フロントエンドに備わるラジエーターサポート部。その構成部品を樹脂製に替えることで、多くのメリットが得られるとヴァレオは訴求する。
ボルスターとはフロントエンドモジュールの上部、ラジエーターサポートの上半分と言えばイメージが伝わるだろうか。ヴァレオはそのボルスターを金属製から樹脂製に替えることで軽量化と高機能化を果たした。
写真のボルスターはメルセデス・ベンツGLEのもの。連続繊維を熱硬化性樹脂を埋め込んだ「オルガノシート」を材料として成形する。この場合のオルガノシートの組成はガラス繊維+ポリプロピレンあるいはポリアミド6/66。オルガノシートのフィラー+バインダーの素材選定および重量比はさまざま考えられるが、求められる機能、重量、強度と剛性などからこの組み合わせとした。材料密度は1.7g/cm3。
ボルスター自体は上面+下面+脚部の構造。脚部は組成を変えていて、樹脂にガラスの短繊維が練りこんであるものを使用している。
フロントフードを開けたときに目に入りやすい部位ということもあり、上面部品は装飾性を重視しガラスシートの織目が綺麗に浮かぶ表面にしているのが特徴だ。吸気管の導入口としての機能も担い、上面の3つの隆起はそのための形状である。樹脂成形品なので金属成形に対して厚みの自由度が高く、部位ごとに厚みを増すなどして同等剛性を実現している。実際、引っ張り強度で考えれば合金材に対してもはるかに本部品のほうが高い性能を示すという。アセンブリで6kg、脚部を除くと4kg程度、重量比で3割軽減を果たした。樹脂製だけに錆などの腐食から解放され、NVHに効くという美点も挙げられる。
昨年秋からアメリカのスマーナ工場で生産している。日本のメーカーにも売り込み中。鉄に比べるとコストは高いが、先述の導入口機能を一体化させたことなどを含めればトータルとしてのコストは「むしろお釣りがくるくらい」という。