周囲の状況が刻々と変化する中で、常にセーフティーゾーンを求めて移動し続ける場面では、加速性能も減速性能も思いのままになる方が安全面で有利に作用することは間違いない。


 その意味で、とてもプレミアムなモデルに乗っている安心感から得られる快適性もまた乙なもの。


 オーナーなら、ごくたまにはサーキットに出かけて、ラップタイムを競うわけではなく、ただただ全開走行を試してみたい。そんな独特な気分の高揚が楽しめるとも思えたのである。




 ハンドリングはかなり鋭くスポーティに味付けられている。ハンドル切れ各が29度と小さいのは難点だが、峠道でもクイックに身をひるがえし軽快なリズムで駆け抜けることができるのだ。


 やや硬めに感じられる前後サスペンションも初期の作動性は抜群で大きな衝撃もシッカリと短時間で吸収してくれる。コーナリング中にギャップを通過しても、バイク自体の姿勢が乱れない安定感がある。またシッカリと荷重と駆動力を掛けてコーナーを脱出する時のタイヤのグリップ力にも確かな安心感があった。


 バイクを倒し込むと若干後から舵の切れ込みがついてくる感もあるが、リーンアングル(車体の傾き)を保つように荷重コントロールすると、クルリと瞬時に曲げられる高い旋回性を発揮してくれる点も魅力的だ。


 最新鋭ABSの装備も含めて、コーナリング中でも姿勢が乱れない乗り味。硬い衝撃は食らうがゴツゴツではないサスペンション。クィックな挙動を示すグッドハンドリングも含めて全てに大人びたエッセンスが加味されているように感じられ、どんな場面でも操縦、操作に対するレスポンスが小気味よいのである。


 制動も加速も自由自在になる感覚はある種安全運転に貢献できることも見逃せない。


あえて4輪で例えるのなら、オープントップのプレミアム・スーパーカーに颯爽と乗る様な気分と似ているだろう。世界最速レベルのパフォーマンスを持つ誇りを感じながら街を流す所に大きな価値と魅力があるのかもしれない。


                    


 ちなみにローギヤでエンジンを5000rpm回した時の車速は52km/h。6速トップギヤ100km/hクルージング時のエンジン回転数は約4,100rpm。試乗撮影での燃費率は14,5km/Lだった。




 余談ながらZ H2には、ハイパワーを電子的に無駄なく有効な駆動力発揮につなげるローンチコントロールも装備されている。


 果たしてそのポテンシャルは如何なるものだろうか。想像するにゼロヨンに関してはH2 SXを凌ぐレベルにあると思う。機会あれば久々にZ H2本来の実力を確かめてみたいと思えたのである。9秒台突入は間違いなく、あるいはそれ以上なのか !?


 そんな思いに胸踊るマシンの登場は久々のことである。

足つき性チェック(身長168cm)

ご覧の通り両足の踵は大きく浮いた状態になった。シート高は830mmと少し高めである。ただ、車体を支える上での不安感は少なかった。

ディテール解説

ヘッドランプとメーターがカバーリングされたフロントマスクが個性的。左側(写真右側)にあるグリーンメッシュは、空気導入ダクトの先端である。

内部構造にビッグピストンを採用したSHOWA製のSFF-BPの倒立式フロントフォークを採用。ラジアルマウントされた油圧ブレーキキャリパーは鋳造アルミブロックから削り出されたブレンボ製M4.32高剛性モノブロックタイプだ。

エンジン性能曲線図によると、約8,000rpm以下の全ての領域でH2 SXよりも高トルクを発揮。φ69mmの過給機は、鍛造アルミニウムブロックから超精密に削り出された12枚のブレードで構成されている。エンジン各部は耐熱対策が徹底された。

