レクサスの新クロスオーバーモデル「UX」。新世代技術を満載し、コンパクトハッチ「CT」に次ぐレクサスのエントリーモデルとなるだけに注目される一台だ。レクサスは新たなライフスタイルを探求するモデルとしてこのUXを開発したというが、果たして……。
REPORT&PHOTO●大音安弘(OHTO Yasuhiro)
レクサスの最新モデルであるUXは、これまでSUVに与えられてきた「X」が記されているが、それら兄貴分とは異なり、クロスオーバーであることを明言している。兄貴分たちとは、そもそも立ち位置が異なるというわけだ。
最も分かりやすいのがディメンションで、全長4495mm×全幅1840mm×全高1540mm。プラットフォームを共有する同じくクロスオーバー「C-HR」よりも全長と全幅はワイドとなるものの、全高については10mm抑えられている。立体駐車場に収まるなど、日本の使用環境をしっかり抑えて開発したのだろう。
スタイルは、かなりインパクトが強い。フロントマスクは、上位のSUVたちと共通性を持たせた力強いものだ。ただ視線をサイドビューに移すと、ボリューミーではあるものの、ロングノーズ、コンパクトなガラスエリア、そして大胆にカットされたリヤエンドにより、ハッチバックにクーペの要素を盛り込んだシルエットを構築しており、クロスオーバーであることを明確にする。特にリヤエンドに至っては、ヒップアップさせたようにシャープだ。ただ、この美尻が思わぬ結果をもたらすのだが……。
インテリアは、レクサスらしい上質さを備えたもの。派手なエクステリアと比較すると、かなり大人な仕上げだ。ソフトタッチで触感が良く、デザインも新世代共通のドライバー中心のもので、以前と比べるとすっきりした。とはいえ、相変わらず小さなボタンがたくさんあるのだが……。
前席に収まるとダッシュボードの高さも抑えられ、前方視界も良いので、広々として快適だ。後席も試してみると、意外にも十分な広さを確保している。サイドのガラスエリアも幅があるので、圧迫感もない。これは新感覚のファミリーカーになるのではと、期待が膨らむ。
しかし、テールゲートを開けた際、その想いは裏切られる。ファストバック風のスタイルから、ある程度ラゲッジスペースが犠牲になることは予想できるため、220Lという容量は良しとしよう。最大の問題は、ラゲッジルーム床面が腰ほどの高さにあることだ。これではどんな荷物も高く持ち上げなくてはならず、ここだけは合点がいかない。ミネラルウォーターなどの箱買いなど重い買い物を想定していないのだろうか?
試乗は、都市部や高速を中心に行った。ロングノーズの先までは望むことはできないが、全長が抑えられていることもあり、取り回しは良い。そのシャープなスタイルから、軽快な走りを予測したが、意外にも、落ち着きあるしっとりとした走りで、静粛性は高く、乗り心地も良い。かなり大人なクルマなのだ。
ちなみに試乗車のパワートレインは、174ps/209Nmの2.0Lエンジンにローギア付きCVTを組み合わせた。このCVTの特徴は、発進時にギアを使うこと。これによりトルコンATのような発進加速を可能としている。ただUXにとって、パワートレインの存在感は薄い。まるで、それがクールとでもいうかのように。だからガソリンかHVかは、単純に好みで選べばよい。
UXは、あらゆる面で絶妙なポイントを攻めたクルマだと思う。自ら都会派と名乗るのは、決してスタイルに留まらず、その使い方も含めてなのだ。日常的に都市部でクルマを使う人は、2プラス的な要素があれば十分という人も多い。
その場合、後席は、子供の乗車スペースや荷物置きとなる。必然的に、遠いラゲッジルームへとしまい込むものは限られる。限定される領域ならば、お洒落を優先すべきということなのだろう。
つまり、クルマもお気に入りのジュエリーやアクセサリーのように、自分を着飾るためのアイテムのひとつに仕立てたというワケ。そのためには、過度なクルマらしさは、野暮ということか。確かにクルマにクルマらしい喜びを求める層は減少しつつある。その答えとしてみるならば、これはレクサス流のクレバーな回答と捉えるべきなのだろう。