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〈試乗記:新型ホンダN-WGN〉これがベーシックカーの新基準


「N for you!」 みんなに寄り添うパートナー……言葉にするのは簡単だがカタチにするのは難しい。そんな奥の深い課題にとことん向き合ったのが新型N-WGNだ。シンプルだけど味わい深い。新世代Nシリーズの第三弾は本質を磨き上げて登場した。




REPORT●岡本幸一郎(OKAMOTO Koichiro)


PHOTO●井上 誠(INOUE Makoto)




※本稿は2019年9月発売の「新型N-WGNのすべて」に掲載されたものを転載したものです。

座った瞬間からスッと馴染む考え尽くされたつくり

 生活にいちばん大切なものを見極め、そこにとことんこだわると、毎日はさらに心地良くなる。「New Simple!」というメッセージには、日常的にクルマを使うひとり一人にとって毎日の「大切」にこだわった、そんなクルマづくりへの思いが込められている。そのために、デザイン、使い勝手、安全性能、運転のしやすさにこだわった。




 デザインでは、ふたつのシンプルな世界観を表現。標準車は本質にこだわることで、暮らしに馴染むことを目指した。カスタムはシックで上質かつ洗練された装いをコンセプトとしている。ボディパネルに余分なラインをあえて配さず、面の抑揚だけで表情をつくっているのも新しい。




 標準車とカスタムでは見た目の印象が大きく違い、双方が独自の個性を発揮している。あまり印象に残らなかった初代と違って、それぞれのキャラが立ったように思える。




 インテリアは、標準車はブラウン、カスタムはブラックを基調にまとめられており、初代よりも大幅に質感が高まったことが見て取れる。




 運転席に収まると、運転しやすさを念頭に見直したというドライビングポジションの良さと、良好な視界を実感する。シートはバネ構造を変更し、表皮を伸びの良いものとしたほか、内部のウレタンの密度を上げたことで、座ると柔らかいが荷重が掛かっても底付き感がなく、ソフトだが腰やお尻の保持性能が高く安定感がある、身体を包み込むかのような着座感も申し分ない。




 フットペダルについても、N-BOXより位置を右側に寄せたり段差を縮小してペダルを踏み替えやすいようにしたほか、フロアの高さを上げて自然なドライビングポジションで運転できるよう操作性の向上を図るなど最適化された。おかげで座った瞬間から自然にしっくり馴染むように感じられた。




 また、ステアリングにチルトだけでなくホンダの軽として初めてテレスコピックが付いたのも新型の特筆点だ。一般的に軽自動車は小柄な人に合わせて設定されていることが多いのだが、おかげで身長の高い人でもちょうど良く調整できるようになった。これにはアップライトなN-BOXに比べ、寝かせ気味とされたポジションを最適化するためには必要との判断もあったようだ。




 開発関係者によると、どんな体格の人が座っても適切なポジションが取れるよう、気が遠くなるほど多くの人を座らせて検証したのだという。その甲斐もあってか、シートのヒップポイントの高さやドア開口形状も良好で、乗り降りする際にもなんら気になることはない。




 視界については、できるだけピラーを細くしたほか、ワイパーをフロントガラス下に収納したことで良好な視界を得ている。また、車両感覚がつかみやすいよう、ウインドウ下端を水平なラインとすることにもこだわったという。




 室内空間は十分に広く、ユーティリティ面も多岐にわたり進化している。くまなく設けられた収納スペースは日々の生活で使う上でも重宝しそう。従来も好評だった後席アンダートレイは、濡れた傘などを入れて汚した時も簡単に外して掃除できるようにするなど細かいところも進化している。




 荷室も大きく変わり、独自のセンタータンクレイアウトにより実現したリヤフロアの低い部分をよりしっかり使い切れるよう進化した。具体的には、テールゲート開口部の下端が従来よりも180㎜も低められたことで、重い荷物や高さのある荷物を載せやすくなった。また、付属のボードにより上下2段に積み分けられるようにされたことで、シーンに合わせてアレンジできるようになったのも新しい。毎日の生活で使うにも重宝しそうだ。

歴代のホンダ軽シリーズの系譜を受け継ぐ丸目が印象的な標準車。「眉毛」のようなウインカーが表情をキリリと引き締める。片やカスタムは9連フルLEDヘッドライトでサイバーな雰囲気を醸し出す。ウインカーは外側へ向かって流れるシーケンシャルタイプを採用する。

