SPCCI(火花点火制御圧縮着火)を実用化した革命のエンジン「スカイアクティブ-X」の日本仕様のエンジンスペックが公表された。欧州仕様では16.3だった圧縮比は15.0まで下げられたが、最高出力と最大トルクはまったく同じ数値を実現。加えて、WLTCモード燃費や価格もアナウンスされた。まずは明らかになった数字をわかりやすく整理してみよう。
REPORT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)
革命のエンジンを得て登場したフラッグシップ・グレード
ついにマツダ3のスカイアクティブ-X搭載車の詳細が明らかになった。試乗インプレッションはあらためてレポートをお送りするが、ここでは明らかになったスペックを簡潔にまとめてみたいと思う。
まず、欧州仕様では16.3というガソリンエンジンとしては抜群に高い数値を誇っていた圧縮比は。ひとまず15.0に抑えられた。それでも依然として高いことは確かで、さらに驚くべきことに最高出力や最大トルクといったエンジンスペックは欧州仕様と変わらない数値をキープしてきた。
これは、ひとあし先に発売された欧州仕様が、世界初のSPCCI(火花点火制御圧縮着火)採用市販車としてマージンを取って控えめの数値に抑えてきたからであり、スカイアクティブ-Xの本来の実力をもってすれば15.0の圧縮比でも十分に引き出せるものだという。
そして周知の通り、スカイアクティブ-Xはマイルドハイブリッド(M Hybrid)と組み合わされる。ベルトドリブン・インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター(ベルト式ISG)を採用し、減速エネルギーの回生とモーターによるエンジンをアシストすることで燃費を向上させるもので、アイドルストップからの静かなエンジン始動も可能とする。さらにMT搭載車には、様々な形でドライビングをアシストする機能も盛り込まれているのだが、これについてはまた別記事で紹介したい。
では、詳細なエンジンスペックをご覧いただこう。
■エンジン
型式:HF-VPH
形式:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:1997cc
ボア×ストローク:83.5×91.2mm
圧縮比:15.0
最高出力:132kW(180ps)/6000rpm
最大トルク:224Nm/3000rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
使用燃料:無鉛プレミアム(RON 100)
■モーター
型式:MK
形式:交流同期電動機
最高出力:4.8kW(6.5ps)/1000rpm
最大トルク:61Nm/100rpm
最高出力と最大トルクをマツダ3のほかのエンジンと比べてみると下記のようになる。
■最高出力
ガソリン 1.5L:111ps/6000rpm
ガソリン 2.0L:156ps/6000rpm
ディーゼル 1.8L:116ps/4000rpm
スカイアクティブ-X 2.0L:180ps/6000rpm
■最大トルク
ガソリン 1.5L:146Nm/3500rpm
ガソリン 2.0L:199Nm/4000rpm
ディーゼル 1.8L:270Nm/1600-2600rpm
スカイアクティブ-X 2.0L:224Nm/3000rpm
最高出力はシリーズ中トップで、最大トルクはディーゼルに次ぐ数値となっている。
そして燃費は下記の通りだ。
●MAZDA3 SKYACTIV-X 2WD 6速AT
WLTCモード:17.2km/L
市街地モード:13.7km/L
郊外モード:17.6km/L
高速道路モード:19.0km/L
●MAZDA3 SKYACTIV-X 2WD 6速MT
WLTCモード:17.4km/L
市街地モード:14.1km/L
郊外モード:17.6km/L
高速道路モード:19.2km/L
●MAZDA3 SKYACTIV-X 4WD 6速AT
WLTCモード:16.2km/L
市街地モード:12.7km/L
郊外モード:16.5km/L
高速道路モード:18.1km/L
●MAZDA3 SKYACTIV-X 4WD 6速MT
WLTCモード:16.8km/L
市街地モード:13.6km/L
郊外モード:16.9km/L
高速道路モード:18.6km/L
燃費に関しては早くも公道で計測し、1.8Lディーゼルや2.0ガソリンと比較してみたので、25日夕方に記事公開予定のレポートをご覧いただきたい。
最後に価格をまとめてみよう。
●X PROACTIVE(ファストバック&セダン)
FWD:319万8148円
4WD:343万4648円
●X PROACTIVE Touring Selection(ファストバック&セダン)
FWD:331万9148円
4WD:355万5648円
●X L Package(ファストバック&セダン)
FWD:338万0463円
4WD:361万6963円
●X Burgundy Selection(ファストバック)
FWD:345万1963円
4WD:368万8463円
これは、同等グレードと比べると、2.0Lガソリンよりも約70万円、1.8Lディーゼルよりも約40万円ほど高い設定だ。これを割高と見るか妥当と見るか割安と見るか……個人的にはこの価格差は内燃機関の革命とも呼ぶべきSPCCI(火花点火制御圧縮着火)の市販化に見合うものだと考えるが、今後さまざまな意見が飛び交うことになるのは間違いない。