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手頃な良き相棒感覚!


2020年1月にビッグマイナーチェンジ。基本の主要パーツに大きな変更はないが、外板や外装パーツ、メーター等の多くがリフレッシュされた。




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力●株式会社 スズキ

◼️スズキ・ジクサー150.......352,000円

グラススパークルブラック / トリトンブルーメタリック

◼️カラーバリエーションは全3タイプ

ソニックシルバーメタリック/グラススパークルブラック
グラススパークルブラック


 デビューは2017年1月。専用開発された空冷の154 ccシングル・エンジンを搭載したネイキッドスポーツ。カウルを持たないフルオープンエアーのオーソドックスなロードモデルだ。


 もともとは2014年にインド生産で販売開始されてアセアン諸国や中南米で人気。インドでは多くの部門でバイクオブザイヤーの栄誉に輝いている。


 


 色々な高スペックモデルを見慣れてきた日本市場では、採用メカニズムに驚きは少ないものの、外観デザインは斬新。軽二輪枠内の中間排気量を採用し、装備重量で135 kgという125cc 並のライトウエイト、そして何といっても30万円を切る本体価格(当時8%の税込みで316,440円)とリーズナブルなお値段に驚かされたのである。今もライバル無き選択肢として注目されている。




 その後2018年5月のマイナーチェンジを経て、2020年1月にスタイリングや装備類の一新で洗練されたニューモデルを投入。税込み(10%)352,000円で発表、3月から新発売されたモデルが今回の試乗車だ。




 フレームと搭載エンジンの基本は共通ながら車体サイズも若干拡大。前輪のみだがABS が標準装備される等で装備重量は139kg になった。


 フロントのヘッドライトもLED化された他、メーターも液晶ディスプレー方式に変更。タンクの造形やセパレート化されたシート。そしてリヤフェンダーデザインも大幅にリフレッシュされたのである。

個々のバイクライフに夢が繋がっていく雰囲気である。

 あくまで感覚的な話だが、試乗車を目前にすると125㏄ クラスよりは立派なフォルムを直感する。しかし跨がるとなんとも親しみやすい。まるで手強さを覚える事無く身体に良く馴染む感触が好印象。おそらくそれはビギナーや体力的に自信の無い小柄なライダーでも同様で、フレンドリーな雰囲気に包まれることだろう。


 リラックスして気負うことなく走り出せる感覚はとても嬉しい。バイクに乗り慣れていない人はもちろん、しばらくバイクを離れていたリターンライダーにも、これなら本音でお勧めできるのである。




 車体は決して小さすぎず、もちろん大き過ぎる事も無く、装備重量で130kg台の重さも扱いに不安を感じることが少ない。そしてエンジンパワーも何不自由しないだけの十分なトルクが簡単に発揮できるのだから、申し分無し。


 スキーだって最初は緩斜面から滑り出す。野球だって、軽いキャッチボールから肩慣らしを始めるのと同様、バイクだって、ライダーがビックリするようなスケールの大きさや桁違いのハイパワー等、最初は必要無いのである。


 


 その意味でジクサー150は絶妙な高性能ぶりが魅力的に感じられた。2バルブの空冷OHCエンジンは明確なロングストロークタイプ。ギヤ比がワイドにつながる5速ミッションが選択されて、ゆとりのある乗り味が楽しめる。


 決してパワフルでは無い、レッドゾーンは9500rpmから。スロットル全開を決めるとエンジン回転はキッカリとそこまでは上昇するが、それ以上は望めない。感覚的には上まで引っ張ったとしてもせいぜい9000rpm手前当たりまでが自然。メーターの頂点にはエンジン回転インジケーターライトが装備されており、4000~9500rpm の範囲で500rpm毎に任意設定できる。


 ブン回す乗り方をする人でも8500rpm前後が妥当な所だろう。ちなみにアイドリング回転数は1500rpm。ローギヤで5000rpm回した時の速度は22km/h。5速トップギヤ100km/hクルージング時のエンジン回転数は7250rpmだ。




 全体に低めのギヤレシオとロングストロークエンジンとのマッチングはなかなか優秀。発進時にトルク負けする事もなく、常に余力を伴う加速性能を発揮。各ギヤで早め早めにシフトアップしてもへこたれない柔軟な出力特性が光り、とても扱いやすい。


 前述の通り、高回転域までの吹き上がりを活かす(引っ張る)タイプでは無いし、エンジンの常用回転域もそれなりに高いのだが、回転フィーリングには常に余裕のある穏やかな雰囲気が伴う。言い換えるとスーパースポーツ的な瞬発力は期待薄だが、どんな時でも平然とレスポンスしてくれる太くて優しいトルク特性と回転感覚のスムーズさが魅力的なのである。


 


 操縦性も至って素直、ハンドルの切れ角は35度で、もう少し大きければより良いと思えたのも本音だが、狭い場所でのUターンも扱いやすいので大きな不満には感じられない。 素直な操縦性発揮の背景には扱いやすいエンジンの出力特性も見逃せないところ。ビックリさせられる事のない程良いパフォーマンスと、気持ちが急かされない回転フィーリングとで、ワイディングロードでも右へ左へスイスイと身を翻しながらも、各コーナーをシッカリとパワーONで抜けていける。