エンジン真下のキャタライザーを経て右側に出されたアップマフラーはボリューム感たっぷり。

スイングアーム取り付けプレートをエンジン背後に締結。各剛性バランスとフレームの高剛性化にも貢献。スイングアームはZX-10RRで培われた技術がフィードバックされている。リヤサスペンションはリンク式のニューユニトラック式。ショックユニットはSHOWA製が採用されている。

φ260mmの固定式シングルディスクローターにはNISSIN製シングルピストンのピンスライド式油圧キャリパーを装備。タイヤはピレリ製DIABLO ROSSOIIIを履く。

タンクデザインは両側へのエラ張りが目立つ。同時にワイドなフレームワークも印象的。少しアップしたパイプバーハンドルはブラックアウトされている。

多彩なコントローを担うハンドル左側スイッチ。ご覧の通りクルーズコントロールも装備されている。ディマーやパッシングは向こう側に隠れた位置にあるスイッチを人差し指で操作。
ハンドル右側のスイッチはふたつだけ。上のスライドスイッチはエンジンキルスイッチと始動用セルスタータースイッチを兼ねる。SELECTスイッチは、車両設定画面を呼び出しモード変更ができる。
フルカラー大型TFT液晶モニターを採用したマルチインフォメーションメーター。輝度が自動調光される他、白黒反転画面も選べる。最新のスマートフォン接続機能も装備されている。

セパレートクッションを採用した段差のあるダブルシート。後席左脇カウル部にあるキーロックを解錠するとリヤクッションを取り外す事ができる。
グリーンのフレームの中に半分潜り込むようにセットされているETC機器は標準装備である。左側ピリオンステップステーにはヘルメットホルダーも装備。
クリアレンズを採用したLED式のテール&ストップランプはZの文字がデザインされている。

左側のフロントフォークトップエンドには二つの調節ネジがあり、伸び側圧側がそれぞれ独立してダンパー調節できる。
フロントフォークの右側はトップエンドでプリロード調節ができる。
ワイドな骨格と同じくボリュームのあるフロントまわりが印象的。ステップ幅も意外と広めである。

◼️主要諸元◼️

型式:2BL-ZRT00K


全長×全幅×全高:2,085mm×810mm×1,130mm


軸間距離:1,455mm


最低地上高:140mm


シート高:830mm


キャスター/トレール:24.9°/104mm




エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ


総排気量:998cm³


内径×行程/圧縮比76.0mm×55.0mm/11.2:1


最高出力:147kW(200PS)/11,000rpm


最大トルク:137N・m(14.0kgf・m)/8,500rpm


始動方式:セルフスターター


点火方式:バッテリ&コイル(トランジスタ点火)


潤滑方式:ウェットサンプ


エンジンオイル容量:4.7L


燃料供給方式:フューエルインジェクション




クラッチ形式:湿式多板


トランスミッション形式常噛:6段リターン


ギヤ・レシオ:


 1速…3.076(40/13)


 2速…2.470(42/17)


 3速…2.045(45/22)


 4速…1.727(38/22)


 5速…1.523(32/21)


 6速…1.347(31/23)


一次減速比/二次減速比:1.480(74/50) / 2.555(46/18)


フレーム形式:トレリス


懸架方式(前/後):テレスコピック(倒立・インナーチューブ径43mm)/スイングアーム(ニューユニトラック)


ホイールトラベル(前/後):120mm/134mm


タイヤサイズ(前/後):120/70ZR17M/C(58W)/190/55ZR17M/C(75W)


ホイールサイズ(前/後):17M/C×MT3.50/17M/C×MT6.00


ブレーキ形式(前/後):デュアルディスク320mm(外径)/シングルディスク260mm(外径)


ステアリングアングル(左/右):29°/ 29°


車両重量:240kg


使用燃料:無鉛プレミアムガソリン


燃料タンク容量:19L


乗車定員:2名


燃料消費率(km/L):22.5km/L(60km/h・定地燃費値、2名乗車)


           16.9km/L(WMTCモード値、1名乗車)


最小回転半径:3.3m

◼️ライダープロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。

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