日本を守る陸・海・空自衛隊には、テクノロジーの粋を集めた最新兵器が配備されている。普段はなかなかじっくりみる機会がない最新兵器たち。それらの自衛隊最新兵器を集めたムック「自衛隊新戦力図鑑」(三栄刊)を制作した。ここでは、そのなかからいくつかを紹介しよう。最終回はV-22オスプレイだ。
米空軍や海兵隊で運用されている垂直離着陸機V-22オスプレイ。本機は回転翼機のように垂直離着陸が可能で、その場に滞空するホバリングもできる。また水平飛行モードに切り替えれば、固定翼機の速度が出せる。航続距離も回転翼機以上のスペックを持ち、空中給油も行なえるから滞空時間と航続距離を大幅に延伸させることに成功した。
陸上自衛隊でもオスプレイを導入する。現在、少数の陸自パイロットが渡米し、さまざまな訓練を行なっている。本誌ではそのようすを捉えた写真を掲載している。まず、陸自仕様の本機のカラーリングに注目だ。薄いブルーに塗装されている。これは「洋上迷彩」を意味していて、つまり陸自は洋上飛行での運用を考えているということ。これは島嶼防衛で使うことを示すものだ。
オスプレイのメリットは垂直離着陸性と固定翼機同等の高速性だ。九州や沖縄本島などの拠点で人員を乗せ、洋上を高速で飛び、離島へ舞い降り、防衛作戦を展開する。こうした運用方法を想定しているからこその「洋上迷彩」だ。
防衛省はオスプレイ取得の目的として、島嶼部に対する攻撃への対応を念頭に、迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保し、実効的な対処能力の向上を図るためとしている。また、現在陸自が保有しているCH-47JAヘリの輸送能力を巡航速度や航続距離の観点から、航空輸送能力を補完・強化することも目的としているのだ。積載能力は人員約24名を収容して輸送可能。1機で陸自普通科2個分隊程度を空輸することができる。つまり本機は遠距離から固定翼機同様に高速飛行で到達、目的地へ垂直離着陸し、部隊を広範囲かつ迅速に展開させることができる唯一の航空機なのだ。
一方、オスプレイの荷物搭載量は約9トン。他の輸送ヘリと比べて少なく、荷室も狭いことから車両や大型機材を積むことはできない。人員の急速輸送に特化しているのだ。しかし島嶼防衛で、必要な人員を急速に運ぶ必要のある局面は多いと思われる。水陸機動団や第1空挺団など高スキル勢力の集中的投入が必要な状況は充分に考えられる。同時に、負傷者の後送の必要性も発生するだろう。これに関連して、平時にオスプレイのメリットが光るのは離島間の急患空輸だ。高度救命設備のない離島で発生した傷病者などを空輸、広域搬送するのだ。現在も日夜、沖縄本島の陸自ヘリ部隊が担っている急患空輸に、垂直離着陸可能で高速なオスプレイが使われるようになれば、救命率の向上が望めるのだ。