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【VFR800F試乗】官能的な音と加速感にズバリ惚れた! ハイパーVTECって何者だ?|ホンダ


VFシリーズから脈々と継がれるスポーツマインドは37年経った今も健在! V型4気筒エンジンを含めて、地に足を付けた実直なスペックアップを果たし、独自の持ち味を遺憾なく発揮する。CBRとともにホンダスポーツの歴史を歩み続けた“名役車”の現行モデルの乗り味やいかに!?




REPORT:川越 憲(KAWAGOE Ken)


PHOTO&EDIT:佐藤恭央(SATO Yasuo)

インターセプターのシンボルカラーであるトリコロール(パールグレアホワイト)を採用。他に真紅のヴィクトリーレッドもラインナップ。

VFR800F(パールグレアホワイト)……1,522,400円

VFR800F(ヴィクトリーレッド)……1,445,400円

 実車を見た時は、思わず「おおっ」と唸ってしまった。青×赤×白のストライプカラーに「INTERCEPTOR」のロゴも入ったカラーリングは、1980年代に北米で発売されていたVFR750Fインターセプターを彷彿させる。レジェンドライダーの一人であるフレディ・スペンサーが1983年AMAスーパーバイク選手権で優勝したことを皮切りに、WGPに参戦する前のウエイン・レイニーやバハ・ショバートが大活躍。アメリカでのインターセプターの名は、最速ブランドとして今でも語り継がれている。




 ただ、北米では大人気となったものの、V型4気筒エンジンは日本で受け入れられてきたとは言えない。大きな要因は、迫力に欠ける排気サウンドと、シリンダーの配置によりどうしてもエンジンの熱がライダーに負担をかけてしまったからだ。直4のフォーンッ!と抜けるようなエキゾーストノートに対して、V4のメカニカルで少しバタつくような音質ははっきりと好みが分かれた。一方で、性能面では明らかに直4よりもトルク特性や最高出力で勝っていた。技術的にもV4は機構が複雑で、チャレンジ精神を重視するホンダとしてはこのV4エンジンを主流にレーシングマシンの開発や市販車のラインナップも充実させていくだろうと思われた。実際に2スト、4スト問わず、レーサーはV4エンジンを主流に搭載し、1990年代のレースではホンダのマシンが様々なレースタイトルを席巻したのだ! しかし、この実績は市販車の販売増には結び付かなかった……。もちろん、根強いファンがいて、VFRシリーズは1200→800ccと排気量を変更しながら継続してリリースされている。現行のVFR800Fは2014年にモデルチェンジされ、ハイパーVテック、トラクションコントロール、ウインカーオートキャンセラー、LEDライト等を搭載するほか、オプションでクイックシフターを用意するなど「走る実験室」との異名に相応しい最新メカが導入されている。

今こそV4エンジンの魅力を体感すべき時!

 見た目はボリュームがあるのに、またがってみるとV型エンジンの特性を生かしてボディがスリムなため、意外なほど足着き性がよい。スポーツツアラー的な位置づけなので、前傾姿勢は強くないが、自然なスポーツライディングのポジションがとれる。ギュッとエンジンを中心にメカが絞り込まれた密度の濃いパッケージは、VFRシリーズに共通した印象だ。




 エンジンをかけると、排気音はメカニカルノイズが先進的で、マフラーが最新の騒音規制に対応しているためか、以前に感じていた線の細さが無く、重量感のある排気サウンドだった。クラッチは重めなので、長距離ツーリング等を主体とするなら、できればオプションのクイックシフターを付けたいところだ。


 特筆したいのがスロットルに忠実に反応する加速感。フューエルインジェクション搭載車にありがちな過敏さが無く、キャブレター搭載車のように自然なのだ。低速からドンドンと押し出すようにトルクがあり、ストップ&ゴーの多い街中の走行も楽しい。


 ハンドリングは安定志向。フロント荷重が強く切り返しは少し粘るが、振動が少なく直線もコーナリング時もタイヤの接地感が高いので、走るステージを問わず安心してバイクのポテンシャルを引きだす走りが楽しめる。




 VFRのアイデンティティであるハイパーVテックは低・中回転域は2バルブで高回転域になると4バルブに切り替わる仕組みだ。7000pm手前くらいで排気音が変わり、8000rpmあたりから高回転の加速がグンと底上げされるようなフィーリングが体感できる。レッドゾーンまで一気に到達し、ガオッと唸る排気音と、シューンというメカニカルノイズが重なり合ったサウンドは、これぞV4と堪能できること請け合いだ。個人的には、ホンダが目指したスポーツバイクの方向性はココにあると思わずにはいられない。




 絶対的なスピードはCBRシリーズに譲るだろうが、耐久レース的なロングツーリングなら、疲労の少なさやアベレージスピードの高さ、扱いやすいエンジン特性により、VFRに軍配が上がるシーンも多いだろう。

「HYPER VTEC」って?

