D-CVTに取って代わられたダイハツの3軸CVT。逆転の発想で生み出されたその機構を振り返ってみる。
ダイハツの新世代のクルマづくりの新技術「DNGA」において、変速機が「D-CVT」に刷新された。しかし、切り替わる前の「3軸CVT」もユニークな発想による非常に意欲的な変速機だった。
一般的に、CVTというものはエンジンからのトルク入力軸からデフギヤの出力軸までに、最低4つの軸を必要とする。一般的な歯車と違い、CVTの用いるバリエータユニットはふたつのプーリが同じ方向に回転するため、
入力軸/プライマリプーリ → 正回転
セカンダリプーリ → 正回転
一次減速ギヤ → 逆回転
二次減速ギヤ → 正回転
——という構成にしないとクルマが後進してしまうからである。
回転方向を揃える役目を担う軸に減速ギヤを介する理由は、バリエータユニットの性質による。ベルトの巻かけ径によって最Highと最Loを作り出す構造上、現実的なプーリ径では充分な減速比が作り出せない。プーリ径を大きくすれば解決するが、変速機が大きく巨大になってしまう。そのため、二度減速することで他種の変速機に準ずる変速比を生み出しているのだ。
減速と回転方向をコントロールするなら、入力後にまず通過する遊星歯車機構を使えばいいじゃないかと考えたのがダイハツのエンジニアだった。ご存じ、遊星歯車は(基本的に)正転2段/逆転1段を作り出すことができる。エンジントルクをまず遊星歯車において逆転かつ減速し、バリエータユニットは通常のCVTとは逆回転で用いることで軸をひとつ減らしたのだ。
逆転減速を担うことになると、遊星歯車は常時回転することとなる。通常のCVTであれば普段はユニットごと固定で回転、逆転時のみ動作するのに対して、高ストレスな環境に置かれるわけだ。そこでダイハツは軸受の改良と潤滑量の改善によって、高耐久性を実現した。かくして3軸CVTは、それまでのユニットに対して効率向上と軽量化を両立することに成功している。