SPAプラットフォームによる新世代ボルボラインナップも、今回登場したS60をもってひと区切りとなる。その上位PHVグレードが期待に応える内容か確かめた。
REPORT◉吉岡 卓朗(YOSHIOKA Takuro)
PHOTO◉篠原 晃一(SHINOHARA Koichi)
※本記事は『GENROQ』2020年2月号の記事を再編集・再構成したものです。
SUVがこの10年でポストサルーンとして完全に定着したことは論を俟たない。それでは、かつての主流たるサルーンは今どうなっているかと言えば、次のステージへ進んでいたのである。
アメリカ東海岸のサウスカロライナ州チャールストン工場で生産される、日本における現行ボルボ車唯一(!)のサルーンS60。その立ち位置はかつてのクーペ的座標にあるという。つまり今のSUVがオヤジ的手堅いクルマ(サルーン)ならば、サルーンはスタイリッシュで人生を謳歌するクルマ(クーペ)のような存在に昇華しているというのだ。
なるほど、試乗に供された新型S60は遠目に見ても美しいシルエットで、SUVに慣れてしまうと身をかがめて乗り込むことがクーペと同様の儀式と思えなくもない。今回試乗したのは、最近日本に導入されたDセグメントサルーンS60に追加された上位グレードのT6である。ツインエンジンAWDというミドルネームからもわかるように、後輪をモーターで駆動するAWDプラグインハイブリッドである。
このところボルボ車に触れる機会がなかったのだが、V90に端を発するSPAプラットフォームのお陰で久々に乗っても操作系で戸惑うことはなかった。SPAの導入によって、ボルボのパワートレインはシンプルになった。すなわち出力違いのフロント横置き2.0ℓ直4ターボに後輪を駆動するモーターが組み合わされるか否かである。そういったプラットフォーム共通化は今や世界中のメーカーが採用しているが、ボルボの発想と割り切りは見ていて清々しいほどだ。実際の走りの味にしても、室内の設えにしても、非常に高いレベルにあるのだから何の問題もない。
2.0ℓ直4ターボは最高出力253㎰、最大トルク350Nmで、リヤモーター(最高出力87㎰、最大トルク240Nm)が強力にサポートする。合計出力は340㎰を誇る。組み合わせられるトランスミッションは満足度の高いアイシン製8速ATで期待通りの加速を示してくれる。SPA最初期のV90にあった回生ブレーキのぎこちなさも、このS60 T6では違和感を感じない。価格は約780万円と安くないが最先端のADASは扱やすく、追従クルーズコントロール(ACC)やレーンキープが精度高くアシストし、紛れもない無敵先進安全車感が漂う。
オプションの19インチホイールにはボルボ専用にチューニングされたコンチネンタル製プレミアムコンタクト6タイヤが装着されていたが、スタイリッシュな見た目とは裏腹に乗り心地もよかった。あいにく試乗時間と場所が限られていたため、市街地から出ることは叶わなかったが、ロングドライブに出ても期待どおりの無敵ぶりを発揮するだろう。
〈SPECIFICATIONS〉ボルボV60 T6 AWDインスクリプション
■ボディサイズ:全長4760×全幅1850×全高1435㎜
ホイールベース:2870㎜
■車両重量:2010㎏
■エンジン:直列4気筒DOHCターボ&スーパーチャージャー
総排気量:1968㏄
圧縮比:10.3
最高出力:186kW(253㎰)/5500rpm
最大トルク:350Nm(35.7㎏m)/1700~5000rpm
■モーター 最高出力:Ⓕ34kW/2500rpm Ⓡ65kW/7000rpm
最大トルク:Ⓕ160Nm/0~2500rpm Ⓡ240Nm/0~3000rpm
■バッテリー容量:34Ah
■トランスミッション:8速AT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク
■タイヤサイズ:Ⓕ&Ⓡ235/45R18
■燃料消費量:13.7㎞/ℓ(WLTCモード燃費)
■車両本体価格:779万円