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牧野茂雄の【深層レポート】in-depth reporting


ことし7月、中国政府はNEV(ニュー・エナジー・ビークル=新エネルギー車。中国語では新能源車)クレジット制度の改正案を発表した。従来は1台販売すると最大5クレジットを得られたBEV(バッテリー電気自動車)は最大3.4クレジットに引き下げられ、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)およびFCEV(燃料電池電気自動車)も含めたNEV全体での補助金交付を2020年末で打ち切るという内容だった。2018年7月以降、1年以上にわたって冷え込みが続いている中国国内の新車販売事情を考慮すれば、いまなぜこの時期に、と思う。中国の国営自動車メーカーでさえ、この案には不快感を示した。

 しかし、中国政府が強気一点張りかと言うと、そうでもない。現在、中国政府は通常のガソリン/ディーゼルエンジン車(中国政府は伝統的車両と呼ぶ)の中で一定以上のモード燃費値を示すモデルを優遇する方向で検討している。NEV規制とは別に実施しているCAFC(コーポレート・アベレージ・フューエル・コンサンプション=企業別平均燃費)規制の中で「燃費優秀車」を優遇する案だ。




 CAFC規制値は現在、5ℓ/100km(日本式の表記では20km/ℓ)だ。自動車メーカーごとに「個別モデルごとの政府審査モード燃費×そのモデルの販売台数」をすべて合計し、総販売台数で割った「その自動車メーカーの販売平均燃費」、つまりCAFC値をこの5ℓ/100km以下に抑えなければならない。規制値を達成できない場合は、燃費の悪いモデルから順に製造販売許可が取り消される。この平均燃費規制と、各自動車メーカーおよび輸入元に一定比率のNEV販売を義務付けたNEV規制が行われている。つまり二重規制である。

新車販売が急増した2003年以降、中国政府はガソリン小売価格の高騰を抑えるために国庫から中国石油など石油元売に対し補助金を交付していた。この負担が過大になったことがNEV規制につながったとも言える。現在は硫黄分が少ない「国5」燃料が市販されているはずだが、そのおおまかな流通量さえも、あまり伝わってこない。

 中国政府としてはNEVを絶対に普及させたい。ねらいは原油輸入を減らすことだ。同時に、中国国内の2次電池メーカーが世界中にリチウムイオン電池や電動モーター、制御系などを世界じゅうに売る。年間3,000万台に迫る自動車消費大国になった中国にとって、自動車燃料のための原油輸入は国家の大きな負担になった。自動車産業の活力を維持したまま原油輸入を減らすには自動車の電動化がもっとも有効な手段である。世界規模で電動車のサプライチェーンを握り、大きな影響力を持つ。NEV普及によって増える電力需要は原子力発電でまかなう。これが中国政府が描く自動車強国の姿だろう。

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