2001年(平成13年)に「エイプ」50が発売。翌年の2002年(平成14年)には、「エイプ50」ベースの100cc原付2種モデル「エイプ100」が登場。排気量アップによってパワーアップした「エイプ100」は、フレーム、スイングアーム、リアホイールなど、各部の強度をアップ。ダブルシート&タンデムステップを装備して、2人乗り仕様にアレンジしているのもポイントだ。最高出力7.0馬力を発揮するエンジンは、扱いやすくて粘り強い走りを実現している。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
2002年(平成14年) エイプ50の兄貴分!100cc版の原付2種モデル「エイプ100」がリリース
49cc=3.7馬力から、99cc=7.0馬力にアップして、ストリートでの“走りやすさ&扱いやすさ”をアップ
エイプとは、英語で「類人猿、猿人、尾のないサル」という意味。人間に最も近い動物という意味であるこのネーミングは、あらゆる人にとって身近な存在であり、気軽に乗れるバイクであることを、親しみやすい語感で表現。
エイプ50が登場した、ちょうど1年後にリリースされたエイプ100は、ストリートはもちろん、カスタムベース、ミニバイクレースなど、様々なシーンで活躍した“走りのCB系”の血統を受け継いだ、縦型エンジンを搭載したスポーツ&レジャーモデルだ。
エンジンは、オフロードレース専用のアグレッシブな「XR100R」がベース。パワーは「XR100R」の9.8psから7.0psにダウンされているが、街中で多用する低中回転域でのトルクを重視した、非常に扱いやすい特性に味付けされている。
モトクロスレース専用モデル「XR100R」は、1990年(平成2年)1月に登場。パワフルな縦型99.2ccエンジンを搭載し、フレームは高剛性のダイヤモンド型、リヤショックは本格的なプロリンク式モノショックを採用。
最大出力は9.8ps/9000rpm、最大トルクは0.81kgm/7000rpmを発揮。ボア×ストロークはエンジンを回してパワーを稼ぐ、53mm×45mm(エイプ50はボア42mm×ストローク35.6mm)のショートストローク型を採用。キャブレターは中口径のPDΦ22がチョイスされている。
●XR100R 主要スペック(2003年モデル)
全長:1870mm/全幅:815mm/全幅:1070mm/ホイールベース:1265mm/乾燥重量:73kg/燃料タンク容量:5.6L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒99.2cc/ボア×ストローク:53.0mm×45.0mm/圧縮比:9.4/最大出力:9.8ps/9000rpm/最大トルク: 0.81kgm/7000rpm/点火方式:CDI式マグネット点火/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤサイズ:前2.50-19 後3.00-16/当時の価格:22万9000円
「エイプ100」と「エイプ50」の大きな違いはココ!
●エイプ100 主要スペック(2002年の初期型)
全長:1715mm/全高:970mm/全幅:770mm/ホイールベース:1190mm/シート高:715mm/乾燥重量:82kg/燃料タンク容量:5.5L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒99cc/ボア×ストローク:53mm×45.0mm/圧縮比:9.4/最大出力:7.0ps/8000rpm/最大トルク:0.71kgm/6500rpm/点火方式:CDI/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤサイズ:前後120/80-12/当時価格:24万9000円(カラーオーダープランは26万4000円)
●エイプ50 主要スペック(2001年の初期型)
全長:1710mm/全高:970mm/全幅:770mm/ホイールベース:1185mm/シート高:715mm/乾燥重量:75kg/燃料タンク容量:5.5L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:42mm×35.6mm/圧縮比:9.2/最大出力:3.7ps/7500rpm/最大トルク:0.37kgm/6500rpm/点火方式:CDI/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤサイズ:前後120/80-12/当時価格:19万9000円(デラックスは20万9000円)
50は3.7馬力だけど、100は7.0馬力!ストリートでは余裕のパワーを発揮
原付2種のエイプ100は、2人乗りできるだけでなく、原付1種にあった「30km/h規制」や「二段階右折義務」からも開放。また、最高出力3.7馬力のエイプ50に比べ、余裕のパワーを誇る7.0馬力のエイプ100は、幹線道路などでもクルマの流れに乗れ、スムーズに走行できるのがポイントだ。
写真はエイプ100が発売になった頃の、懐かしいホンダの広告(月刊モト・チャンプ誌2002年5月号)。エイプ100は、タンデム(2人乗り)も可能なバイクであることをアピール。
当時のカタログにも起用された、モヒカンヘアのメインキャラクターは、ミュージシャンのKAB.☆氏(写真右)。サックスを持ってタンデムシートに座っているのは、レコーディングエンジニアの佐藤氏。
外装・足周り・エンジンのカスタムパーツも豊富な「エイプ100」は、“走り”のチューニングベースにも最適!レースでも大活躍!!
