XR230の生産終了を受けて発売されたCRF250L。従来からのXRではなくモトクロッサーのCRFの名称となり、内外ともに一新! スタイリングのアップデートもちろん、エンジンが水冷化されて、ホンダ製トレールの新たな一歩を踏み出したモデルだ。現代流にアレンジされた滑らかな乗り味はオンもオフもOK! 等身大で付き合えるこの一台を、ステージ問わずじっくり乗ってみた。
REPORT●川越 憲(KAWAGOE Ken)
PHOTO&EDIT●佐藤恭央(SATO Yasuo)
CRF250L/Type LD……715,000円
話をCRF250Lに戻そう。今回試乗してみて、CRF250LにはXR250以前のホンダ製オフ車に見られた過激さは感じられなかった。CRF250Lは、CBR250Rの水冷単気筒エンジンをリファインして搭載しており、、XR250のようにスロットルにリニアに反応し、押し出されるような太いトルク感が希薄なのだ。CBR250Rより低中速トルクは厚くなっているけれど、なだらかに立ち上がるトルク特性のためか、ダートでタイヤを滑らすような走行は中々にコントロールが難しい。これはテクニックに左右される部分も大きいが(笑)。良くも悪くも、XR250は80年代後半のXLR250シリーズから続くパワーユニットを手直しして30年近くも採用し続けたモデルだから、現代のモデルとフィーリングが異なるのは当たり前か。
スパルタンな見た目やポジションからは想像できないくらいユーザビリティに優れていて、初めてオフロードバイクに乗る人でもオフ車という存在が身近に感じられる作りとなっている。かつてのXLR125/200やXR230のようなオフ車への間口を広げてくれる存在と言える。まさに「オンオフ楽しめる、ちょうどいい相棒(略)」のコンセプトを体現しているわけだ!
●足つきチェック(ライダー身長182cm)
シート高が875mmあるが、シートがスリムなことと、サスペンションの沈み込みが大きいので身長182cm、体重70kgのテスターの場合、シート前方に座れば両足がしっかり着く。ハンドル幅はあるが距離は遠くないので上半身はラク。ポジションが立ち気味で視線が高くなるため視界が広く感じられるのがオフ車ならでは! ちなみにローダウン仕様のType LDも併売されいて、こちらはシート高830mmに設定。
●ディテール解説
249㏄水冷4ストDOHC4バルブ単気筒エンジンを搭載。ボア76mm×ストローク55mmは250オフの中でも結構なショートストローク仕様だ。低中速域のトルクを厚くしつつ、高回転までのスムーズさも併せ持つ。フレームはスチール製のツインチューブタイプで、メインフレームは楕円断面形状で車体のスリム化に貢献。最低地上高は255mmを確保している。
丸断面のテーパーマフラーは、2017年のモデルチェンジで内部構造を3室から2室に変更。若干小型化されるとともに、歯切れの良いサウンドを獲得した。
SHOWA製のφ43mm倒立フォークは250mmのストローク量を確保。ストリートから不整地まで幅広いシチュエーションに対応する。
φ256mmのシングルディスクは軽量でクリーニング性の高いウェーブタイプを採用。2ポットキャリパーとの組み合わせはブレーキタッチのダイレクト感が高い。
φ220mmウェーブディスクと1ポットキャリパーを組み合わせたリヤブレーキは、オフロードバイクとして十分な制動力を発揮。フロントブレーキ同様、コントロール性も重視されている。CRF250R譲りの直張り式のスポークレイアウトは軽量かつ剛性にも優れる。 アルミ一体鋳造のテーパー状スイングアームも適切な強度と適切な剛性バランスを両立させている。
補強ブレース付きの幅広なバーハンドルは、スタンディング時の扱いやすさを考慮した形状だが、モトクロッサーに比べて手前にオフセットされているのでツーリング時などでも極端な違和感はない。ちなみにグリップ形状はCRFシリーズと共通だ。メーターはややコンパクトではあるがシンプルなので見やすい。
■主要諸元■〔 〕内はCRF250L Type LD
車名・型式:ホンダ・2BK-MD44
全長(mm):2,195〔2,175〕
全幅(mm):815
全高(mm):1,195〔1,150〕
軸距(mm):1,445〔1,430〕
最低地上高(mm):255〔210〕
シート高(mm):875〔830〕
車両重量(kg):144〔143〕
乗車定員(人):2
燃料消費率*1(km/L):
国土交通省届出値定地燃費値 (km/h)…44.3(60)〈2名乗車時〉
WMTCモード値(クラス)…33.1(クラス 2-2)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m):2.3
エンジン型式:MD38E
エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
総排気量(㎤):249
内径×行程(mm): 76.0×55.0
圧縮比: 10.7
最高出力(kW[PS]/rpm):18[24]/8,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):23[2.3]/6,750
燃料供給装置形式:電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式:セルフ式
点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式:圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L):7.8
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比:
1速…3.333
2速…2.117
3速…1.571
4速…1.304
5速…1.103
6速…0.965
減速比(1次/2次):2.807/2.857
キャスター角(度):27° 35′
トレール量(mm):113
タイヤ:
前…3.00-21 51P
後…120/80-18M/C 62P
ブレーキ形式:
前…油圧式ディスク
後…油圧式ディスク
懸架方式:
前…テレスコピック式
後…スイングアーム式(プロリンク)
フレーム形式:セミダブルクレードル
■製造事業者/本田技研工業株式会社
●ライダープロフィール
川越 憲
1967年生まれ。有限会社遊文社・代表取締役にしてバイク誌を中心に活動するフリーライター・編集。現在所有するバイクはBMW R1150GS・BUELL XB9SX・TZR250(1KT)・NSR250R(MC18)etc.。 趣味は草野球、バレーボール、映画鑑賞(16mm映写技師免許所持)。