使いやすさと心地良さが融合したインテリア。ステアリングにはホンダの軽で初めて前後の調整機構が備わり、自然なポジションを取りやすい。シートはたっぷりとした掛け心地が身体を優しく包み込む。標準車は写真のアイボリー×ブラウンカラーで、カスタムでは抑揚ある造形のブラック×チタンカラーシートとなる。

加減速に不自然な動きは皆無 スムーズかつ意のままに走る

 走りに関して、機構的にはすでに多方面で評価されている現行N-BOXとの共通性が高いわけだが、新型N-WGNの方が車両重量が軽くて重心高が低く、後発ゆえに実現できたことも増えているはずで、さらに進化していてもなんら不思議はないのだが、その仕上がりの良さは想像をずっと超えるほどであったことを、あらかじめお伝えしておこう。




 具体的には、アクセル、ブレーキ、ステアリングのすべての操作に対して、とてもリニアでスムーズに動くことがまず印象的だ。




 パワートレーンは基本的にN-BOXと同じだが、CVTの変速制御が見直されたのが大きい。考え方としては、エンジン回転を一気に上げるのではなく、よりリニアな加速が得られるようアクセルを踏んだ時にGをしっかり立ち上げ、そのGができるだけ継続するように、さらにはどのアクセル開度でも同じような感覚が得られるようにしたという。実際、CVTにありがちなエンジン回転が上で張り付いてしまう症状が見事に払拭されリニアな加速フィールに仕上がっているので、自然吸気、ターボともとても乗りやすい。




 動力性能は、やはりターボの方が圧倒的にパワフルで、ターボラグも小さくて扱いやすく、高速道路をよく使う人に向くのは言うまでもないが、一方の自然吸気もなかなかのもの。自然吸気らしいリニアなレスポンスに加えて、中〜高回転域に掛けての伸びやかな吹け上がりが気持ち良い。平坦な市街地であれば“ECON”ONでも全然不満はない。




 これに付随してお伝えしたいのが、N-BOXと違って「L」レンジが「S」レンジとされたことだ。「L」ではエンジンブレーキや駆動力が強過ぎて使い勝手がよろしくなかったところ、「S」では“ちょっと足りないのでもう少し加速させたい”という時に気軽に切り替えて使えるようになった。おかげでゆるい登坂のような状況でも、「S」を選べば自然吸気でもあまりストレスを感じることなく走れるようになった。




 ブレーキにステップダウンシフト制御を採用しているのも特徴のひとつだ。これはブレーキを踏んだ時に自動的に最適なエンジンブレーキが掛かるよう、車速により3段階で強めていくというもの。下り坂でも一気にエンジンブレーキを効かせるのではなく、徐々にゆるやかに違和感なく効かせるので、車速をコントロールしやすい。




 また、街中などで一度減速してから再加速する際や、コーナリングして横Gを検知するとエンジン回転を高くキープして次の加速に備えてくれる。あらかじめダウンシフトしているので、ギクシャク感がほとんど気になることはない。新型N-WGNの走りがスムーズに感じたのにはこれらの要素も大きいようだ。




 また、減速して停止する間際も、他車ではギクシャクした動きを見せるものがあるが、N-WGNは極めてスムーズにつくり込まれている。そのあたりも燃費との兼ね合いで苦労して煮詰めたとのこと。一連の制御は日常のいろいろな使われ方を想定してセッティングしたとのことで、その甲斐あって素晴らしい完成度に仕上がっていると感じられる。

N-BOX譲りの低床ラゲッジフロアを活かし、ボードによって上下2段に使い分けられるようにしたのが新型N-WGNのポイント。上段だけでもこのクラスの標準的なスペースはあるから、ラゲッジスペースがもうひとつオマケに付いてきたようなおトク感がある。

傘、タオル、長靴など濡れモノでも気兼ねなく置けて好評だった後席下のアンダートレーは新型でも健在。今度はトレー自体が簡単に外せるようになり、丸洗いもできるようになった。

VTECを有する自然吸気仕様はクラス随一のパワフルさを誇り、「これで十分」と思わせるだけの実力を誇る。そしてそれを上回るゆとりがターボの魅力で、燃費も自然吸気に迫る数値を発揮する。