 基本に忠実な操縦がし易いので、ラジアルタイヤを履く後輪にシッカリと荷重と駆動力を掛けた安心できる旋回操作につながり、安定感のある気持ちの良い走りができるのだ。過激なスポーツ性を楽しむ様に目を吊り上げた走りではなく、ごく平然とリラックスした気持ちをキープしながら快走できるのが魅力的である。




 今回の試乗距離はちょうど100km。市街地から郊外までのトータル燃費率は37.3km/L。高速道路や峠道では高回転を多用した事を考慮すると一般道のツーリングでの実力は普通に40km/Lを超えることだろう。


 いずれにしてもジクサー150が1台あれば万能だな。と思えたのが試乗しながらの正直な感想である。実用的にはかつての200ccクラスかそれ以上に匹敵するパフォーマンスがある。バイクを乗りこなす楽しさの基本を知る上ではまさに打って付け。高速道路だって走れるのだから、高性能を欲張らなければ、これで十分なのも事実だ。ましてやお値段も親しみやすいのだから、十分に価値ある選択肢になるのである。

⚫️足つき性チェック(身長168cm)



ご覧の通り、膝に余裕を持って両足は踵までベッタリと地面を捉えることができる。シート高は795mm。スマートな車体と相まって足つき性は良い。


⚫️ディテール解説

個性的デザインの8角形ヘッドライトは上中下の3段重ねのLED7灯式。ロービームでは上下が点灯し、ハイビームでは中段が点灯する。

ボア・ストロークが56×62.9mmのロングストロークタイプ単気筒エンジンはSOHC 2バルブの154cc。

マフラーはデュアル排気口の大容量タイプ。スイングアームマウントのアンダーフェンダーも新しい。ディスクブレーキはφ220mm、シングルピストンのピンスライド式油圧キャリパーを採用。後輪にはラジアルタイヤが装備されている。

車体中央部にマウントされたモノショックユニットには赤いコイルスプリングを採用。プリロードは7段階に調節できる。

ブラックアウトされたパイプバータイプのアップハンドルを装備。寸法も含めて乗り味に華奢な印象は感じられない。

ハンドル左側のスイッチレイアウトは写真の通り。咄嗟の時に押しやすいホーンボタンが最下段のベストボジションにある。中段はウインカー、上段はディマー。人差し指で扱う黄色いのがパッシングスイッチだ。
右側のスイッチもオーソドックスな方式。下段の黒いのがエンジン始動用のスタータースイッチ。上の赤いのがキルスイッチ。写真は切られた状態。


長方形のモノクロ液晶ディスプレーを採用したマルチインフォメーションメーター。棒グラフが横に伸びる回転形は250rpm毎に積み重なって伸び上がる。

ダブルシートは軽く段差のあるセパレートタイプに一新された。クッション容量に厚みがあり座り心地は良い。

シートカウル左脇のキー操作でリヤシートは脱着できる。グラブバーの存在は二人乗りでも安心。テールを引き締めるデザイン上のアクセントにもなっている。
シート下には車載工具や書類等がゴムバンドで固定されていた。写真はそれらを取り出して撮影、ご覧の通りETC機器搭載用スペースとしても活用できる。


シートカウルのテールエンドに綺麗に組み込まれたテールランプはLED方式。アッパーフェンダーデザインと共にシャープなフィニッシュを魅せる。

それなりのボリューム感もあるメリハリのあるフォルムが印象深い。余談ながらメインスタンドも装備されている。

◼️主要諸元◼️

型式:2BK-ED13N


全長/全幅/全高:2,020mm/800mm/1,035mm


軸間距離:1,335mm


最低地上高:160mm


シート高:795mm


装備重量:139kg


燃料消費率:55.3km/L(60km/h/2名乗車時 )


WMTCモード値:51.0km/L(1名乗車時 )


最小回転半径:2.6m




エンジン型式:BGA1


弁方式:空冷・4サイクル / SOHC2バルブ 単気筒


総排気量:154㎤


内径×行程:56.0mm×62.9mm


圧縮比:9.8


最高出力:10kW〈14 PS〉/8,000rpm


最大トルク:14N・m〈1.4kgf・m〉/6,000rpm


燃料供給装置:フューエルインジェクションシステム


始動方式:セルフ式


点火方式:フルトランジスタ式


潤滑方式:ウェットサンプ式


潤滑油容量:1.1L


燃料タンク容量:12L




クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング


変速機形式:常時噛合式5段リターン


変速比:


 1速…2.750


 2速…1.750


 3速…1.300


 4速…1.045


 5速…0.875


1次減速比:3.181


2次減速比:3,000


フレーム形式:ダイヤモンド


キャスター:24゜50'


トレール:100mm


ブレーキ形式(前/後):油圧式シングルディスク(ABS)/油圧式シングルディスク


タイヤサイズ(前/後):100/80-17M/C 52S / 140/60R17M/C 63H


舵取り角左右:35°


乗車定員:2名




生産国:インド

◼️ライダープロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。

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