エイプ50と同じく、エイプ100は「Gクラフト」などから発売の社外ステムキットを使えば、ボルトオンでNSR50/80用のフロント周り一式が移植可能。また、各社から発売のキット等を駆使すれば、リアブレーキのディスク化も簡単に行える。
エイプ100のポイントは、“ポン付け”で排気効率がアップするスポーツマフラーやレーシングマフラーに加え、ノーマルの7.0馬力から、10馬力オーバーが期待できる115ccボアアップキット、15馬力オーバーが狙える125ccボア×ストロークキットなどの「エイプ100専用キット(※注1)」が発売されているところ。
キットの中には、吸排気ポートの拡大・燃焼室形状の変更・吸排気バルブを軽量化した「2バルブシリンダーヘッド」、吸気バルブ2本&排気バルブ2本を備えた「4バルブシリンダーヘッド」、カムシャフトを2本備えた「DOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)シリンダーヘッド」など、超高性能タイプが勢揃い。
エイプ100はカートコースでのミニバイクレースはもちろん、国際ロードコースを使用した「DE耐(ツインリンクもてぎで開催)」や「鈴鹿Mini-Moto(鈴鹿サーキットで開催)」などの耐久レースでも大活躍。
絶版となった今でも、中古車市場では、ユーザーの個性を演出するための“カスタム素材”として人気を誇っている。
※注1:エイプ100とエイプ50のエンジンは、ベースが異なるため、カムチェーンテンショナーの構造等、細部が異なるのが特徴。そのため、「エイプ100用」として発売されているエンジンパーツは、エイプ50には装着不可。また、「エイプ50用」として発売されているエンジンパーツは、エイプ100には装着不可。
◆エイプ100の歴史をチェック
2003年(平成15年) デラックスタイプを追加
車体色をブラックとし、ガソリンタンクロゴにはウイングマークを採用。ヘッドライト、ハンドル、トップブリッジにメッキパーツを採用するとともに、クランクケース、シリンダーヘッドカバー、フロントフォークボトムケースにバフ掛けを実施。ホイールはシャンパンゴールドとし、高級感溢れるイメージに仕上げている。
2004年(平成16年) リバーサイドブルーを採用
継続色のクラシカルホワイトに加え、新たにリバーサイドブルーを採用。また、ユーザーの好みに合わせ、タンク、フレーム、サイドカバー及びフロント・リアフェンダーの組合せが選択可能な「カラーオーダープラン」には、新たに15タイプを設定。2003年1月に発売した高級感あふれるデラックスタイプ1タイプを加え、全18タイプの豊富なバリエーションとした。
このモデルより、車名が「エイプ100」から、“中黒(・)のある”「エイプ・100」に変更されている。
2005年(平成17年) プラズマイエローを追加。デラックスは2種類の新色
既存のクラシカルホワイトとリバーサイドブルーに加え、鮮やかなプラズマイエローを追加。「エイプ・デラックス」は、フレームにファイティングレッド、ホイールにはマグテックゴールドメタリックのカラーリングを採用。また、前後のフェンダーや燃料タンク、サイドカバーに、シャスタホワイトとブラックの2色を設定。さらに、燃料タンク側面のロゴを「Hondaウイングマーク」から「HONDA」に変更するとともに、サイドカバーにもストライプを施すことで、スポーティなイメージとしている。
2006年(平成18年) レッドとブラックを追加。デラックスは2種類の新色
鮮やかなファイティングレッドと精悍なグラファイトブラックを新たに採用し、清涼感漂うクラシカルホワイトと合わせて3色の設定とした。
デラックスは、燃料タンクとサイドカバーにツートーンのカラーリングを採用した、シャスタホワイトとプラズマイエローの2色を設定。シャスタホワイトでは、フレームをファイティングレッド、プラズマイエローではブラックとすることで、よりスポーティなイメージとしている。
さらに両カラーとも、シートをブラックとグレーのツートーンとし、前・後ホイールをブラックのカラーリングとすることで、足回りをより引き締めたイメージに仕上げている。
2008年(平成20年) カラーリングを変更
鮮やかでスポーティ感あふれるプラズマイエローを採用。クラシカルホワイトと合わせて2色の設定とした。デラックスは、燃料タンクとサイドカバーにストライプを施し、クラシカルな雰囲気を持たせた、デジタルシルバーメタリック、インディーグレーメタリック、グラファイトブラックの3色を新たに設定。前・後ホイールをゴールド塗装とすることで、高級感を持たせている。
2008年(平成20年) 「ドリームCB750FOUR」をイメージしたスペシャルモデルを限定発売
往年の名車「ドリームCB750FOUR」をイメージさせるカラーを受注期間限定。カラーリングには、パールコーラルリーフブルーを採用するとともに、クロームメッキヘッドライトカバーやパイピング付きツートーンシート、高級感あふれるゴールド塗装の前後ホイールなど、装備を充実させている。
2008年(平成20年) エイプ100の最終モデル。触媒装置(キャタライザー)を装備。前後にディスクブレーキを採用した「エイプ・100 Type D」も追加
キャブレターのセッティングの最適化を図り、より適正な混合気の供給を可能にするとともに、排気ガスを浄化する触媒装置(キャタライザー)をエキゾーストパイプ内に2個採用することなどで、平成19年国内二輪車排出ガス規制に適合。また、バッテリーを新たに装備することで、盗難抑止に効果的なアラームキット(ホンダアクセス製/別売)の装着を可能とした。
燃費は、55.0km/L(60km/h定地走行テスト値)を達成し、従来モデルに比べ1.8km/Lの向上を図っている。車体色は、シャスタホワイトとファイティングレッドの2色を設定。それぞれ、前・後フェンダーと左右のサイドカバーの色をブラックとすることで、引き締まった外観を演出。シートは高級感のあるブラックとグレーのツートーンタイプを新たに採用している。
新たに追加された「エイプ・50 Type D」は、「エイプ・50」をベースに、前後輪に制動性・コントロール性に優れた油圧式ディスクブレーキ。また、後期型のNSR50/80やNSF100と共通のアルミ製キャストホイール(6本スポークタイプ)を採用し、スポーティな仕様に仕上げている。車体色は3色を設定し、それぞれ斬新なストライプを燃料タンクとサイドカバーに採用。シートは、「エイプ・100」と同様のツートーンタイプとしている。