ホンダの可変バルブ機構「VTEC」。これを発展させた「HYPER VTEC(V4 VTEC)」がCF400SF(1999年~)と2002年以降のVFRシリーズに採用されている。これはロッカーアームを介さない直押しタイプのバルブ制御を実現したもので、1シリンダー(4本)のバルブを低回転域で2つ停止させて吸気排気を各1ポートで行う。


バルブを閉じることで吸気効率を上げてトルク感や加速力アップを狙い、6400rpmを境に4つのバルブが作動し、さらに直押しによるバルブ自体の動荷重が軽くなる効果もあって、より高回転域での追従性を高められる! CBR400Fからスタートした、2バルブと4バルブのメリットを両立する「REV」機構からVTECが生まれ、それを飛躍的に進化させたのがHYPER VTECとなる。

足つきチェック(ライダー身長182cm)





フルカウルモデルなので見た目に大きく感じるが、ライディングポジションは意外にコンパクト。タンクやエンジン周りがスリムなので、シートがスタンダードポジション(高さ809mm)でも足着き性は良好! ロングツーリングメインなら、ハンドル位置を少し手前にオフセットするカスタムを施したい。

ディテール解説

フロントブレーキはモノブロック対向4ポットのラジアルマウントキャリパーに、Φ310mmのダブルディスクを採用。スポーク部交差形状のキャストホイールは二輪車世界初採用。フロントフォークのアウターチューブはアルミ削り出し製。

VFRシリーズのアイデンティティともいえる片持ち式のスイングアーム。アーム部はスーパースポーツタイプと同形状のやぐら型にし、ねじれ剛性のバランスを最適化している。

2017年モデルで内部構造を3室から2室に変更した異形テーパー形状マフラーを採用。従来モデルより迫力があり、歯切れの良い排気サウンドとなった。

ハンドルは前傾の緩やかなセパレート式を採用。多機能ながらコンパクトに設計されたメーターによりスッキリとまとめられている。

センターにアナログ式の回転計を置き、左右に液晶ディスプレイを配置したレイアウトはVFR1200Fから引き継がれている。ギヤポジションや燃費計、グリップヒーターの5段階表示なども組み込まれている。
ウインカーやライトのハイ・ロー切り替え、ホーンスイッチのほか、グリップヒーターのリモコン、トラクションコントロールオンオフスイッチなど、左スイッチボックスに機能を集中させている。


いち早くヘッドライトにLEDを採用したほか、ウインカーをミラー一体型にするなど、高級スポーツツアラーのスタイリングを確立した。

LEDテールランプとウインカーを一体化したコンビライトデザインは歴代VFRシリーズから引き継がれたデザインコンセプト。

シートは前後分割式で、ライダー側のシート高はスタンダード(809mm)とローポジション(789mm)が選べる。

ナビなどの電源が取りやすい左カウル上にアクセサリーソケット(12V3A)を装備。シート下などに電源を増設できるようオプションの純正アクセサリーソケット(1万1000円)も継続して販売されている。
リヤシート下にはETC車載器や車載工具が収納できるスペースを確保。デザイン優先のため容量自体は多くない。


クラッチは重めだが、シフトペダルの操作のみでシフトアップできるクイックシフター(2万1450円)がオプションとして装備できる。

■主要諸元■

車名・型式:ホンダ・2BL-RC79


全長(mm):2,140


全幅(mm):750


全高(mm):1,210


軸距(mm):1,460


最低地上高(mm):135


シート高(mm):809/789


車両重量(kg):243


乗車定員(人):2


燃料消費率*1(km/L):


 国土交通省届出値定地燃費値 (km/h)…28.7(60)〈2名乗車時〉


 WMTCモード値(クラス)…19.2(クラス 3-2)〈1名乗車時〉


最小回転半径(m):3.2


エンジン型式:RC79E


エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブV型4気筒


総排気量(㎤):781


内径×行程(mm): 72.0×48.0


圧縮比: 11.8


最高出力(kW[PS]/rpm):79[107]/10,250


最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):77[7.9]/8,500


燃料供給装置形式:電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉


始動方式:セルフ式


点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火


潤滑方式:圧送飛沫併用式


燃料タンク容量(L):21


クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング式


変速機形式 常時噛合式6段リターン


変速比:


 1速…2.846


 2速…2.062


 3速…1.578


 4速…1.291


 5速…1.111


 6速…0.965


減速比(1次/2次):1.939/2.687


キャスター角(度):25° 30′


トレール量(mm):95


タイヤ:


 前…120/70ZR17M/C(58W)


 後…180/55ZR17M/C(73W)


ブレーキ形式:


 前…油圧式ダブルディスク


 後…油圧式ディスク


懸架方式:


 前…テレスコピック式


 後…スイングアーム式(プロリンク)


フレーム形式:ダイヤモンド(アルミツインチューブ)




■製造事業者/本田技研工業株式会社

●ライダープロフィール

川越 憲




1967年生まれ。有限会社遊文社・代表取締役にしてバイク誌を中心に活動するフリーライター・編集。現在所有するバイクはBMW R1150GS・BUELL XB9SX・TZR250(1KT)・NSR250R(MC18)etc.。 趣味は草野球、バレーボール、映画鑑賞(16mm映写技師免許所持)。

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