滑らかかつ操作した通りの自然なクルマの動きに感心

 新型N-BOXが登場した時、操縦安定性の高さに衝撃を受けたのもまだ記憶に新しいが、新型N-WGNはそれを超えるインパクトがあった。優しい乗り心地と素直なハンドリングによる、とにかくスムーズで快適な走りが好印象だ。




 新たに採用したものとして、サイドフォースキャンセルが挙げられる。これはダンパーに対してスプリングをオフセットさせてダンパーフリクションを低減させるための手法だが、スペースに制約のある軽自動車では上手く収めるのが簡単ではない。実はもともとN-BOXでもいくらかやっていたそうだが、N-WGNではより適切な角度にすることができたという。これにより得られたものは小さくないようで、N-WGNの快適な乗り心地と自然な車両姿勢の実現にひと役買っていることに違いない。




 電動パワステの制御ロジックも、実測値に基づいて制御する方式に変更された。これまでの、モーターの抵抗値から舵角を推定する方式では切る速度によっては制御の遅れがあったことは否めないが、新たに採用した舵角センサーの信号を正確に拾ってダイレクトに出す方式であればそれがない。これにより操舵力がスムーズに高まっていくリニアなステアリングフィールを実現している。




 開発関係者は、いかにスムーズにヨーとロールをつなげるか、思い通りの車両姿勢を実現するにはどうしたらよいかにこだわったと述べていたが、その言葉通り新型N-WGNは、かつて軽自動車では味わったことのないほど巧みに仕上げられていることに感心する。




 足まわりに突っ張った感覚はなく、中立から微妙にステアリングを切り始めた領域から、まさしく操作した通りにきれいに回頭していく。応答遅れもなく、電動パワステにありがちな粘っこい感覚もなく、なんら違和感はない。低い速度域から減衰のコントロールが非常に緻密にできている感覚があり、クルマを動かして止めるまでの一連のことが理想に近い形でできているように思えたほどだ。これぞ“意のまま”の走りではないかと思う。




 アジャイルハンドリングシステムについては、求めたクルマの性格に合わせて俊敏性よりも安定性にふった制御としたという。四輪の接地感も高く、しなやかに路面を捉える感覚がずっとあるので、安心してドライブできるのも良い。試乗日はドライだったが、滑りやすい路面や荒れた路面でも変化が穏やかになるとのことで、よりそのありがたみが感じられるに違いない。




 試乗した車両のタイヤサイズは14インチと15インチだったが、14インチ仕様は街中での扱いやすさを、15インチ仕様は走りの楽しさや高速道路での安定性を追求するという具合に想定する主なシーンが異なり、それに合わせて足まわりの味付けも差別化されている(2WD車のみ)。




 むろんタイヤ銘柄は同じでもサイズが違えば特性もだいぶ異なり、硬い15インチでは乗り心地を確保するためバネレートを下げるとともに減衰の特性を最適化するなどした。すると足まわりが柔らかくなるので、フロントだけでなくリヤにもスタビライザーを入れて安定性を上げたというのが大まかな方向性だという。




 ドライブすると、乗り味にはそれぞれの良さがある。14インチは素直な走り味が印象的で、とてもクルマの動きがつかみやすいところが良い。15インチは、これでも硬いという人もいるだろうが、ピタッとフラット感のある走りが好印象。俊敏なハンドリングも相まって、積極的に走りを楽しめる味付けといえる。




 その他にもN-BOXからの進化点がいくつかある。例えば電子制御パーキングブレーキに加えて、ホンダ軽初のオートブレーキホールド機能が付いて、停止状態でブレーキを踏み続ける必要がなくなった。さらには、全車標準装備のホンダセンシングも機能が向上し、夜間歩行者や横断自転車の検知能力が高められたほか、ACCは停止まで追従できるようアップグレードされ渋滞にも対応できるようになった。装備面でも現状で考えられる限りのものが与えられている。




 とにかく何から何まで感心の連続だった。「日本のパーソナルな日常を心地良く、ベーシックカーの新基準をつくる」と謳った新型N-WGNは、そのフレーズに偽りない、本当に恐るべき完成度であった。



N-BOX/N-VANに次いでACCを搭載。しかし、N-WGNでは電動パーキングブレーキを搭載したことに伴い、ホンダの軽自動車で初めて完全停止の渋滞対応にグレードアップしたのが目玉だ。レーンキープアシストの作動範囲は65㎞/h以上だが、長距離ドライブの疲労は格段に軽減されるはずだ。

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